講和
中ノ国主が米ノ国主に問いかけた。
「さて、そろそろ例のウイルスの効果も切れそうですが、また新たなものを流しますかな?」
「もう大丈夫だろ。一見、問題なさそうな感じで、実はかなりやばい状態じゃ」
「あー、あそこの国の有名な建前ってやつですな」
「国民が追い込まれているのに、外交を優先して平気なふりはダメじゃよ」
「同感ですな。たくさんの金を国外にばら撒いて、いまだに世界のリーダー気取りですからな」
「他の国々は本音を伝えてきたぞ。このままでは、国が国民が危ないんじゃって」
「ええ」
「だから、新たな人工ウイルスの情報を伝えて、ワクチンまで与えたわい」
「うちにはそのワクチンの製造法まで教えていただいた。感謝ですな」
「いやいや、そのうち露ノ国と一緒になってわしらまで狙われそうじゃったからの」
「危機管理ができてますな、さすが世界のリーダー国」
「あの国は遅すぎじゃ。国民が不審を増してやっと政権を変えた。それまでは良かったが」
「変わった政権も目先のことだけを考えて、ない金を給付金としてばら撒いてましたからな」
「でも、国民もそれにたかった。いや、たかりたかったんじゃろ」
「アレがなくなってしまう、そんな想像はできなかったんですな」
「アレがなくなったら大変じゃがの」
中ノ国主は不敵な笑みを浮かべてこう切り出した。
「そろそろ、武力的な揺さぶりをかけてみますか?」
「いや、それはやっぱり、おたくの良き隣国の例を見ても世論的によくないじゃろて」
否定する米ノ国主は困った風な顔をしながらも、上機嫌であった。
「でも、現在、うちについてくれる国はたくさんありましてなぁ」
「しかも、その大半は元はこっち側の国々とは皮肉じゃわい」
「今ならば、世論的にも大丈夫ですぞ」
「いや、ここは平和的に行くのが適切じゃろ。仮にも、かつては身内だった国なんじゃ」
「一時はわれわれを脅かす強国でしたな」
「今でも金だけはしっかり出してくれるんじゃが」
「その金も国民の税金ですぞ。ある意味、忍耐強い国民性ってやつですかな」
「うむ、ではその忍耐強さを調べてやろうじゃないか……」