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大魔法使いの末裔である英国貴族の若き当主とケンカっ早いハーフモデルのアタシが体験したのはロンドン、ニューヨーク、東京、尾道を舞台にした奇妙な真夏の夜の夢物語!  作者: ヨシオカセイジュ


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目覚めるとき part3

「今こそ我らに与えられた聖なる力を解き放て!殲滅戦を開始する!」

 白猫亭を取り囲んだ連中が一斉に雄叫びをあげると、次々に巨大な獣へと変身していった。


 降り続く雨と雷は止む気配がなく、足音を消す効果もあって十数名に及ぶ半人半獣の兵士たちは苦もなく白猫亭へと接近していく。


「総員、準備はいいか?」

 勇壮なたてがみを持つライオンのような姿に変化した、ギデオンと名乗るリーダーらしき男が全員を見渡す。

「現時点で“はじまりの魔女”の姿は確認できない。だが決して気を抜くな。幸いなことに近隣に民家は無く、この雨と雷で通報の心配は無用だと思うが、万全を期して最終手段として以外の銃火器の使用は禁止する。

 まあ、そんなものに頼らなくても、我らには神から与えられた爪と牙があるからな。違うか?」


 全員が誇らしげに無言で頷く。


「隊長!二人のうち、男の方は生かしたまま捕獲する必要があるとのことでしたが、女の方の処分は如何いたしましょう!我々にお任せいただけるんでしょうか!」

 先ほどまでサムソン隊を率いていた、額の中央に真っ黒な第三の目を持つワニのような風貌の男が叫ぶのを聞いてギデオンは邪悪な笑みを浮かべた。

「ふふ、軍曹。正直になれ。喰いたいんだろう?」

「い、いや、私は決してそんなー」

「貴様はエチオピアのティグレ紛争以来の出動だからな。血がたぎるのも無理はない」

 ギデオンは改めて全員に向かって叫んだ。

「女の方は早い者勝ちだ!その肉を喰らい、血をすすれ!存分に兎狩りを楽しめ!」


 全員が獣のような咆哮を上げた。




「だ、そうだよ。感想は?」

「何だか、ちょームカつくんですけど!」

 白猫亭の屋根裏の明かりとり用の小窓から、二人並んでこっそり顔をのぞかせて敵の様子を観察しながらジョシュアとアンはささやきあった。

「ねえジョシュ、あいつら、一体何なの?」

「あれこそゴールドバーグ&サンズが各種兵器とともに長年に渡って世界中に輸出している、獣化兵士による最強の傭兵部隊ー通称"獣の軍団"だよ」

「へー、人気のベストセラー商品ってわけ?」

「ああ。市街地はもちろん、砂漠やジャングルまで汎用展開が可能な上に、反政府ゲリラはもちろん数十倍の数の大国の正規軍まで圧倒する戦闘能力を持っている」

「ふーん。だから自信たっぷりって訳ね」


「でもー」


 ジョシュアの方を向いたアンの表情に、悪戯っ子のような笑顔が浮かんだ。

「ぜんっぜん負ける気がしないわ!」


「この街ーいえ、この山に足を踏み入れてからずっと、力がどんどん満ちていく気がするの。ジョシュ、あなたはどう?」

「そうだな。僕にとっては―君と出会えた瞬間から、かな」


 二人は静かに見つめあった。


「わかるだろ、僕たちの血が共鳴しているのが。これが連中が僕と君を近づかせないようにしていた理由なんだよ」

「何だか不思議ね、ジョシュ」

 アンはポツリとつぶやいた。

「デジャヴュなのかな、もっとずっと小さいころーううん、ずうっとずうっと昔にもこうして二人で一緒にいた気がするの」

 燃えるような深紅に染まったアンの瞳を見つめ、ジョシュアはアーサーの最後の言葉を思い出していた。


「この世界での生は一瞬、

 泡沫うたかたの幻に過ぎない……

 でも……

 僕たちは必ずめぐり合う……

 誰も孤独ひとりなんかじゃない……」


『そう、僕たちは何度も出会い、別れを繰り返してきたのかもしれない』

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