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幼なじみは、僕の母親!?  作者: じんべい
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図書室

第4章


〔図書室〕



始業式も終わり、放課後になった。


久しぶりに会った、スーと友生と憂稀は、話を弾ませていた。



「しかし、僕より小さかったスーが、こんなに成長するなんて、ビックリしたよ。


僕より背が高くなったんじゃない?」


「ホントよ、一体何を食べたら、そんなに大きくなるのよ。」



憂稀の視線は、もはや一点しか見えていない。



「ベツニナニモシテマセ~ン。

マイニチフツウニ、肉タベテ、ネテ、肉タベテ、ネテヲ、クリカエシテマシタ。」


「はぁ~、日本でそれやると、絶対太っちゃう…アメリカ人が、羨ましいわ…」



憂稀は、ため息混じりに言った。



「そんな事より、スーはどこに住むの?」



落ち込む憂稀の頭を撫でながら、友生はスーに聞いた。



「オヤ?ユウキ、キイテマセンカ~?ワタシ、ユウキノイエニスミマ~ス。」


「え~~~~~っ!」

「え~~~~~~っ!!」


2人共、椅子から転げ落ちそうな程驚いた。


「母さん、そんなこと一言も言ってなかったけどな。」


「私も、何も聞いてない。」



その頃、上地家では友生の母親がニコニコしながら、夕食の準備をしていた。


「今頃、友生と憂ちゃん、ビックリしてるだろうなぁ。ウフフ。

さて、歓迎パーティーの準備もしなくちゃ。」


ノリノリの母親であった。



「ちょ、ちょっと待って、じゃあ友生と一緒に暮らすって事?」


「オー、ソノトウリデ~ス。」


スーは友生の腕を抱き寄せながら言った。


「大丈夫だよ、憂稀。空いてる部屋があるから、スーにはそこに、住んで貰うから。」


「ワタ~シ、トモキトオナジヘヤがイイデ~ス。ソシテ、ムカシミタイニ、イッショ二ネマショウ。」


「ダメよ、スー!絶対ダメ!!あ~、もう!私も、友生の家に住む!!」



「無茶言うなよ、憂稀。憂稀も、たまに泊まりにくればいいじゃん。

母さんも、早くスーに会いたくて、ウズウズしてるかもしれないから、そろそろ帰ろう。」


友生が、カバンをもって、席を立とうとすると、


「チョット、マッテクダサ~イ。ワタシ、カエルマエニ、ホケンシツイキタイデス。」


「え?保健室?どこか、体の具合でも悪いの?」


憂稀が心配そうに尋ねる



「イエ、ニホンノコウコウデハ、スキナオトコノコト、

イッショ二ホケンシツノベッドデ、ネルキマリガ、アルソウデス。」


「いや、いや、無いから…」


友生と憂稀が呆れたように、真顔で否定する。」


「アト、タイイクカンノ、ジュンビシツノ、マットヤ、トビバコノウエデ、アイヲタシカメアイマ~ス」


「………………」


友生と憂稀の目が、点になってる。


「チガウンデスカ?ジャア、オクジョウノ、キュウスイトウノ、アイダハ?」


「…うちの学校、給水塔無いから…」


「エ~?ジャア、ワタシハドコデ、トモキトHシタライインデスカ?」



「ちょ、ちょっと!しなくていいわよ!そんなもん!!あんた、何しに日本に来たのよ!」


憂稀の顔は、今にも破裂しそうな程、真っ赤だ。


「オー、ユウキ、コワイデース。マルデアカオニデース。」


「何ですって~!!」



憂稀の顔が、ますます赤くなる。頭からツノが生えて来そうな勢いだ。


「全く、誰だよ。偏った情報教えたの……」


2人の間で、呆れ返っていた、友生だった。



賑やかな教室の反対側には、清美と香の姿があった。



「じゃあ、私は生徒会室に行くけど、香はどうする?」


「うん、いつものように、図書室で待ってる。」


「わかった。いつもごめんね、待たせちゃって。」


「ううん、大丈夫だよ。私、本好きだし、それにね…」


「それに…?」


「なんでもない、なんでもない。」


香は少し赤くなり、


「じゃあ、図書室行ってくる。」


香は一目散に図書室に走っていった。



清美が生徒会室に着いた頃、香は図書室の前で、大きく深呼吸していた。



「ハァ~、フゥ~…」


そして、ゆっくりと図書室のドアを開けた。


「おじゃましま~す…。」


香は、周りに聞こえるか、聞こえないぐらいの小さな声で挨拶をしながら部屋に入ると、グルリと見渡し、1人の男子に目を止めた。



「いた…。」


香は適当な本を取ると、彼から少し離れた所に空いてる席を見つけ、

しかし、しっかりと彼の姿が見える場所を確保した。


香は本を見ては、彼の姿を見つめ、本を見ては、彼の姿を見つめていた。


彼の名前は「氷河 透」


放課後になると、いつも図書室に来て、1人で本を読んでいる。


背が高く、眼鏡がトレードマークだが、あまり人と話してる姿は見たことがない。


香の視線に気付くのか、たまに香と目が合う事があった。


香は彼の本を読んでる姿が好きで、最近では本を見てる時間より、彼を見てる時間の方が、長くなっていた。


本を見てる彼の目は、名前の通り、眼鏡の奥で優しく透き通るように輝いていた。


そんな2人の様子を本棚の陰から見てる人物がいた。



草村 育枝だ。


育枝はいつものように、ニヤニヤしながら、ノートを片手に何かを書いていた。



小1時間ぐらい経った頃、図書室に清美が入ってきた。


清美は香を見つけると、


「お待たせ、香、待った?」


「ううん、いつものことだもん。」


「じゃあ、帰ろうか。」


「う、うん…」


香は、チラッと氷河の方を見た。まだ彼を見ていたかったが、諦めて帰ろうとした。


そんな香の視線の先に、

氷河の姿があることに気が付いた清美は、


「ハハ~ン、そういうことか。」


何かに気付いた清美は、氷河に近づいて行った。


「こんにちは、氷河君。熱心ね、勉強してるの?」


「水川 清美か。」


実はこの2人、知り合いだった。

クラスは違うが、毎回テストのトップを争ってる、清美と風見の下には、必ずこの氷河がいたのだ。


そして氷河は、おもむろに立ち上がり、180はあろうかという身長で、

清美を見下ろしながら、


「いつまでも、お前らの天下だと思うなよ。次は必ず、倒す!」



その時の氷河の目は、本を読んでいた時の、優しい目ではなかった。


冷たく、鋭く、まるで氷のような視線だった。



そして、清美と香は、この時、氷河が言った言葉の本当の意味を、まだ知らないでいた…




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