3 婚約者候補との顔合わせ
読み切りバージョンの本編前夜といったところです。
それと、ちょっと生臭いのですが、その点はご容赦を。
11歳になると、初潮が来た。
いや、最初は焦ったのなんの。朝起きたら、腹は痛いわ、夜着のズボンは真っ赤だわ。
あんなに大量の人間の血を見るなんて、前世含めても初めてだったから、また死ぬのかと思った。
「! ニ、ニーナ! ニーナ!」
「お嬢様! どうなさいました!?」
「助けて…血が…お腹痛い…」
「お嬢様、失礼いたします!」
言うが早いか、ニーナは俺をベッドの上に寝かせ、ズボンの上から下腹を触ったりして外傷がないことを確認して、俺を抱き締めた。
「お嬢様、これは病気ではございません。
お嬢様のお体が立派なレディになったという印でございます」
それを聞いた俺は、「ああ、これが生理か」って冷静になれた。
馬関係以外では、パニックになることはほぼなくなってたんで、久々に焦ったわ。
んで、どうやらお父様は、俺に生理が来るのを待っていたらしい。
ニーナから報告が行ったんだろう、数日後にお父様に呼び出された。
「そろそろお前の婚約者を決めようと思う。
第4王子のブルスロック殿下を婿に迎える予定だ」
「王子?」
王子だ!? いや、確かに後継は必要だから、婿を取るのはわかるよ!? でも、なんで王子!?
俺が女公爵になるなら、婿なんてただの人だろ!? 女王にとっての王配みたいに立場なんてつかないだろ!?
あれ? もしかして、婿養子にして公爵にするとか? そしたら、俺、継がなくていい?
「養子に?」
「いや、あくまで跡を継ぐのはお前だ。
殿下は、王位継承権を捨てて、お前の夫というだけの立場になる」
いいのか、それで!?
「継承権、捨てる…」
「殿下の母君は陛下の側妃で、ブード子爵家の出だ。
ブード子爵家は立場も強くないし、我が家の庇護を求めてきている。
お前の婿に迎えるのに、ちょうどいいのだ」
「…はい」
ま、どうせ婿を迎えるのは確定事項だし、誰でも同じなんだけどな。
要するに、面倒なパワーバランスの上で、一番よさげなタマがその王子なんだな。
了承したものの、部屋に戻って色々考えてみると、今更ながら不安になってきた。
どうせ俺の結婚相手なんて、政略以外ありえないし、何の権限も持たせてもらえない種馬でしかないんだから、格下の家から来るもんだと思ってたんだけどなぁ。
第4王子とか言ったって、王子は王子だろ? 母親が子爵家出身の側妃だっつったって、王子じゃんねぇ。
俺より格が上じゃねぇか。
まずい。格下なら、なんとか相手できるつもりでいたけど、格上相手ってどうすりゃいいんだ?
まずい。最近身内しか相手にしてなかったから忘れかけてたけど、俺、コミュ障なんだよ!
ちゃんと口利けんのか!?
ヤバい。ドキドキしてきた。
俺の気持ちをよそに、顔合わせの日はちゃんとやってきた。
実は全部夢で、目が覚めたら俺はまだ7歳だったとかないかなぁ。
淡い期待はあっさり破れ、俺は朝から正装バージョンのドレスを着せられている。
「ニーナ、大げさじゃない?」
「王子殿下とのお顔合わせですから、これくらいはしませんと」
やっぱ王子扱いじゃないか!
どうなる、俺!? つーか、どうすりゃいいんだ、俺!?
読み切り版の内容(一部変更)となる4話は、今夜10時にアップします。