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大魔法使いの末裔である英国貴族の若き当主とケンカっ早いハーフモデルのアタシが体験したのはロンドン、ニューヨーク、東京、尾道を舞台にした奇妙な真夏の夜の夢物語!  作者: ヨシオカセイジュ


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降霊会 part2 アン独白

「君がこの尾道に来てから感じていたものーそれが何よりの証拠だよ」


 ジョシュアの言葉に、あたしはドキッとした。

 確かに、この街に来てからのあたしは、自分で言うのも何だけどいつもと違うへんてこりんな感じになっている。

 初めて訪れた場所も見覚えがあるような懐かしい風景のように感じたり、やたらと淋しかったり悲しかったりして、普段のあたしよりずいぶん涙もろくなってる。

 それに、そう。あたしの魔力。東京にいるときはここまで強くはなかったし、うまくコントロールできなかった。

 それが、ジョシュアに言わせると「ひいおばあちゃんと霊的に近い」ために影響を受けての事なら納得できるし、もしそれでひいおばあちゃんを救うことができるならー


「あたしは反対よ」


 のぼせたあたしの気持ちに水をぶっかける様に、ノーラが怖いくらいの口調できっぱりと否定した。

「いくら亡霊になってしまったとは言え、自分たちの都合であの子のー死者の魂を利用していい訳がないでしょう」

「そういうつもりじゃないよ、ノーラ」

「それに、ジョシュア。あんたこれがどんだけ危険な事かわかってるの?」

「えっ……これってキケンなの、ジョシュ?」


 黙ってしまったジョシュに代わってノーラが口を開いた。

「アン。19世紀に流行った降霊会は、暇をもてあましたお金持ちや貴族連中が心霊主義(スピリチュアリズム)や超常現象に憧れたインチキなオカルトごっこに過ぎない。本来の降霊会は、その名の通り死者の魂を現世に呼び戻すものー禁忌である降霊術を使ってね」

「キンキ……?」

「ナイジェルが使う死霊魔術(ネクロマンシー)と同じ。その正体は禁じられた魔法である黒魔術よ」

「……!!」

「あたしやあんたたちウォルズリー家のような一般の魔法使いが学び、使うのは白魔術。利己のためでなく、利他ー他人を幸せにするための魔法なの。

 本来魔法は、魔法使いはこの世界を少しでも光ある世界へと導くために存在するものなのよ。

 だけど光が強ければ強い分だけ、そこに生まれる闇は果てしなく深くなる。かつては光の側に立っていた誇り高き者も、己の心の闇に悩み、その葛藤から因果を重ねるほど威力を増す呪術である黒魔術に魅せられ堕ちていったわ。

 迂闊に闇に近づき、その深淵をのぞき込むような真似をしてはいけないのよ」


 そう語るノーラは、遥か遠い昔を思い出し後悔しているようにも、懐かしんでいるようにも見えた。


「大丈夫、絶対に安全ーとは言えないけれど、これしか方法はないんだ」

「ジョシュ……」

「アン、僕を信じてくれる?」

「あなたがそこまで言うんなら、あたしは協力する!」

「ジョシュア!アン!あんたたち、あたしの言うことがわかんないの⁈」


 全身の毛を逆立てて怒るノーラ。本当におっかないけど、でも、それがあたしたちのことを本当に心配しているからこそなのが伝わって来て、怖いのと同時にその愛情の深さにあたしは何だか泣きそうになった。


「ありがとう、ノーラ」

 あたしは怒っているノーラをぎゅっとハグした。

「アン⁈こ、こら!ちょっと離しなさい!」

「でもね、あのナイジェルって人が何だかろくでもないことを企んでいるのは間違いないし、そのせいで何の関係もない人が不幸になるのはイヤなの、絶対」

「アン……」

「ノーラ、好き、大好き!一緒に協力して!」


「それに、ひいおばあちゃんの事だけじゃないんだ」

 そう言うとジョシュアは、テーブルの上に何かを置いた。

「まさか、これって!……ジョシュア、あんた……!」

 ノーラのきれいな目が、倍ほど大きくなって驚いている。

「そう、あなたにも馴染みの深い物さ」


 それはジョシュアのおじいちゃんであるアーサー=太郎おじちゃまが大事にしていた、古い小さな組み木細工の箱だった。


「今夜、ここで、すべての決着をつけるんだ」

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