プロローグ
優しい目で見てください
俺は生まれた時から、何を最初に伸ばすべきなのか考えていた。
魔法?剣術?俺が出した答えは知識だ。
知識さえ伸ばせば大抵のことはできる。
魔法や剣術は成長してからも伸ばせるが、知識は成長すればするほど伸ばしにくくなるというのが俺の考えだ。
だから俺は本を読んだ。
幸いにも俺が生まれた孤児院には、本が山ほどあった。
やはり本というのは面白い。
自分の知らない知識を得るというのは、成長していく上で最も重要だ。
しかし、周りはそうじゃない。
「また本なんて読んでるのか?相変わらず気持ち悪いな」
「おいやめとけよ。こんな雑魚の相手してる暇があったら魔法の練習でもしようぜ」
こんな感じでいつも馬鹿にされる。
だが俺はあまり気にしていない。
魔法を練習するのではなく、まず理解することが大切だからだ。
俺の頭の中では、職業が伝えられてから鍛錬をしようと考えている。
それまでは知識をひたすら蓄えなければいけないのだ。
しかし、そんな俺に予想外の出来事が起きてしまった。
「君の職業は薬師だ」
神官にそう告げられた時、俺は絶望した。
今まで俺がやってきたことは全て水の泡になったのだ。
周りの奴らは笑っているが、そんな声は俺の耳に届かない。
恥ずかしさや悔しさよりも、俺は自分を許せなかった。
薬師という職業を予想できなかったことに。
それから俺の人生は変わった。
――――
「オラ!剣士の俺にそんな顔向けんな!」
「俺達は英雄の素質をもった人間なんだ。お前みたいな薬師が俺達の練習相手になれることをありがたく思えよ!」
薬師と言われた次の日から、俺は剣士や魔術師に選ばれた奴らのサンドバッグとなっていた。
殴る蹴るならまだ良い、魔法を一方的受けたりするのは苦痛だった。
俺が見下していた奴らは、ほとんどが剣士や魔術師となっていた。
俺は間違えたのだ。
剣術や魔法を練習していれば、職業も変わっていたかもしれない。
過去の自分への怒りがおさまらなかった。
俺は頭をフル回転させた。
強くなるにはどうすればいいのか、薬師として強くなる方法はあるのか。
そして考えていく中で、一つの方法を思いついた。
それは自分の力を飛躍させる薬を作ることだ。
本に書いてあったが、昔の人間は魔物の身体能力に追いつくため、能力向上の薬を飲んで戦っていたそうだ。
しかし、俺にはその薬の作り方はわからない。
どの本にも書いていなかった。
自力で作ったものを飲むのは少し怖いが、もうこれしか道はない。
俺は薬を作り始めた。
――――
結論から言うと、地獄だった。
薬を作っては飲んで、作っては飲んでの毎日。
頭はおかしくなるし、嘔吐や発狂するのは日常茶飯事だった。
効果があるかもわからない薬をただひたすら飲むのは、かなりの忍耐力が必要だった。
それでも俺は、自分への怒りと強くなりたい一心で耐え続けた。
日に日におかしくなっていく自分の姿を、あまりに周りに見せないために俺は魔物の住む森への向かった。
俺はここでも、薬を作っては飲んでいた。
そして、最近効果が出始めた。
何故か今まで使ったこともない魔法が使えるようになったのだ。
俺が本を読みながら考えていた、自作の魔法も今の俺なら使えそうだ。
だがまだ足りない。
俺はもっと強くなりたかった。
そして考えたのが、魔物の血を入れることだ。
魔物は異常な身体能力を持っているため、その力を得ることができれば自分の限界値を上げることができると考えた。
俺は魔物を殺しまくった。
今の俺であれば、大抵の魔物は倒せた。
そんな中で手に入れた血を、他の薬と混ぜた。
飲んでみると、今までとは比べもにならないくらいの苦痛が俺を襲った。
体中から汗などの液体が出続けた。
最悪な気分だった。
それでも飲み続けた。
だんだん何かを失っていくように感じたが、そんなことはどうでもいい。
強くなれさえすればいいのだ。
そして俺は最後の仕上げにかかった。
それは、大魔王の骨を入れることだ。
この森には大魔王の骨があちこちに埋められている。
俺は魔物を倒していく中で、奇跡的に一つ見つけのだ。
骨だけでもわかるが、異様なオーラを放っている。
そんな骨に今まで俺なら恐怖し捨てていたが、今の俺にはただの材料にしか見えなかった。
そして薬と混ぜて飲んだ。
最高だった。
さっきの気分とは違い大きな高揚感に襲われた。
体中から魔力が湧き出てくる。
この力で何かも壊したかなった。
これは多分大魔王の骨の影響だろう。
だが、これで知識と力が揃った。
そうすると一気に何もすることがなくなってしまった。
「そうだ、英雄学園でも行くか」
次の目的は決まった。
俺よりも強い奴を探そう――
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