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大魔法使いの末裔である英国貴族の若き当主とケンカっ早いハーフモデルのアタシが体験したのはロンドン、ニューヨーク、東京、尾道を舞台にした奇妙な真夏の夜の夢物語!  作者: ヨシオカセイジュ


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ONOMICHI 一族の秘密 part1

 突然のジョシュアの告白に、アンは混乱した。

「ええっ、おばあちゃんのお兄ちゃんの太郎おじちゃまの孫って……あたしたち、イトコってこと?」

「……残念、『はとこ』又は『またいとこ』ってやつだね、杏奈」

「アンでいいわ。それよりあなたーージョシュアさん?なんで日本語が話せるの⁈」

「じゃあ僕もジョシュでいいよ。何でと言われてもーまあ、子供の頃、おじいちゃんが話しているのを聞いて興味をもったのがきっかけかな。それ以来日本語の教師をつけてもらい、ウチの城で教わってたんだ」


「ウチの城……!本当にウチの親戚が貴族なんだ!」

 ため息とともに、アンは小さな頃から祖母や母親から聞かされて半信半疑だった、自分がイギリスの名門貴族ウォルズリー家の一員であるということを初めて実感し、戸惑いと感動で複雑な心境になっていた。


「それより君こそキレイな英語をしゃべっているからびっくりしたよ。報告書では学習意欲が低く、大の勉強ギライとなっていたんでね」

「失礼ね!あたしは将来スーパーモデルとして海外で活躍する予定なんだから、英語だけは必死で勉強してきたの!

……ちょっと待って、報告書って?そもそも、なんでここを復元してあたしに手紙を送ってきたの?あなたの目的は何?聞かなきゃいけないこといっぱいあるわよ!」


 驚いて仰天したかと思うと瞳を輝かせうっとりとし、今度は唇を尖らせて怒り出すーくるくると慌ただしく表情を変えるアンを微笑ましく思うジョシュアだったが、何かを思い出したかの様に急に真顔に戻った。


「質問に答える前に確認したいんだけど、さっき狼男にゴリラ男って言ってたよね?」

「ええ、ここへ来る途中で出会った旅行者風の二人組よ。山口県の岩国基地の海兵隊の兵士だって言ってたけど、突然見たこともない怪物に変身して襲ってきたの」

「連中はどうなった?君が倒したのかい?」

「それが……よくわかんないのよ」

「わからない?」

「狼男の方をあたしの魔法の力を乗せた正拳突きでぶっ飛ばしたのは覚えてるんだけど、強そうなゴリラ男から逃げる途中に足を滑らせ石段から落ちて気を失ったの。それで目を覚ましたら、二人ともいなくなっていてー」

「いなくなっていた?何か変わったことは?」

「そう言えば、長い石段から落ちたのにどこも怪我してなかったわね。それにーそうだ!狼男の着てた服だけが残っていたのと何かが焼けた様な跡があったわ!」


ーーまさか!『彼女』が目覚めたのか?


 ジョシュアは胸の鼓動が高鳴るのを抑えることができなかった。遂にその時がやってきたのかー


「ねえ、ジョシュ!あたしの話、聞いてる?」

「アン」

「は、はい!」

 急に正面からジョシュアに見つめられ、アンはドキッとした。

 アンの瞳が真夏の海の様な深い青なのに比べ、ジョシュアの瞳は初冬の青空の様な透明度の高い青さで、こちらの心の奥まで見透かされている様な気分にさせられる。


「手を出して」

「……手?」

「君に伝えたいことがあるんだ。それは、百や千、例えいくつ言葉を重ねても説明することができない、大切なことなんだ」

「大切な……こと?」

「ああ。だからーー」


 見つめあったまま、恐る恐る突き出したアンの両手を優しく包み込む様にジョシュアがそっと握った瞬間ー


「!!!!」


 重ねた手からアンの身体中に電気の様なショックが流れたと思うと、見る間に二人の体が光り輝きはじめた。

「い、いや!なに?何なの⁈怖い!!」

 未知の衝撃にパニック寸前のアンに、ジョシュアが静かに語りかけた。

「安心して、アン。僕に任せて」

「……こんな……これって……」


 強く大きくなる光が二人を包んでゆくのに連れ、アンは恐怖心が薄れ、それと同時に自分の意識がゆっくりと溶けてジョシュアと一体化するのを感じていた。

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