NEWYORK 迫りくる影 part2
『ゴールドバーグ&サンズ』の本社ビルの中でも、ごく一部の者しかその存在を知らない場所ーそのもうひとつが最上階にあるワンフロアをぶち抜いた巨大な会議室であった。
今、その会議室の巨大なテーブルを囲むように配置されたモニターのうち、青いランプの十三番目のモニターが起動し、語り出した。
『ジョシュアの居場所が判明した。ヒロシマのオノミチだ』
その言葉を合図のように12台のモニターがいっせいに起動した。
「なんだと?」
「どういうことだ、何故今さら」
「アン・ウォルズリーの住んでいた屋敷は廃墟になっていたのではないのか?」
「イスカリオテ、どこまで情報を掴んでいるんだ」
機械的に処理されながらも、明らかに焦りを感じさせる声が広がっていく中、それらを無視して青いモニターは語り続ける。
『さらに、もうひとつ』
モニターの声がほんの少し、大きくなった。
『アン・ウォルズリーの血を引く最後のひとり、吉岡杏奈がオノミチに出現した』
「いかん!それだけはいかん!!」
ノイズが入るほど大きな声が会議室に響き渡った。
「二人はもう接触したのか⁈」
「これはジョシュアが計画したことなのか?もしそうなら、なんとしても止めなければ!」
「今はまだ力に目覚めてはいないが、血族の共鳴により万が一能力が覚醒してみろ、我々ではどうする事もできなくなるぞ!」
「この有様をどうするつもりだ、イスカリオテ!」
狼狽し、口々に叫び出した12台のモニターに対し沈黙を続けていた十三番目のモニターだったがー
『フフフ、ハハハハハッ!!』
突然、笑い声が流れ出し、続いて皮肉たっぷりの低い声が響いた。
『誇り高き十二家ともあろうものが、実に惨めで哀れなものだな』
「なんだと、無礼者!」
「金に支配されたおまえたちユダヤ人に、我ら高潔な貴族の何がわかるというのだ!」
「取り消せ!謝罪せよ!」
「だいたい貴様はクラーク氏の紹介があったからこそ我々と付き合えているのをわかっているのか!」
激昂する声を無視するように、冷徹な声が響いた。
『クラークは、既にこの世にいない』
十三番目の突然の告白に、残りのモニターがいっせいに沈黙した。
『おまえたちの事を執事のレスターに告げて亡くなった』
モニターの青いランプがひときわ強く輝き出した。
『まだわからないのか?今やおまえたち十二家こそが、銅貨三十枚を受け取って主を売り渡した裏切者のユダなのだと言う事が!!』
「……まさか、我々に近づいたのは最初からこれが目的だったのか」
「貴様、いったい何者だ!」
「われらウォルズリー家をどうするつもりだ!」
「何とか言え、おまえの正体はー」
ボンと言う音とともにすべてのモニターのランプがいっせいに消え、室内に静寂が訪れる中、十三番目のモニターだけが煌々と青いランプを輝かせて低い声が響く。
『ジョシュアと吉岡杏奈に関しては、おまえたちの心配は無用だ。
数百年の雌伏の時を超え、屈辱と汚名をそそぐ時がやってきたのだ。
ウォルズリー家の正当なる継承者の帰還の時だ!』




