侵攻
数日後、安保条約とやらが、一方的に破棄された。
同時に、点在していた米ノ軍基地は封鎖され、
1週間を経たずにその兵士たちはこの国から消えた。
軍事専門家と名乗る人間たちは言った。
このままでは、中ノ国が攻めてくると。
だが、国民たちはコロナと同様、半信半疑であった。
加えて、物価高、電力不足といった直接的な痛手もあり、今の生活のことで手一杯であった。
多少は気にしながらも「大丈夫、大丈夫」の感覚で、変わりない日常を過ごしていた。
結果、国民たちの予想通り中ノ国は軍事演習のみの見せかけで終わった。
国民はまたデマを流した、と言ってマスコミを批判した。
---いえ、見せかけだなんて、とんでもありませんよ。
---まるで今から何かが始まる。そのための前座的なイベントのように感じませんか?
数週間後、二国によるわが国にある企業の同時買収が発表された。
それも一つ二つの企業ではなく、二桁に及ぶものだった。
最初は嫌がっていた国民たちだったが、外資系企業が入ることで国内の物価は安定した。
さらにモノの値段が下がっていく様子を見て喜びに転じた。
二国はそれを見ながら、こう漏らした。
「これがこの国民の本音だな、かつてあった国の誇りなんて持ってやしない」
「今は自分のことが一番なんじゃて。すでに富裕層の一部はわが国に移住しておるしの」
そう、限られた人間たちはすでに知っていた。
この国に時限爆弾が仕掛けられていたことを。
もちろん、マスコミの一部の人間も知っていた。
ただ、口外禁止の厳戒態勢がマスコミ各社に敷かれていた。
もちろん、わが国主たちによって。
仮に知られたら国民がパニックになる。
公に対して、これはわが国が豊かになるための計画的な買収案だったと説明した。
ネット上には賛否があがった。
だが、暮らしは以前より良くなっていることを優先して、アンチ意見は流された。
二国についての買収問題についても時間とともに流されていった。
そこを狙って、最終兵器が投下されてしまう。