6. 愛しています
「今日はもう時間も遅いし、初依頼は明日にしよう」
「分かったわ」
まだ日は高いが、冒険者が活動するのは朝からだ。
夜になってしまえば流石の冒険者でも危ないし、そもそも良い依頼は朝一でなくなる。
無理に今日受けるよりも、明日の朝一で来る方がいい。
マリアとレオンは手を繋ぎながらぶらぶらと街を歩く。
マリアのあまりの美しさに、街の住民は老若男女問わず足を止め振り返る。見たら減るじゃないか、とレオンはイライラするのを堪えた。
宿に帰り、二人はレオンのベッドに腰掛けた。
「恥ずかしい話なんだけど」
レオンは前を見たまま口を開いた。
「俺、マリアの指のサイズ知らないんだよね」
立ち上がったレオンは、備え付けの机の引き出しを漁り、小さな箱を取り出した。
「だから、婚約指輪の代わり」
ベルベットの箱の中に収められていたのは、ダイヤモンドのペンダント。
マリアとレオンの目が合う。
「マリア、愛してる。俺と結婚して下さい」
マリアの瞳が潤む。
「はい。私も愛しています」
マリアがそう言った瞬間、レオンは箱を放り出してマリアを抱き締めていた。
「好きだよ、マリア。愛してる」
「うん、私も」
レオンはペンダントをマリアにつける。
マリアの胸元できらりと輝くペンダントを見てレオンは満足気に頷き、マリアに口づけた。
貪るような口づけを、マリアは恍惚とした気持ちで受け入れた。
⁑*⁑*⁑
世界中誰もが知っているといっても過言ではないほどに有名なSランクパーティがある。
外見の麗しい男女二人組のそのパーティに名前はない。
男は剣士、女は治癒魔法を使える魔法使いだった。
そのパーティは各国を飛び回り、魔物に悩まされている村にふらりと現れ見返りを求めず討伐する。
その代わり、国からの依頼を受けたときは莫大な報酬を要求した。
武勇伝も有名だが、おしどり夫婦で有名なパーティでもあった。
依頼を受けているときは、見惚れずにはいられない華麗な姿を見せる。
依頼が終われば所構わずいちゃいちゃする。
そのギャップに親しみを覚え惚れこむ人も多かった。
しかしある時突然冒険者を引退し、姿を消した。
彼らの名前はレオンとマリア。
いつも幸せそうに笑っていたという。