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最終話 2人のこれから

 王都の屋敷に戻ってみると、なぜかお父様が出迎えてくれてた。

 例によってお姫様抱っこで馬車を降りてきて、馬車から離れたところで地面に降ろされて目を開けたら、お父様と目が合ったんだ。あの気まずさったら、ちょっとないわ。

 端から見てると超イチャラブカップルにしか見えない降り方を、親に見られるってどうよ!? いや、婚約者だし、なんか婚前旅行みたいになっちゃったし、カップルで間違っちゃいないけどさ!

 結婚するなら、ロック以外ありえないと思うけどさ!

 お父様、目が笑ってたよ! あんな目してるお父様、初めて見た!

 なんか、朝帰りしたら玄関で親に出会(でくわ)した気分だよ。そんな経験ないけどな!

 ロックは、お父様に挨拶した後、王家の馬車が迎えに来るまで俺とお茶を飲んで帰ってった。




 夕食の席でお父様と顔合わせるの、なんか気まずいよな~とか思いつつ、数日ぶりの親子の時間を潰すわけにもいかないんで食堂に向かった。

 「馬車に乗れるようになって、よかった」

なんて、第一声で言われたんだけど。

 「乗れた、と言えるのでしょうか、あれは」


 ほとんど荷物だよな、あれ。乗れたっつうか、載せられた?


 「どんな形であれ、お前が馬車での移動に耐えられることは実証された。

  後は、もう少し楽に…そうだな、腕を組んで歩いて降りられるようになれば合格といったところか」


 歩く!? 自分の足で? ムリムリムリ、足腰立たねぇって!

 「それは…その…」


 「今すぐである必要はない。

  ゆっくり慣らして、最終目標で構わん。

  出歩く時は常に夫と腕を組んで歩く女公爵、ということなら、誰に侮られることもない」


 あ~、そっか。俺が爵位継いだ後の心配かぁ。

 たしかに、お姫様抱っこ(あれ)じゃなめられるよなぁ。


 「今回の領地行きの件、既に耳の早い者の噂になっている。

  特段の問題もないので、近いうちに殿下をお迎えすることにしようと思う。

  陛下の内諾はいただいている」


 は? ロックをお迎え? さっき帰ったばっかり…なんて話じゃないよな。婿に迎えるんだよな?

 「わたしは、まだ成人していません」


 「成人するまで婚姻できないという法はない。

  2人で領地を訪れたという実績もある。

  それとも、殿下に不満があるのか?」


 「ありませんが、早過ぎると…」


 「早い方がいい。他の誰かを夫にしたくはなかろう」


 え? ロック以外と結婚する可能性があんのか!? そりゃ困る。ロックじゃなきゃ()だぞ。

 「わかりました。お任せします」


 「うむ。で、領地の方はどうだった? 色々と考えてきたようだが。ああ、詳しいことは明後日でよい。殿下も来られることになっておるから、資料でもまとめておれ」


 「はい」


 あれ? そういや、ロックは次いつ来るかって言ってなかったな。

 明後日来るのか。今度は何を作ってやろうかな。




 2日後、訪ねてきたロックは、お父様の客間に通されていた。

 変だと思ったら、ニーナが言うには、今日は俺じゃなくてお父様の客なんだとか。

 でも、俺も客間に呼ばれてるぞ。

 おまけに、今日はかなりめかし込まれてる。

 もしかして、ロック以外にも客が来てんのか? ニーナに聞いても、「さあ? 存じません」で終わりだし。




 「お父様、入ります」


 客間に入っても、客はロックしかいなかった。

 いや、なんかロック(こいつ)、正装してないか?

 俺を見たロックは、つかつかと俺の前にやってきて、俺の左手を取って跪いた。


 「アーシュラル・サルード様。

  私をあなたの伴侶として認めてくださいますか」


 「あ…うん。ずっと支えて」

 …って、あれ? この流れって、もしかしなくてもプロポーズ、だよな? バカバカ、俺のバカ! なんでこんなに色気のない返事してんだよ! ここは、こう、もっとロマンチックに返すところじゃないか! 一世一代のイベントだぞ! コミュ障にも程があんだろ!

 うえぇぇ…。穴があったら入りたい。情けなくて涙が出てきたよ。


 「アーシュ、ありがとう。

  きっと一生支えます」


 「うん…」


 ロック、お前、いい奴だな! こんな色気のない返事に感動してくれて。

 思わず抱きついてから気が付いたけど、今、お父様の目の前じゃなかったっけ?

 恐る恐るお父様の方を見ると、鷹揚に拍手してた。ほとんど音立てないで拍手ってなんだろな。

 いたたまれなさで顔が熱くなる。お父様の目の前でプロポーズされるとか、考えてもみなかった。

 ああ、もう! 恥ずかしくって涙がこぼれちゃったよ!




 3日後、ロックが王位継承権を放棄した。

 これでロックは単なる王の子供ってことになる。

 三月後には、正式に婚姻の儀が執り行われるけど、ロックはその前にうちに引っ越してきた。いいのか、それ? いわゆる同棲なんじゃないか?

 仮にも王子と公爵令嬢で同棲ってどうなんだ?

 疑問は尽きないが、不満はない。

 ロックよりいい(やつ)がいるわけがない。断言してもいい。

 まぁ、その気になればすぐに子供も作れるけど、俺達まだ若いし、焦ることもないだろ。

 この世界でも、一般的に子供産むのは15歳から17歳くらいだしな。

 とりあえず、今は、婚姻の儀に向けて、歩いて馬車に乗る練習をしてる。

 目隠しして、ロックの腕を掴んで、ゆっくりと馬車に近付く。これができるようになったら、次は目を瞑って乗る練習だ。

 ロック(お前)となら、俺はきっと何でもできる。

 ロック、死ぬまで離さないからな!

 これで本編終了です。

 明日、公爵視点で裏話を載せて完結となります。

 そこまでお付き合いください。

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