*ラプンツェルの成長*
お城では王子様とお妃様が従者からラプンツェルが魔女と一緒に姿を消した事を聞き、城の者を集めました。
「我が娘ラプンツェルが魔女に拐われた。一刻も早く見つけ出してくれ」
王子様は城の者にそう伝えると自らも装備を身に纏い馬に飛び乗りました。
「私はお城でお待ちしております。あなたもどうかご無事でありますよう」
「あぁ、ここで待っていてくれ。必ずラプンツェルを連れて戻ってくる。さぁ、皆の者行くぞ!必ずラプンツェルを見つけ出す!」
王子と従者が先頭に立ち城を出ました。
森に入るとそれぞれ別れてラプンツェルを探します。
けれどラプンツェルの姿は見つけられませんでした。
魔女は城の者が探しに来ることを予測していたのです。そのためラプンツェルと暮らす家の周りには結界をはり、人を近づけないようにしていたのです。
この事もラプンツェルは知りませんでした…。
王子様と城の者達は決して諦めずラプンツェルの無事を祈りながら何年も探し続けました。
お城では毎年ラプンツェルの誕生日になると小さくて可愛らしい小鳥を空高く羽ばたかせました。
国中の者が空に向かって羽ばたく小鳥にプリンセスの無事を祈って…。
その小鳥は毎年Rapunzelが咲いている場所に飛んでいきます。
そしてその場所で小鳥はラプンツェルに会っていたのでした。
時は過ぎ、ラプンツェルが15歳になりました。
彼女はとても優しく明るい女性へと成長し、紫色に輝く髪はとても長くなりました。
魔女のマリンと変わらぬ生活を送っていたある日…
「ラプンツェル、この子の手当てをしてあげて?」
マリンが外から家の中にいるラプンツェルに声をかけます。
すると2階の窓からラプンツェルが顔を出しました。
「今、行くー!」
窓から紫色に輝く艶やかな髪をたらしラプンツェルが飛び降ります。
「階段で降りてきたらいいのに…、危ないでしょ?」
「この方が早いわ!うわぁっ、凄く痛そう。今すぐ治してあげるからね」
マリンが抱き抱えていたウサギにラプンツェルは意識を集中させると片手をウサギの額に近づけます。
一瞬優しく微笑むと明るく柔らかい声で呪文を唱えました。
「癒しの花に魔力を添えて傷を癒し運命を変えよ、美しきRapunzelの花」
すると紫色の光がウサギを包み込み、傷を癒しました。
「ちゃんと使いこなせるようになったわね、ラプンツェル」
「えぇ。マリンのおかげよ!」
ラプンツェルは無邪気な笑顔をマリンに向けました。
ラプンツェルとマリンの生活は今年で10年になります。
ラプンツェルは結界の中であれば自由であり、外に出て小動物と触れ合ったり小鳥とお喋りをしたりしていました。
マリンは週に1度、森を抜け街に出て食材などを買っていました。
マリンが家にいる日のラプンツェルは外にあまり出ず、家の中で本を読んだりマリンとお菓子作りをしたり家で出来ることをして過ごします。
マリンが外出する日はマリンには内緒でラプンツェルは外に出てお花を摘んだり、Rapunzelが咲くあの場所に仲良くなった動物達と行きよく歌を歌っていました。
「お父様とお母様は元気かなぁ。会いたい…」
Rapunzelが咲く場所で動物達にふと呟きます。
「私、魔力をちゃんと使えるようになったの。だからね…帰りたい…。…けどマリンに言えないの」
ラプンツェルは悲しそうに話しました。
すると動物達が彼女に寄り添い鳴いたのです。
「私、マリンのことも大好きなの…」
ラプンツェルは泣き出してしまいました。
暫くすると彼女は涙をぬぐい再び歌を歌い始めました。
するとある1人の男性が目の前に現れたのです。
「綺麗な歌声だ」
「あ…あなたは誰?私が見えるの?」
「僕はディアレット・モブディ。ただの旅人ですよ」
「ディアレット・モブディ?本当に私が見えているのね…。触れられるし私の声も聞こえてる」
「聞くのが少し恥ずかしいんだが、君は…妖精か何かなの?」
「え?あ、違うわ。私はちゃんと人間よ!ただ…」
「ただ?」
「な…なんでもないの!私、マリン以外と話をするのが久しぶりなの。あなたの話を聞かせてくれない?旅人なのよね?」
ラプンツェルは嬉しそうに目の前の彼に訊ねました。
「まぁ…。あまり話をするのは得意じゃないけどそれでもいいなら…」
ディアレット・モブディはその場に座り込み旅の話を始めました。
ラプンツェルは目を丸くして話を聞きます。
「あなたのお話、とても楽しい!」
「ディアでいいよ。僕の旅話を楽しそうに聞いてくれるのは君だけだよ」
「わかった。ディアって呼ぶね。私はラプンツェル。名を名乗ってなかったね。"ラプンツェル"って呼んで?」
「"ラプンツェル"か。いい名前だね」
「ありがとう、ディア。また会える?もっと話を聞きたい」
「あー…暫くはこの国にいるから会えるよ」
「またここで会いたい。来週もこの時間にこの場所で会いたい」
「わかった。来週またこの時間にここへ来るよ」
「本当?ありがとう!私、とてもうれしい!約束よ!来週のこの時間にこの場所で」
「あぁ」
この日をきっかけに2人はこの場所で待ち合わせをするようになりました。