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18/22

婚約破棄

それから、ライナ様と私の距離は若干縮まった……様な気がする。


奴隷の様な扱いは変わっていないが、どこか雰囲気が柔らかくなった。


それが本当のライナ・エトーレなのかもしれないし、気が変わっただけなのかもしれない。


だけどその変化は私にやる気と活力を与え今日も元気に学園生活を送っている。


「そういえばライナ嬢とエドワード様が正式にご婚約するらしいねえ」


アレンがそう呟くまでは。


「は?」

「えっ、マリアちゃんライナちゃんと仲いいのに知らないの?ほら、ライナちゃんって今年で十六になるじゃん?だからフローレンス家に嫁ぎに行くんだよ」

「……そんなの聞いてません」

「信頼されてないんだねえ」


いやでもそういえばエドワードルートでそんなイベントがあった様な気がする。


ヒロインのマリアは駄々をこねて延期にさせるわけだが、ライナ様ルートではそんなイベントあっただろうか?これもシナリオブレイクの効果なのかもしれない。


「……私は、どうすればいいんでしょう」

「エドワード様のこと?」


私は首を振った。


「……そっか、ライナちゃんが。そっかあ」


アレンは少し考えた後、あっけらかんと答えた。


「無理だね!」

「そんなこといいます?!」

「だってフローレンス家って言ったら公爵家だよ?そんな家柄との婚約反故に出来るわけないじゃん!」

「頑張れの一言くらい言ってもいいじゃないですか〜〜!」

「無理なもんは無理!ただ……」


アレンは口元を上げると意地の悪そうな顔で言った。


「基本的に「結婚は」卒業まで認められていない。その三年間でライナちゃんをどう落とせるかが勝負だね」


あと一年、命を失うまでのタイムリミット。エドワードには申し訳ないが、彼女を誰にも渡すつもりはない。


「よしっ!がんばります!」

「うんうんそのいき。グレイに寄る虫が減って助かるよ」


虫ってお前……、どうしようもないブラコンに呆れながらも私はライナ様との待ち合わせ場所に向かった。


「ライナ様〜!」

「マリア、今日は早いのね」

「はいっ!今日はサンドイッチを作ってきました!」

「食べれる物だといいのだけど」

「もう〜〜!そんな意地悪言わないでくださいよう!」


ライナ様の言うように親衛隊の騒ぎは一時的であり、騒ぎが収まった後、あれから生徒会室の逢瀬を経て、中庭でランチをする仲になった。


私の中のマリアも勘違いからの失恋を経験し、今はライナ様にお熱だ。


勿論取り巻きはいない。ここは二人だけの楽園だ。


幸せだった。たとえそれが期間限定のものだったとしても。


「ライナ様は、いつから私を守ってくださってたんですか?」

「さあ、わすれてしまったわ」

「ラ、ライナ様は私のことを少なからずは好きだと思っていらっしゃいますか?!」

「どうでしょうね」


質問ははぐらかされてばかりだけどそれでも幸せだった。


ライナ様がどう思っているのかはわからなかったけれど、それでも幸せにはちがいなかった。




あの日が来るまでは。



「ライナ、どういうことだ」


額に汗を浮かばせたエドワードは中庭の扉を開けると開幕一番そう叫んだ。


「耳障りよ。何の用?」

「婚約破棄とはどういうつもりだ」


私はライナ様の方を見る。


婚約破棄?私が死ぬのはハッピーエンドを迎えるまでの十七歳、ライナ様が十八歳で結婚するならばなんの問題もないはずだ。


だって私の呪いから解放されるのだから。


「そのままの意味よ」

「だから理由を聞いている!」


エドワードは声を荒あげた。


「エトーレ家とは十八で縁を切るの。私は平民になるわ。そして徴兵される」

「徴兵?!」


そう声を出したのは私だった。だってそうだ。エトーレ家にいれば徴兵は免除されるし、悠々自適な生活を送れる。


「何故だ!もし家に問題があるなら私がなんとかする!だから婚約解消なんてやめてくれ!」

「嫌よ」


ライナ様はそう言い切った。


「私は自分の道は自分で決めるわ」


そうしてライナ様は私の方を腕で抱き寄せるとエドワードに言い放つ。


「私はこの子のそばにいるって決めたの。もう隠さない」

「……マリア・リグレッド」


その声は氷のように冷たかった。


「君は……信じていい人種だと思っていた。だからこそ、私は君を許さない」


そうして中庭を去っていくエドワードにため息をつくと、ライナ様は力なく笑った。


「邪魔が入ったわね、お茶にしましょうか」


それから、気まずい空気が流れた。


ここから本格的に男勢空気わよ^〜

いつも誤字報告ありがとうございます。 至らず申し訳ありません。

これからも応援よろしくお願いします。

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