共闘
米ノ国は、これまで築き上げてきた世界での地位を保ちたかった。
それでなくとも露ノ国と闘う宇ノ国への支援で、財政はもちろん国民への信頼も薄れていた。
ライバル国を弱体化させたとしても、自国に余力がなければ、今後の信頼は揺らぐ。
NATTO加盟国の内部においても分断の亀裂が生じつつある中、
自国のリーダーとしての新たな姿勢が問われていた。
一方、中ノ国は今まさに弱体化へと進むかつてのパートナー国に代わる力が必要だった。
中ノ国は実際には露ノ国をしのぐ経済圏を作っていたが、まだ立場上は下であった。
それがこのたびの戦争によって、変わりつつあった。
露ノ国から支援を要請されたとき、返事を保留した。
戦況を見つつ、新たな方向性を模索していた。
目指す位置は世界のリーダー国。
ただ、一国による支配は望んでいない。
かつての冷戦時代のように相反する二国による表面的な競争力こそが必要。
世界秩序に不可欠な米ノ国とのパートナー関係こそ理想であった。
周りの国に悟られないよう極秘でのやり取りを何度か重ねて、
その間に中ノ国は人工ウイルスについての情報を伝えた。
すなわち、自国がコロナウイルスの発生源であることを認めた。
その代わりに、戦争において露ノ国への支援はしないと約束した。
二国は不可侵の関係になることを宣言した。
結果、両国の意思は一致した。
---理想の裏側にある「現実」とは、いつもこんな感じです。
---この世は常に利害関係で成り立っている、周りを見てもわかりますよね?