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11 2人で視察

藤乃澄乃さまからいただいたFAを入れてあります。

 ロックがいるお陰で、視察は順調だ。

 領地の中でも馬車で動くことになるから初日はロックに回ってもらったんだけど、やっぱ、せっかくこっち来てるのにロックに見てもらうだけってのはどうなんだと思い直して、2日目からは俺もついてくことにした。


 一度乗ったんだから、もう馬車なんか怖くないぜ! …なんてことは当然ない。じゃあ、どうやって馬車を乗り降りしてるかっていうと、お姫様抱っこだ。

 目を瞑ってロックにしがみついて、お姫様抱っこされながら馬車に乗り、降りる時は馬車から少し離れたところまで連れて行ってもらってから、降ろされる。

 周囲の目が生暖かいのがいたたまれないが、こうしないと馬車に乗り降りできないんだからしょうがない。

 端から見たら、婚約者に抱きついてお姫様抱っこされて現れるわけだし、我が儘な甘えんぼ娘に見えてることだろう。

 しかも、婚約者は王子様ときてるからな。

 あれ? もしかして、王子を顎で使う我が儘娘って思われてたりして。

 う~、そう思うと、ますますまともにしゃべれなくなる…。

 あ、なんか、そこのおっさん、“なんだこの小娘、こんなのが次の領主なのか”って目で見てないか? そっちのおやじは、なんかこっち睨んでるし。

 緊張のせいで、言葉が頭に入ってこない。せっかく直接出てきたのに、これじゃホントに役立たずじゃないか。


 気ばかり焦ってぷるぷるしていたら、ロックが手を握ってくれた。その上、うまい具合に細かいところを訊いてくれたから、もっぺん話を聞けたし。

 すごいぞ、ロック! 俺、なんかやれそうな気がする!

 気になるところはロックに耳打ちして訊いてもらって、聞き取りは好調だ。

 やっぱ自分で来るとはかどるな。もちろん、ロックがいてくれるお陰だけど。




 屋敷に帰った後は、ロックと2人で問題点の洗い出しと対応策の協議だ。

 ロックの意見は、原則主義というか正統派な感じで、すごく参考になる。俺はどっちかっていうと、前世での経験を基に考えるから、こっちの世界のスタンダードってもんがいまいちピンと来ない。だから、ロックから原則的な考え方を聞かせてもらうと、すりあわせができて便利だ。

 前世になんかの映画で見たんだけど、革新的すぎるもんってのは、違和感がありすぎて受け入れられないらしい。中世に週休2日制とかな。進歩は一歩ずつでなければダメってことだ。


 ま、とにかく、ちょっとだけ便利に、合理的にってやってくと、改善できそうなところはいくつもある。

 もちろん、まだ俺が差配できるわけじゃないから、お父様に進言する程度だけど。

 この前の馬車もそうだったけど、お父様はかなり柔軟に俺の考えを拾ってくれるから、考えるのも楽しいんだよな。

 ホントは道の舗装とかすると流通がスムースになるんだろうけど、さすがにアスファルトとかないし、荷車や荷馬車に、公爵家(うち)みたいなサスペンション入れたりしたら、予算がいくらあっても足りないしな。




 なんか、ロックとそういう話をしてると楽しい。

 こいつ、お父様と同じで、頭が柔らかい。飲み込みの良さなんか、お父様以上かも。やっぱ若いからかね。

 領地の方の屋敷は、ガス灯の付いてる部屋が少なくて、夜にこういう話ができるところが食堂の隣の娯楽室とかってところしかない。本来は、晩餐会の後に男連中が入る部屋らしい。

 俺やロックの部屋にも当然ガス灯はあるけど、夜に異性の部屋に入るのは、そういうこと(・・・・・・)をするためと見なされるからなぁ。

 いくら婚約者とはいっても、そこはやっぱ節度ってもんがあるからな。




 いよいよ明日は、王都に帰ることになる。

 一度、きちんとロックに礼を言っときたいと思ってたんで、せっかくだから夕食の席で言ってみた。


 「ロック、ありがとう。本当に助かった。

  これからも助けてほしい」


 ロックはにっこり笑って

 「もちろんです、アーシュ。

  これからも、ずっと」

と答えてくれた。

 まったく、12歳のくせに紳士な奴だ。

 でも、ちゃんと心も籠もった言葉だった。




 王都に帰る馬車の中で、会話が途切れた時に少し考えてみる。

 今回の旅で、俺は永年の懸案だった“馬車に乗れない”という弱点をある程度克服できた。

 ロックにお姫様抱っこされるという、かなり照れるやり方だけど、そのうち自分で歩いて乗り降りできるようになるだろう。

 コミュ障は、多分、一生治らないだろうけど、ロックが傍にいてくれればなんとかなる。

 全部ロック頼みなのが情けないけどな。

 気は回るし頭は切れるし、ロック(お前)は最高のパートナーだよ。


 「ロックが婚約者でよかった」


 結婚したらずっと一緒にいられるから、ずっと助けてもらえるよな。


挿絵(By みてみん)

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