取替えっ子
目の前に手のひらサイズの白い光の玉が愉しそうに揺れている。思わず顔を背けると、光は弱まり、小さな人影らしきものが浮かんでいた。
「もー、そんなにイヤそうにしないでよ!ワタシはアルシュ、土の妖精よ」
光の玉…もとい、アルシュは姿を現した。サイズは一般的なスマホくらいの背丈、茶色の髪と瞳にワンピース。なぜか頭の上には…。
「なんで私の作った食品サンプルのサクランボ?」
「だって可愛かったんだもの。いーじゃなーい!ね、リウ。ワタシ、アナタ大好きなの!」
会社の研修でなぜか連れて行かれた食品サンプル製作体験で作ったサクランボ。その辺にほったらかしていたのを目敏く見つけたらしい。いや、そんなことはいいや。
アルシュの唐突な告白。意味がわからなすぎて、アルシュを凝視する。私が好き?なんだ、それは。今まで誰にも言われたことないんだけど!
「ふふふっ。だから、取替えっ子しちゃったの!ワタシの友達がアナタの世界で自分の愛し子を見つけたいからって、アナタとその子を取替えっ子したの。ワタシもリウとこっちで楽しくしてたいからいいかなって!」
アルシュは無邪気に笑って、愛しそうに私の髪に口付ける。つまり、私は…。
「異世界召喚されたワケ?アルシュ…妖精の都合で」
「そうなるねっ。でも、リウは私の愛し子だから。一緒に居たかったの、怒らないで?」
さっきよりもトーンダウンし諦めの視線をアルシュに問うた私に、アルシュは機嫌を取るように私の腕に顔を擦り寄せる。