戦士はお金が欲しい
「な、ななな、何がおかしい!」
動揺しながらも何とか一言を返すが、原因がわからず困惑せずにはいられない。
そんな様子の俺を見て、増々おかしい様子が堪えられないリーゼロッテだった。
「だって、アンタ全財産で5万シールって少なすぎでしょ」
「す、少なくねーよ!」
俺の全財産をバカにされ俺はキレる。
(一体どんな思いをして貯めたお金だと思ってるんだ!)
しかし言葉で反論しようと思ったが悲しみのせいか声が出ず、パクパク口をあけている様子を増々笑われてしまう。
「ね、ねえアンタ、フヒヒ、さすがに貧乏すぎで、フフフ」
気持ち悪い奇声をあげながら喋るリーゼロッテの言葉に俺はションボリとしてしまうが尚も反論を続ける。
「た、確かに5万は少ないかもしれないがこれが1000万シールぐらいに化けるんだぞ!」
「へえ、どうして?」
悔しいが貧乏な事を肯定しつつも当選金額分を考慮すると大金持ちになることをアピールする。
リーゼロッテは疑問を口にしていたがこの様子を見るとチケット倍率の仕組みすら知らないと見える。
なんと尻の青い小娘だろうか、そう思いながらも親切に説明をすることにした。
「いいか? チケットには倍率っていうのがあってだな、買った金額と倍率を掛け合わせた金額を換金できるんだ。俺の倍率はなんと200倍以上だ! つまり1000万シールになる。わかったか?」
「あ、いや別にチケットの仕組みは知ってるわよ。そういうことじゃなくて」
(チケットの仕組みは知ってただと? 急に知ったかぶりするなんてこれだから尻の青い小娘は)
そんな風に怪訝な表情をしながらリーゼロッテを見つめていると、衝撃の言葉を耳にすることになる。
「だってさ、アンタの倍率50倍切ってたわよ」
「……はあ?」
「だから50倍切ってたわよ」
予想外の言葉に思考が停止する。50倍切ってるだと? 確かに俺が購入した直後は200倍以上だった筈だ。
いくら変動式のオッズだからといって、ほぼ締切直前だったんだぞ? 200倍から50倍以下になるには相当のお金が注ぎ込まれたはずだ。俺以外に一体だれがそんな大金をつぎ込む?
いや、まだ倍率を俺が確認したわけではない。もしかしたらリーゼロッテが俺を悔しがらせる為に嘘を吐いている可能性もあるし、システムの故障の可能性もある。
実際に換金をしてきたほうが早いんじゃないだろうか。そうすれば理由も判明するだろう。
チラリとリーゼロッテに視線を向けるが嘘を言っているようには見えなかった。
(……もし仮にだ、50倍だったとしたら250万ぽっちかあ。それでも多いけどすげー悲しいなあ)
ジタバタしても仕方がない、覚悟を決めるか。
そう思うや否や、踵を返し換金場へ急いで向かうことにするが背後から「ちょっと待ちなさいよ」という声が聞こえた。
当然無視し先を急ごうと思ったが、どういう心境の変化だろうか。
俺は振り返り、リーゼロッテを待つことにする。
「ハァハァ、アンタ何であの一瞬でこんなに移動してんのよ……私もついていくから一緒に行きましょ」
「何でついてくるんだよ、早く換金しにいきたいんだ俺は」
コイツと居れるのが内心嬉しいが、照れ隠しで冷たい言葉を言い放つ。
全く俺という奴は……思春期の小学生か!と自分にツッコミを居れる。
「私も倍率気になるしいいでしょ?」
屈託のない笑顔でニコッと笑うリーゼロッテから視線を背け、ゆっくりと歩き出す。
「いいけど……お金せびるなよ」
「もちのろん!」
背後をトテトテとついてくるコイツに思わず苦笑いをしてしまったのは内緒だ。
会話も無く幾ばくか歩いていると換金所の看板が見え、電光掲示板には俺の倍率がうっすらと表示されていた。
「あ、換金所だよ!」
「ああ、そうだな」
クールな言葉とは裏腹に必死に眼を凝らして見ているが、この位置からでは確認すること叶わず、少し急ぎ足で歩く事にした。
30m歩くとようやく肉眼で確認出来るようになるが、そこで驚きの数字が飛び込んでくる。
「さ、39倍……?」
「あちゃあ……低いわね」
あまりの低倍率に眩暈がしてきそうだ。覚悟はしてたもののあんまりだよ神様。
しかもかなり数字のキレも悪い。どうせなら30倍か40倍が良かったなと思ったが考えても仕方のないことか。
「んじゃあちょっと換金してくるわ」
「うん、いってらっしゃい」
背後のリーゼロッテに言い残し換金所に向かうが何故かリーゼロッテもついてきた。
(まじでコイツ金強奪する気じゃねえだろうな)
「おい、ついてくんなよ」
「別にいいじゃない減るもんじゃないでしょ?」
「まあそうだけどな……ちゃんと大人しくしてろよ? 大金見て騒ぎ出すなよ恥ずかしいから」
「そんな事するわけないでしょ!行くわよホラ!」
「お、おう」
気付けば何故か俺がリードされてしまっていた。コイツといるといつも調子が狂う。
換金所には多数の列が出来ており、並んでいる中年親父どもは皆が皆ニコニコしていた。
その列の中に美しく綺麗な髪、綺麗な肌、気が強そうな眼光を携えた一際美人な女性がいるのを確認し少し驚いた。
年齢は俺たちよりも多少上ぐらいだろうが、リーゼロッテに勝るとも劣らない美貌を持ちながら、こんな血生臭い会場で賭けをしているとは。
背後から女性を眺めていると、俺のストーカー臭漲る眼光に気付いたのだろうか? 背後を振り返り俺に笑顔を向けていた。
(可愛いなああ、彼女にしてええ)
そんな風に鼻の下を伸ばしていると背後からバコっと拳骨で頭部を殴られる。
「おい、何するんだよ」
たまらず背後のリーゼロッテに向かって抗議をする。まあ痛くないから別にいいんだけどな。
「アンタが鼻の下を伸ばしているからでしょ。いやらしい!」
鋭い正論を突かれるが敢えて反論する。
「いやいや、お前ぐらいに可愛い子が並んでたら誰だって見ちゃうだろ!」
「えっ?」
俺の巧みなキラーパスにリーゼロッテが顔を紅色に染めていた。




