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16枚目 私、レッテルを貼られました

前回のあらすじ:腹黒人事と情報交換の約束をした。


「そうだ。僕ともメイシ交換して下さい」

「シュルツ様と……?」


 思い出したようにシュルツ様が人差し指を立て提案をした。


「色変更と【転移】したのはポウタ。交換したのもポウタだけ。互いにメイシを持っていることが【転移】の条件かもしれません。それに、今後もより良い関係を築くために交換をするんでしょ?」


 確かに一理ある。データは多いほどいいし関係作りも大事。相手は腹黒人事だが、うん。

 そう自分を納得させ白紙の名刺とペンを渡すと達筆な続け字で記入し、両手で私に差し出す。彼も渡し方を覚えていたようだ。


「……頂戴致します。【シーガス王国近衛騎士団所属人事部クロード・シュルツ】様ですね」

「魔術と勘違いしますので心の中か小声を推奨します」

「あ、はい、わかりました。ありがとうございます」


 確認の復唱にそんな勘違いがあるとは。教えてもらえてよかった。

 だが、名刺に変化は見られない。


「今後も可能な限り交換し情報を集めて下さい」

「わかりました。しゅ――」

「クロード、で。()()()()()()()、より良い関係を築きましょう」


 流石、腹黒人事。名前呼びになったのを見逃さない。今後は気を付けよう。

 そして、悔しいがふんわり垂れ目笑顔はやっぱりイケメン。だから私も満面の笑みで返答する。


「わかりました。クロード()




 最初の情報交換は、ここラレンナ大陸の三つの国家について。

 北の極寒地帯スヴェルミュカンデヤ王国、東の砂漠地帯アルアシア帝国、そして私がいるシーガス王国。レヴィさんはスヴェルミュカンデヤ出身。


 シーガスは山脈と大平原に囲まれた立地。年間を通し気候が安定し移住者が多い。レヴィさんを始め他国籍でも才能ある人物には騎士や魔術師への門扉が開かれている。移住者の目的の一つらしい。

 昔から移住を受け入れてきたため異文化にも寛容で、おおらかな人が多いそうだ。今のところ誰にも当てはまらないのは何故だ。


「主な産業は畜産農業と魔石です」

「魔石?」

「魔力を溜めれる石です。生活の要ともいえ窓からも見える山脈に採掘場があります。魔石に魔力を込め魔術具にはめることで魔術が発動します」


 側にあるランプ――の電灯部分を見せ手をかざすと灯りが点いた。電灯が光の魔石、器具が魔術具。魔術具に魔力を流し電灯が点く仕組みらしい。

 ドライヤーは火と風の魔石、下水は水と土の魔石等々、身近にあるのに気付かないものだ。


「私が溜める聖騎士の腕輪も」

「加工はしてありますが元は魔石です。魔力が少ない民の方が圧倒的に多いため昔から重宝されています。生活用であれば安値で購入でき十年はもちますよ……今は採れ難くなりましたが」


 最後、険しい表情になったのが気になるが王国にとってはなくてはならない物のようだ。

 しかし、他国にもあるのか、生活以外の使い道は何か、を話す気は今はない様子。別の話題だ。


「そういえば、国王陛下はおいくつですか?」

「今年四三歳になられます。即位され約二十年ですが一般的です。王子三人と王女一人がおられます。ちなみに成人は男性一八、女性一七です。結婚適齢期は二十から二三でしょうか」



 完全に行き遅れのレッテルを私は貼られた。



 うん、中世とか昔の日本もそれぐらいだったし、現代でも早い人は早いから。別に、うん。でも、異世界(ここ)で恋愛するのは厳しくなったな……いや恋人探しに来たんじゃないけど。

