咎人と美少女
「ハハハッ」
こんなに心から笑えたのは何時ぶりだろうか。
少なくとも物心ついたときからは記憶に無い気がする。
リーゼロッテに視線を戻すと不服そうに唇を尖らせ俺に突っかかってくる。
「な、なにがおかしいのよ!」
頬を真っ赤にしたリーゼロッテが抗議をしてくる。
それを傍目に見ながら『コイツ可愛いな……』と考えていたが、本題からだいぶ逸れた事を思い出し話を元に戻す。
「お前可愛い奴だなって」
「!???」
……つい悪い癖で話を戻し損ねてしまった。
しかもリーゼロッテは茹でダコのように真っ赤になっている。
話が進まずややこしくなりそうなので今度こそ話を軌道修正しよう。
「それはどうでもいいんだが、どうして俺のことがわかったんだ?」
「どうでもいいってなによ!」
今度は身を乗り出してきたリーゼロッテに食いつかれてしまった。
女心は複雑だなぁと、しみじみ実感した。
何を言っても食い付いてきそうなので、もう一度言う事にしよう。
「お前可愛いな、ところで何で俺のことがわかったんだ?」
二回同じ台詞を吐くと、今度は先程とは打って変わり頬を深紅に染めながら押し黙ってしまった。
「なあ聞いてるか?」
俺がもう一度問い掛けると、リーゼロッテは何かを思い出したかのように目をぱちくりとさせていた。
「あっ!えっ!あなたの事を知った経緯だっけ?」
ようやく本題に入れそうだ。
多少ボケてそうだがこの調子なら問題ないだろう。
「おう、ちなみに俺のことは皆には内緒で頼む」
たぶん大丈夫だとは思うが念のため口止めをしておくことにした。
「当たり前でしょう?アンタはお父さんに倒してもらうんだから」
そこには当たり前だと言わないばかりに胸を張りながら答える彼女がいた。
俺は少しホッとしながら胸をなでおろす。
「ありがとな」
一応お礼も言っておくことにした。
「別にいいわよ、アンタも大変でしょう?」
「ああ」
軽く一言だけ返しておく。実際滅茶苦茶大変だ。
「それでアンタの事知った経緯だけど……最初の自己紹介でマスクザって自分で言ったでしょ? アレでなんとなくそんな気がしたの」
「それだけの理由でか……?」
俺は驚愕した。さすがに迂闊だった。もしかして受付の人にもバレてるのじゃなかろうか。
顔を真っ青にしているとリーゼロッテがフォローしなくちゃと言わんばかりに言葉を紡ぎだす。
「お父さんが昔から言ってたの。私がまだ小さい頃に試合で失格になったマスクザ渡辺って選手が凄く強かったって。それでアンタの試合みてて、凄く強かったじゃない……? だから何となくね……?」
凄く長文で必死にフォローをされた気がする。リーゼロッテなんていいやつなんだろう。心の底から感動する。
「それにアンタは覚えてないかもしれないけどあの時も私アンタの試合見てたのよ?」
そう語りながらリーゼロッテは懐かしそうに目を細めていた。
「そうか……俺はお前のことを見た記憶は無いな」
そりゃ話しても無いから記憶に残らないでしょとリーゼロッテは笑いながら話を続ける。
とても魅力的な笑顔だった。かと思うとリーゼロッテは突然キリッと表情を変え語り出す。
「アンタが人を殺す場面を見た時凄く驚いたのよ? 正直に言うと今でもアンタがのうのうと生きてる事が許せないの」
どうやら彼女は許せないようだ。人殺しという咎を背負った俺を。




