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公園陣地は3回魔物の突破を許し、3回退けた。スタンピード開始以来2度目の夜明けである。その間に戦死者も複数出た模様。シチェルも数回危機的状況に遭遇したが、小松島が魔物をぶんなぐってなんとかした。1回は危うく喉をかき切られるところだった。

「休憩どころじゃなかったぞ」

「そこまで責任は持てん」

滝川から苦情が出たが小松島は一蹴。魔物の波状攻撃が続く間に、滝川としらねのコンビでシールドベアを1頭仕留めていた。低レベルとはいえ防御の魔法を使う危険な魔物で、普通なら戦いの素人2人で倒せるものではない。運よく公園陣地の構造物にその体の一部が引っかかり動けなくなったところを、そこらへんの石や棒で叩きまくって倒したのだった。しらねに至ってはせっかく帯剣しておきながら抜刀し忘れて戦うほど焦りまくっていた。

「夜が明けたらすぐ飛ぼうと思ってたけど無理だ。ちょっと寝かせてくれ・・・」

スタミナには自信があると言っていた滝川だが、さすがにもう無理のようだ。

「隆二、あんまり弾残ってないぞ」

「きついな・・・こっちもだいぶ使ったからな」

防衛線を突破してきた魔物を撃つのに躊躇していられないので、わりと迷わず発砲していたために弾薬の消費が激しかった。もともと護身用程度の弾薬しか支給されていないのに拠点に籠って防衛戦闘など始めてしまえばもたないのは当然だった。

「ないものは仕方ない、いざとなったら白兵戦の覚悟だな」

「えー」

「それより今のうちにリトさんのところに行って話をつけておこう。割り当ての休憩時間内に済ませたい」

公園陣地から遊歩道を使って医師座に入る。外から見ても変化は少なかったが、中は大騒ぎだった。新大坂全体から負傷者、それも重症者が運ばれてきているのだ。リトの病室は見舞いの時点で把握しているので、混雑に関わることなくたどり着けた。

「今日はシチェルはんも同道でっか」

「すぐそこの公園で、同じ境遇のものたちと共に戦っています。交代で休憩を取っているのですが、今は我々の番ということで」

「なるほど、ほらわざわざすんまへんなあ」

「ただ今回は別件の用事でして」

と切り出す。リトは最後まで話を聞いてくれたが、即快諾はしてもらえなかった。

「いやまあ、頼まれてもかまへんのやけど・・・下の状況見ましたやろ?足が折れた程度の患者や長ごう置いとけんゆうて、わりとはように退院することになってしもてんや」

「なんとまあ」

「トリアエズとかいう最新の医学思想やそうで、『とりあえず重症な患者から治療していく』ちゅうことになっとるそうな」

考えからはおおむねあっているが、トリアエズではなくトリアージだ。なまじ意味が通じるだけにリトも思い違いをしてしまったのだろう。

「そういうわけで、たぶん長い間手紙を受け取り続けることはできまへん」

「ああ、そういうことでしたらそれほど長くはならないので」

「ほなまあ、退院までは引き受けさせてもらいますわ」

了承を得たので、朝霜に送る報告書には医師座入院中のリト宛てに返信するよう追記した。

「すぐ返事来るかな?」

「来てくれんと困るが・・・片道2日だとすると単純に4日かかるな」

「てことはスタンピード終わってもしばらく待機か」

「そんぐらいならわいも入院続いてますやろ。退院してもしばらくは歩き回るわけにも・・・せや、ヒーナは今どないしてますやろ?」

ヒーナは新京都に馬車を取りに行ったきりだ。そのままスタンピードが始まったのでその混乱に巻き込まれているのだろう。一度松原屋に確認に行く必要がありそうだが、さすがにそこまで自由に行動できそうな状況ではない。

「新大坂まで戻ってきているかどうかすらわからんですな」

「ほうでっか。ほなもし見つけたらわいの居場所伝えといてもらえまっか」

「承知しました」

医師座を出た小松島は、書き上げた報告書を滝川に託す。

「頼んだぞ」

「任された。スピード以外は保証するぜ」


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