 そういえば、レヴィさんは恋人とかいるのかな。いたら申し訳ないな。こんなアラサー女に付き合わせてばかりで。後で聞いておかないと。


 暗くて重たい気持ちを押し込め表面上は笑顔を作る。


「……王位争いとかはないんですか?」

「本当に今それを聞きたいのか、とても疑問な雰囲気なんですが……あ、はい、何でもありません……今のところ大丈夫ですが、そこら辺はややこしいのでまた今度」


 そっちこそ誤魔化した、とむくれたいのを我慢し心を落ち着かせる。私の年齢を知っていながら年の話をするとは、やはり腹黒人事だ。


「文武両道、血縁だけではないと言うことです。王国の貴族階級に関しては、三大公家さえ覚えておけば問題はありません」

「三大公家?」


 クロード様は頷き、紙に三角形を描くように各頂点に文字を綴る。大公家と言うのだから恐らく家名だ。


「王家を支える三大公家。剣術武具の赤の剣ローディアント、国境城塞の青の鎧シュバイデルツ、自然循環の緑の盾グランドウィット。高位貴族は三大公家のいずれかの血縁者のため似た容姿、魔力を持っています。ちなみに私は青のシュバイデルツです」

「ああ、何とな~くそれっぽくて長子っぽいです」


 貴族雰囲気なイケメンルックスはやはり貴族様だった。指輪はしていないため未婚だろうが、ここは異世界。婚約者ぐらいはいそうだ。

 そんな貴族様にアラサー乙女心は理解できないだろう。何かをやらかした雰囲気は掴んでいるが教えてあげるほど今は大人ではない。私は根に持つと長いタイプ。


「確かに嫡男ですが……何です?」

「何でもないです。はい、次は私の番です」


 クロード様は不満そうな表情。珍しい。


 そして――地表は炎で覆われていたが徐々に冷え表面が固まり大地に。全体が冷えると雨が振りだし何年も降り続け海ができ最初の生命が誕生――という基本情報、地球の始まりを説明した。


「ああ……最初の生命とは何か。人か動物か気になるのに時間が……」


 細菌です。


「私も昼食ですので、また今度」

「ええ、次を楽しみにしています。あ、レヴィ。ちょっと」


 視線を向けられたため頷くと二人で何処かへと消える。今後のことでも話しているのだろうか。

 筆記用具を片付け外へ出ると暖かな光と風を感じた。


 王国の季節は種、芽、花、実の四シーズン。一シーズン九十日、年間三六十日。

 今日は種の月六六日、日本で言えば三月六日。曜日はない。スマホは相変わらず三月三日のままだが、一年が千日とかじゃなくて本当によかった。二年契約が大変なことになる。


 時間は同じで一日二四時間。大時計が六時間に一度鳴り朝六時に四回、十二時に三回と一回ずつ減っていく。分は意識されておらず腕時計が精密すぎるとクロード様は驚いていた。


 同じ、だけど違う。

 知れば知る程、似て異なる世界なのだと気付かされる。

 窓には乾いた笑みを浮かべた自分が映し出されていた。言葉では表せない複雑な心境とは、このことだろう。


「お待たせしました」


 二人だけで話をさせたことに後悔した。

 明らかにレヴィさんの顔色が悪く、腹黒人事に何か言われたのは明白だ。


「……女性を待たせるのは紳士としてどうなんですか?」


 わざとため息を吐き不機嫌な対応をとると何故か肩を震わせている。この人、今日は随分と失礼だ。

 名刺交換したことを後悔し始めた時、右手を持ち上げられ自然と視線も同じ方向へ。

 握られた長い手は思ったよりも硬かった。太陽の光に照らされ青みが強まったさらさらの青黒の髪が風に揺れ、隙間から漆黒の垂れ目が優雅に微笑む。



「それは、大変失礼致しました。次回、是非とも(わたくし)に挽回の機会を頂ければと」



 そう呟くと持ち上げられていた私の手の甲に唇を寄せ――


「!?」

「また、お会いしましょう」


 ――ゆっくりと手をおろされ優雅な微笑みを崩さず、綺麗な一礼をし去って行った。


 手の甲にキス――――はされていない。

 ギリギリで! リップ音だけ!


 窓に映っている私は怒りやら恥ずかしさやらで赤面していた。いろいろと叫びたいが、ふっと銀髪が窓に映り慌てて声をあげる。


「ち、違いますよ! 音だけで何も――」


 何を弁解したいのかもわからず大慌ての私だったが、顔色が悪いままの彼を見て大きくため息を吐く。


 問題を置いていくな腹黒人事!!!


マドカはクロードと名刺交換をした!

一言メモ→腹黒

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