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第11話 ザックエリア(2)

 森の中を進み続け、近くを流れていた川に沿って歩いていく。かき分けていた草は消え足元は土の地面が続いていた。


「行き止まり、ですね」


 森を抜け開けた場所に出たと思ったがその先は横幅の広い川がアルルカたちの前を遮っていた。飛び越えて渡るにはあまりにも広くそのまま川の中を渡るには深さのある川に、エレインは橋や渡し船はないものかと周りを見渡す。しかしそんな都合の良いことなどなく、ただ水が穏やかに流れているだけだった。

 どうするのかとエレインがアルルカを見たが、アルルカは何ともないように何かを見ながら川に沿って数歩ほど歩くとピタリと止まった。


「アルルカ……!?」


 アルルカはそのまま前を流れる川へ1歩踏み出した。

 川に落ちると思ったエレインが手を伸ばすがアルルカはぱしゃっと軽い音を立てて水の上に立っていた。


「見えないけどここに石があるんだ。川の向こう岸まで飛び飛びであるからそれを渡っていくんだけど……」


 ――エレインは渡れる?


 アルルカはただ可能かどうかを聞こうとしただけだったのだろう。駄目そうだったら他の方法でも考えようとしたのかもしれない。けれどエレインには1種の試練のように聞こえた。

 この程度で怯んでいてはリチェルカになるなど到底出来ない。

 パチンと頬を両手で叩き気合いを入れ、1度髪を解き高い位置で一括りにしアルルカを真っ直ぐ見る。


「――いけます」

「ちゃんと助けるから落ちても慌てないでね。ゆっくり行くから滑らないように気をつけてついてきて」

「はい!」


 ぴしゃん、ぴしゃんとアルルカの立てる水の波紋を目印にエレインも川に向かって踏み出した。

 1歩1歩気をつけて進む。石は真っ直ぐ置かれているではなく距離もまちまちでズレて置かれているためアルルカの足元をしっかり見て距離を測り慎重に見えない石から石へと飛んでいく。2人の足が水に触れる度に水面が揺れる。

 アルルカが一足先に向こう岸へと到着し、すぐに続いてエレインが無事に到着した。

 川に落ちることなく渡り切れたことに安堵したエレインは息をつくと目の前にまた立ちはだかる森を見上げた。


「ここは周りが全部川に囲まれてるんだ」

「島ということですか?」

「そんな感じ」


 アルルカは迷わずに森の中へと進んでいく。

 気づけばティティも自分の足でアルルカの横を歩いていた。

 1日その中を進むと辺りが一気に開けた。

 そこは明らかに人工的に小さな泉を中心に円形状に木が刈られていた。


「ここで迎えがくるまで待機」

「迎え、ですか?」

「そう。手紙出してもすぐ来て貰えるわけじゃないから長くて2週間くらいはここで野営かなぁ」


 泉から少し離れた場所で石を集めて久しぶりに焚き火を起こす。よく見れば所々に焚き火をした跡が残っていた。

 ここに来るまでに同じような光景をエレインは何度か見ていた。


「ザックエリア……」


 エレインの呟きにアルルカは目を細める。

 水を汲みに泉を覗き込めば大雨の時にでも迷い込んだのか、小さな魚が数匹泳いでいた。大きさ的にも数的にもあまり食料の足しにはならないだろう。

 アルルカが水を持ってエレインと合流すればエレインとティティは森に生えていた木の実を採取していた。


「私が食べられると知ってるのはこの3種類なんですけど、他のものは全部ティティが教えてくれたんです」

「チチッ!」


 多種多様な木の実が布の上にゴロリと積まれている中から、アルルカは直径が5cmほどの緑色をした木の実を手に取る。


「あのねティティ、これは人間は食べない……かな」


 アルルカに見せびらかす木の実を探していたティティの手からぽとりと木の実が落ちる。


「チ……?」

「毒でもあるんですか?」

「いや、毒は無いし確かに食べることは可能といえば可能……。採取してから熟成したり茹でたり干したり色々半年くらいかけて加工しないとアクが強くて到底食べ物にはならないらしい。あとよく中に虫がいる」

「チ……チチ……!」


 木の実の山から同じ緑の木の実を取り除くついでに他のものも水に入れたりして中に虫がいないかの確認も済ませていく。


「ケープチップは虫も食べるし硬いものも平気だから」


 よけられた木の実をいそいそと自分用の木の葉に乗せていくティティの背中は少しだけ悲しそうだった。

 ベリー系の果物も入っていたのでそれもよけてあとの木の実は軽く炒っておく。


「魚は川まで捕りに行った方がいいかな」

「いい感じの木の枝拾っておきましたよ」


 木の実採りの時エレインに探してもらうようにお願いしていたしなりのある長めの木の枝を受け取り、持ち手を少しだけナイフで削って紐と金具を取り付ければ簡易的な釣竿が完成。餌は虫入りの木の実だ。

 釣れた魚を刺して置いておくための木の枝と大きめの葉っぱをいくつか持ち、来た方向から少しズレた場所の川へと向かう。

 水面にぷくぷくと水泡があるのを確認した2人は釣り糸が絡まないように距離を開けて釣りを始めた。


 竿が反応するまでただじっと待つだけの時間に飽きたティティは、木の実のリベンジをするべくアルルカたちから離れ森の中へ入っていった。

 残されたアルルカとエレインは冷たい風を浴びながら水面を見つめていた。

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