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「なあジェムザ、ピザって何だ?」

自陣に戻ったシチェルは、先ほど出会った夫婦との会話でわからなかったところを質問していた。なお、このメイジニッポン皇国ではピザは一般的ではなく、シチェルが知らないのは別に不自然ではない。

「小麦粉を練って作った生地に肉や野菜を乗せてソースをかけて焼いた食べ物だ」

シチェルの脳内では小麦粉の代わりに米を使い、台の上で練るのではなく手の中で握り、肉や野菜の代わりに鮭や梅干を乗せて焼く。仕上げにソースのかわりに熱い緑茶をかけて食べる料理が浮かんでいた。つまり。

「焼きおにぎりの茶漬けのことか」

何一つ共通点がないのだがここに落ち着いてしまった。

「隆二遅いな・・・しらね、探せないか?」

「ちょう捜索範囲が広すぎて、無理やな。医師座に入ったところまでは間違いないんやけど」

「まあ、焦らずとも今日は何も起こらんだろう。気を張りすぎるな、保たんぞ」

他のグループの情報によると、スタンピードによって対岸は魔物で埋め尽くされているという。だが、新淀川を越えて新大坂側に溢れるにはジョージトータスという巨大なリクガメの魔物がいなければ渡河することができない。リクガメ型だけあって頑丈だがのろいので、前線に姿を見せるまで時間がかかるのだった。だが、この背中に乗って魔物たちは新大坂側に渡ってくるのだ。泳いでいるジョージトータスを倒すのはまず不可能だが、背中に乗った魔物たちは別だ。上陸前に削れるだけ削り、上陸後は凶悪なものを優先して倒す。それ以外はいっそ町中に侵入させ、冒険者たちが各個撃破する手はずだ。なので、ジョージトータスが一匹も確認されていない現在、魔物が集団で新大坂市街に出現することはない。

「ちょっと船員座を見てくる」

とジェムザは仮設陣地を出ていこうとする。

「午前中も行かなかったか?」

「一応1日2回見に行ってるんだ」

先日までは小松島との再会のために、今日のところは朝霜からの返信を受け取るために、こまめに船員座の連絡掲示板を確認するようにしていた。

「まるでピクニックやなあ・・・」


事態が変化したのは深夜であった。

「ジョージトータスが来たってよ」

「お、ついに来たか」

公園の陣地は小松島一行を含め6つのグループと、最後に配置に着いた軍の分隊がひとつ、総勢70名ほどが守備に就いていた。素人も混じっているので、実際の戦力はもっと少なくなる。軍がここに兵を割いたのは素人防衛隊を見かねて・・・ではなく、医師座という新大坂有数の医療施設防御のためと、そこの状況を把握する部隊が必要だったからである。が、軍の都合はともかく、現場の兵士はそれなりに素人防衛隊を気にかけてくれており、こうして最新情報を流してくれていた。

「という連絡が来たのはさっきのことだから、たぶん今頃は川岸で戦闘が・・・おい、どこに行くんだ」

兵士の説明の途中で、遊具を改造して作った陣地からシチェルが出ていこうとする。

「ちょっと木の上から見てみようかと」

「見えるわけないだろ、この距離で」

「あたい遠視の魔法が使えるんで」

「何?」

兵士は引き止めるのをやめて、シチェルが木を上っていくのを見ていた。しばらくしてシチェルが魔法を使い始めた。

「3匹いるみたいだぞ、ジョージトータス」

「増えたな。川原の戦況はどうだ?」

「さすがに堤防の向こうは見えないけど、堤防の上は魔物でいっぱいだな。大丈夫なのか?」

「それは想定の範囲内だ。主な防衛線は堤防のこちら側に構築してある」

堤防の上にいた方が守りやすい気がするが、被害も増える。今回は堤防を越えてきた魔物のみ駆除し、越えられない魔物は放置しつつ数日持ちこたえればよいとはっきりわかっているのでこうなった。


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