素晴らしき豪邸
布袋を見つめながら担ぎ何処に行けばいいのか尋ねると、リーゼロッテが先導するように歩を進める。
ドスンドスンと相撲取りのようについていく俺、その光景を奇異な視線で見ている一般人を吹き飛ばしながら歩幅が進む。
しばらく見世物になりながら歩いていると、デカイ建物に辿り着いた。
「さあ上がって。私のお家だから」
「お、お家ってお前……!?」
建物の余りの巨大さにたじろぐ。優に十階はありそうな高さで屋上が遥か遠くに見える。
ビビっている俺の方に向け手招きしているリーゼロッテの元へフラフラと歩み寄る。
なんか凄いショックだ。これが金持ちと貧乏人の差なのだろうか、途方に暮れるしかない。
「俺の195万シール、一ヶ月の家賃で消えちゃうレベルだろコレ」
「あはは」
笑って誤魔化されてしまったが、相当なお金持ちである事は疑いようがない。
なんとも羨ましい限りで妬んでいると、手招きをされ案内をされるのでヒョコヒョコついていく。
するとリーゼロッテが謎の物体を手のひらに乗せて、扉に投げ捨てたかと思うと室内への扉が開いた。
「!??」
あまりの出来事に愕然としていると「これが入り口の解錠方法なの」とあっけらかんと話しだす。
リーゼロッテ曰くセキュリティ強化をした末の措置らしいが俺には理屈がサッパリわからなかった。
「ま、まあいいや。上がらせてもらうぜ」
「はい、どうぞ」
重たい荷物を担ぎながら入室することにする。
俺を先導するようにリーゼロッテが前を歩いていき、エレベーターをスルーし階段を登っていく。
「おい、エレベーター乗らないのかよ」
「うん、そんな重たいもの担ぎながらだと故障しちゃうかもしれないでしょ?」
「て、てめえ」
「あはは冗談よ。今エレベーター壊れてるの……ごめんね?」
お客様になんて失礼な事をするんだろうと思っていたがそういう理由があるなら許してやらなくもない。
というか工匠なら自分でパパッと直したり出来ないのだろうかと考えていたが、口には出さない事にした。
「やむを得ない理由なら仕方ない。んでこれどこまで運ぶんだ?」
「お父さんの部屋よ」
「オッサンの部屋か……何階にあるんだよ」
「50階かな」
「おい!!」
あまりの階層に辟易とする。さすがに階段で歩いて行くのはしんどい……。
死んだ顔をしながら登っているとリーゼロッテが顔を覗き込み微笑みながら言った。
「うふふ冗談よ、ビックリした?」
「お前なあ……」
「アンタ見てるとからかいたくなるのよ」
「奇遇だな、俺もだぞ」
「それじゃあお互い様ね。悪いんだけど私の部屋まで持ってきて貰っていいかな?」
「だが断る」
一言告げてから布袋をドサッと落とす。
衝撃で地面が揺れたが床が凹んだりはしていないようだ。さすがは高級住宅だと言わざるをえない。
チラリと視線をリーゼロッテに戻すとションボリしたような表情をしていた。
「……わかったわよ」
消え入りそうな声で呟くが、俺はそんな事を気にする人間ではない。
「冗談だよ」
布袋を肩に担ぐと同時にリーゼロッテに伝えるが、表情には涙が見えた気がした。
「バカァ……」
「バカで悪いな」
俺の意図が伝わったようで涙はすぐ止まったようだが、代わりに軽めの罵倒を受けてしまう。
こんな風に悲しまれてしまうとバツが悪い。これなら金的攻撃されるほうが幾らかましだ。
俺は女性の涙に弱い男なのだろうか。それともコイツに対してだけなのだろうか。
女性と話した経験が無いのでそれを推し量る術はない。
「男はバカでいれないと駄目でしょ」
「お、おう」
暗い表情もスッカリ消え去り、何時の間にか俺のフォローまで出来る状態になっていた。
女は強いのか弱いのかサッパリわからないぜ。
「じゃあちゃんとついてきてね」
「任せろ」
足早なリーゼロッテを追い掛けていくが階段を一段上る度に、足の裏には考えられないような重圧が掛かり押し潰されそうになる。
(俺じゃなきゃ押し潰されてるね)
一歩ずつ順調に踏み出しながらもリーゼロッテについていく。気付けばかなり距離が開いていたがここで重大な事に気付いた。
距離と高度差の重要性に……。




