深層
わが国は、これまで通りのコロナ対策を行い続けた。
時間が過ぎれば何とかなる。
ウィズコロナと言いながらも、最終手段としてふたたび緊急事態宣言を行った。
店には一時金、国民には給付金を用意し、それらをばら撒いた。
だが、時間が過ぎても感染者数が劇的に減ることなく、小康状態が続いていた。
そのもっとも大きな要因である、人工ウイルスについて、
専門家たちは、人為的な変異が介在していることにまったく気づいていなかった。
今まで同様、結局ウイルスについて何もわかってなかったのだから当然であった。
次第に死者数が目立つようになり、特に60代を過ぎた高齢者の数が増大していき、
彼ら感染者数の約三割が最終的に死に至る異常事態となっていた。
だが、わが国主たちはひっそりと考えていた。
これが人口ピラミッドとしては正常な形。
われわれさえ残れるならば、と。
彼らの一部は感染に巻き込まれずに生き残る方法を知っていた。
また、若者たちもこれに似た考えだった。
われわれは死なないから大丈夫だ、と。
本来の人口ピラミッドになれば、われわれが支える割合も軽減し、
理想的な社会体系にいずれ戻るだろう、と。
そのころ、二国はたがいに目障りな存在であったわが国について、話を詰めていた。
ただ、米ノ国にとっては目障りという言葉は少々、違ったかもしれない。
国力が落ちてしまって利用価値がなくなった国、と説明した方が正しかった。