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クスリの主を追え その⑤

「ダニエル、ダニエルか!?」


『おう、やっぱり生きてたかゴキブリ野郎。

帰ったらメタメタにしてやるから元気で帰ってこいよ。』


「冗談は後!

急ぎ用だから聞いてくれ!

僕は今ナチの連中と一緒にクローバーの本拠地に向かってる!」


『何だって?

どうやって突き止めたんだ?』


「ミッターのお手柄だよ!

部屋の奥にパソコンあっただろ、それを開いてメールを確認してくれ!

本拠地のある場所を示した地図を送ってある!

それとアレだ、ナチの車が君達を迎えに行ってるからあとは彼らから説明を受けてくれ!」


『……ああ、分かった。』


「頼んだ!」




・・・




「ボスがいなくなるわ始末屋どもはおめおめと帰って来るわ……!

挙げ句こんなモノまで……ナメてんのかクソォァァ!」


クローバーのアジトでは『首領』の代わりとなる男が焦り散らしていた。


名はジェフ・ライル。


団員達が逃げ帰って来ただけならばまだ良かったのだが、


乗っていた改造車に『追跡チップ』が取り付けられていたのだからもう大変だ。


もう位置の特定は既に終わっているのだろう。


今更破壊しても遅い。


ボスは『何者か』がクローバーについて嗅ぎ回っていることを知っていた。


そしてその正体がロートクロイツに関わる人間だとすれば、遅かれ早かれ必ず潰される。


クローバーはそのことを危惧している。


「今からヤツを呼んでも間に合うかどうか分からねぇ!

テメェら、武器を用意しろ!

連中を皆殺しにしてやる!

クソ、うちのクスリを使わせてやったのにあのカスボケ野郎ッ!」


部下達が大慌てで武器庫の鍵を開けようとしていると


「……。」


黒衣を身に纏った長身の男が無言でアジトに入ってきて


「がぁぁぁぁッ!」


ショットガンでジェフの腹を撃ち抜く。


ジェフは何も理解出来ないまま事切れた。


「……お前らはもう必要ない。」


そのまま流れるように『クローバー』の団員達を殺していく。


目にも止まらぬ速さ。


殺意のこもった強さ。


さながら死神のごとく、目の前の命を刈り取ってゆく。


その男は、クローバーの連中にとって『味方』だったはずの男。


「ま……ぁ……待ってくれ!

必要ねェってどういうことだッ!?

協力関係はどうなった……クスリの話はよォ!

あのクスリがなけりゃ、イカれたナチの軍人に返り討ちにされてオシマイだぜ!」


「『成功』した被験体はもう充分に集まった。

お前らのような無能を抱えたままでは我々にまで危険が及びかねんと判断したまでだ。

実際、お前らはあの連中にしてやられた。」


一人、また一人と無慈悲に殺していく。


片手でショットガンを構え、正確に心臓を撃ち抜いて殺していく。


無抵抗。


戦う意思はあるが、誰一人としてその男の動きに対応出来ない。


まるで未来から送られてきた殺人アンドロイドだ。


あっという間に、クローバーのアジトは壊滅した。


「……。」


物言わぬ死体と赤黒い血液を踏みながら、灯油を地面に撒く。


最も厄介なのは『何でも屋』であり、彼らに『情報』を掴ませるワケにはいかない。


今この男にとって重要なのはそれだけである。


彼の『飼い主』から与えられた絶対優先の使命。




マッチに火をつけ、灯油の撒かれた床にさっと落とす。




一瞬にして炎が全てを包み込み




その時既に男の姿は消えていた。




・・・




街を見下ろす高層ビルの最上階に位置する豪勢な部屋。


虎の敷物や鹿の壁飾りなど、趣味の悪さを全面に押し出したインテリア。


黒いコートをまとった一人の男が、ベルが鳴り響く黒電話を手に取る。


『サイオンジ?

あなた、西園寺ぃ?』


「何の用事だ?」


『あー、ちょっとねぇ。

お話ししたいことがあるの。』


電話をかけてきたのはカミシア。


巨大ギャング組織のリーダーだ。


しかしこの『西園寺』という男は全く物怖じしていない。


それは彼もまたマフィアのリーダーであるからに他ならない。


アジア系の人間を集めた大規模組織……その名は『赤鳳』。


「話したいこと?」


『そう、話したいこと。

この場で話すようなことじゃないから、ね。

場所はスカラ川沿いの工場跡地。

時間は19時丁度。

その時間、あなたは大丈夫?』


「……空けておくよ。」


『あーりがとぉー。

貴方は最高よ、西園寺。』


「別に……この悪に染まった街にも、暴力だけでは生き抜けない『ルール』がある。

俺は賢く強かに狡猾に、それに従って見苦しく生きているだけさ。」


『そうねぇ、高潔な英雄サマから見ればあなたは生き汚いかもねぇ。』


「勝利の位置は汚れきった泥の中にある。

気高く尊い道を歩むのは『誇り』……精神的な健康面において重要だが

自らの身を……勝利から最も遠い場所に置くことになってしまう。

俺は両立できない二つの中から勝利を選んだ。

そういうことさ。」


『んー、素敵。

そういうの、すごく素敵よぉ。

私を満足させてくれる素敵な悪党だわぁ。

じゃあ、今夜会いましょう。』


「……ああ。」

命は己のためにある。

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