異端
※悲観的作者による、悲観的フィクションです。
今もなお、ゼロコロナを実施している国があった。
感染者の人数がある程度、増えるとすぐにロックダウン。
そのニュースは世界中に流れていた。
他国はその様子を見ながら、あざ笑うような態度を取っていた。
---待ってください、コロナウイルスは、もともとあの国から始まったんですよね?
---そもそも、あそこにある研究所が疑われていたはずですが。
しかし、世界ではもう「大丈夫、大丈夫」の雰囲気となっていた。
わが国も同様で、みんな普通に出かけるようになった。
どこに出かけても、どこを見渡しても人でいっぱいになっていた。
海外からの観光客も増えて、街中で見かける外国人も多くなっていった。
インタビューを受ける人たちは自慢げに「ウイルスって言ってもただの風邪だし」とか、
「周りを見てよ、みんな出歩いてるじゃん」などと楽観的であった。
そんなとき、発生源と思われた研究所に対しての追求が終わった、とのニュースが流れた。
---でも、それって中途半端だと思いませんか?
---たくさんの死者が出た、いえ、今も出ているのは事実ですよ。
コロナ感染者の数はいまだ増減の波を繰り返していたが、誰も気にしなくなっていた。
マスコミでさえ、その話題を大々的に取り上げることは少なくなっていた。
「中ノ国は、ついにコロナ患者がゼロになりました」
ある日、そんなニュースが流れた。
ウィズコロナとなっていた、他の国々では特に大きな話題にもならなかった。
中ノ国は、患者数がゼロになったとたん、渡航における厳しい制限を定めた。
このグローバル化の中、時代錯誤の鎖国状態になった、と新たにニュースが伝えた。
だが、誰もそんなこと気にしていなかった。
---し、か、し。
---あの国の偉いさんは、ニヤリと笑っていました。
---なぜだか、わかりますか?