↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤高にして最強の剣士、保護した記憶喪失の少女に懐かれる  作者: 遠藤鶴
第一章 凶戦士と『自称』仲間たち
16/101

エレインの決心

「いや~~、それにしても凶戦士の強さは凄かったなぁ」

「でも、あの人の魔法も相当だぞ。やっぱり特級は別格だ」


 観戦していた戦士と魔導士たちが、戦いの感想を口々に言い合っている。彼らのうち何人かはアリナとロイドを囲んで賞賛の言葉を浴びせている。にわかに騒がしくなった訓練場だが、しかしエレインは何処か複雑だった。


「何故あのような男にあれだけの力があるんだ……」


 そんな声が、褒め称える声の中に時折混じるのだ。だが、その声を彼女より間近で聞いているのがアリナとロイドの二人だ。アリナは顔こそ笑っているが、声音が低く無理やり笑っているように見せている。ロイドは声こそいつも通りだが、眼が笑っておらず周囲を睨みつけるように瞳が動いている。


「あんな人気にしないでください、どうせ勇者になんてなれませんから!」

「そうです、正しい力は正しい志にこそ宿るのですから!」


 場の空気に嫌気が差したエレインは、一人でさっさと歩き去っていくヴィルハルトの背中をエレインは追いかけた。アリナ達には何も言わず突然駆け出したので、二人は心配しているかもしれないが、どうしても言いたいことがある。


「あの~~、ヴィルハルトさ~ん!」


 最悪引っ張って止めようかと思っていたが、意外にも一度で彼は止まってくれた。


「暫くはあいつらと一緒にいるという話だった筈だが」

「そういうことじゃなくて……聞きたいことがあるんです、一つだけ」

「言ってみろ」


 こちらに背を向けたままヴィルハルトは応答する。言葉にはいつも通りの威圧感があるものの、やはり会話そのものは拒否しない。エレインは少しずつ彼という人の性格を分かり始めていることに若干の喜びを感じながらも、それを抑えつつ気になったことを尋ねる。


「アリナさんのこと、興味無かったんじゃなかったんですか?」

「……俺がいつ、あいつに興味が無いなどと言った? 俺が言ってもいないことを勝手に解釈して責めるなよ」

「ち、違うんです! 責めるとかそんなつもりは全然無くて……むしろ思った通りの人で良かったなって……」

「思った通り?」

「上手く言えないんですけど……周りが見えないんじゃなくて、見た上で自分のやる事を優先してるって感じで。だから、本当に大変な人のことを見捨てたりしないし、自分の出来る範囲なら助けてくれる。私にとってヴィルハルトさんはそういう人で……だから、どうして誰とも関わりを持とうとしないんだろうって。余計そう思って……」

「質問は一つだけだと聞いたが」

「あっ、いえ質問とかでもなくて……」


 考えがまとまらず、脳を全力で稼働させながらエレインは次の言葉を探す。そうしていると、ヴィルハルトが身体をこちらに向けた。その顔は、怒りとも呆れとも取れる不思議な色を宿している。ただ一つ言えるのは、彼女が見た中で、最も感情を宿した顔だった。


「以前にお前の正気を疑ったことがあったが、訂正しよう。少なくとも『あそこ』にいる連中の中では、お前は一番正気だよ。まぁ、奴の威光に当てられていないのだから当然か」

「何の話ですか?」

「今頃訓練場にいる連中は、俺の陰口大会でも開催しているだろう。今更になっても現実を認められず、幻想に浸り続ける木偶(でく)共に比べれば、己自身の衝動で動けるお前が一番人間らしい、ということだ」


 恐らく褒められているのだろうが、エレインの心はむしろ冷えるような感覚を覚えていた。そしてその感触は、彼が明らかに『怖い顔』になったことで彼女の心の全てを呑み込んだ。


「英(・)雄(・)は(・)死(・)ん(・)だ(・)。所詮奴は負け犬なんだよ」


 エレインがそれ以上、何かを言うことは出来なかった。いつも仏頂面か呆れ顔ばかりだった彼の表情。その明確な変化に気圧されたからだ。思わずその場にへたり込んだ彼女に、


「……知らんお前に言っても仕方がないか。いや丁度いい。お前、あの連中を俺に近付けることだけはするな」


 元の仏頂面に戻し、しかし呪うような声で命令をした後、ヴィルハルトの背中は離れていった。


「私は……」


 自分はまだ、彼のことを何も知らず、普段の何事もない日常の姿だけで知った気になっていたのではないか。そんな思考が彼女の中に現れる。

 彼が前に言っていた。自分が人に教えられるのは『魔物の殺し方』だけ、と。彼の『戦士』という仕事の事も、考えてみれば何も知らない。一番の理解者、とまではいかなくても、少しでも彼の事を理解したい。


「エレインちゃん! やっぱりこっちにいたのね。ダメでしょ、いきなりどっか行っちゃったら」

「そうだぜ、君みたいな美少女が一人で歩いてたらマズイ。何処に変なやつがいるか分からねえからな」

「あはは、ごめんなさい……」


 追いかけてきたアリナとロイドに一度笑顔を作って応答した。二人とも怒っている訳では無かったので、エレインはこのまま話を続ける。


「アリナさん、ロイドさん……昨日、言いましたよね? 私には、とんでもない魔法の才能があるかもって……」

「ああ、そうだな。とんでもねえってのも控えめに言ってって話だが」

「ホントにね。ちょっと自信失くしちゃいそうになったわよ」


 アリナから教わった戦士と魔導士の関係。そして、彼女の意志。そこから彼女が取った行動は、必然だったといえるだろう。

 二人の目を真っ直ぐに見て胸に手を当てながら、エレインは強く言い切った。


「私、魔導士になります! 魔導士になって、ヴィルハルトさんの助けになりたいんです! だから……私に教えてください。魔物とか、魔法とか……沢山のことを」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。