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鋼鉄戦士と工匠技師  作者: 雪ノ音緋奈子
12/27

リーゼロッテの協力

「さすがオッサン」


 俺自身も満身創痍だが王者のオッサンにこんな程度で勝てるはずもない。素直に賞賛をし、言うことを聞かない身体に鞭を打ち奮い立たせようとした時だった。

「幻想異空間結界」と短く発したシュプラグリスの周囲に邪悪な気配が満ち、瘴気がシュプラグリスを覆い同時に爆発的に膨れ上がる。


「な、なんだこれ……」


 さすがの俺も初めて体験する奇妙な技に困惑気味だったが、明らかに見た目だけでヤバイ技だと直感する。

 困惑している間にも更に大きく瘴気が渦巻いていくのがわかる。


「これ……洒落にならなくね……?」



 ―――

 ――――――

 ―――――――――



 観客席からずっとお父さんと鋼鉄戦士の試合を観戦していた私。

 アイツなら必ず勝ってくれると信じていたけどお父さんが槍を出してからというもの不安で仕方なかったが、いよいよ的中してしまった。


「これってまさか……」

 

 鋼鉄戦士が洒落にならないと呟いている最中、会場の中で唯一解を得た女性がいた。リーゼロッテだ。

 

「お父さん、試合前はグランデュースの槍も使わないって言ってたのにどうして幻想異空間結界まで使っちゃうの……」


 私は嘆く。お父さんに何があったのだろう。お父さんを助けないといけない。私の力じゃあ何も出来ない。

 でも鋼鉄戦士なら……。アイツに託すことにした私は名を叫ぶ。


「鋼鉄戦士! 早くこっちにきて!」

「うん!? わかった!!」


 私の叫びに呼応したアイツが瞬く間に傍に駆けつけ、私の知っている事を全て告げる。


「グランデュースの槍はね、お父さんが工匠技師として創り上げた最高級の武器で、とある世界にて手に入れた高純度の魔石を加工し研磨しつづけた世界で一つだけの魔槍。その魔槍だって今まで一回も実戦で使用したことはなかったの。余りの威力に相手を殺してしまうため実戦で封印してたのに」


 手短に魔槍が作られた経緯を話し、本題に移る。


「魔槍ならまだいい。自分で力を制御すればいいのだから。でも……幻想異空間結界に至っては瘴気に包み込んだ者を術者以外、消滅させてしまう秘奥義。お父さんですら技の制御をすることが出来ないから絶対に試合では使用しないって言ってたのに……」

「やっぱりそんなエグい技だったか……」


 私の話を聞きながら鋼鉄戦士も頷く。今この時点でも瘴気は更に大きく肥大化していた。

 早くしないと全てが手遅れになってしまう。急いで話を続けることにした。


「それでね、お父さん言ってたの。幻想異空間結界を壊す方法は一つだけだって」

「それはどうやってやるんだ?」


 一刻も早く解決しようと鋼鉄戦士は逸る気持ちを抑えながら私に問いかけてきた。

 会場は既に舞台がほぼ瘴気に飲み込まれており、時間の猶予があまりない事を告げていた。


「瘴気はお父さんの身に付けた魔具を中心に展開されているの。これは創ったものじゃなくて古のダンジョンで見つけたものなんだけどね。その魔具を壊せば収束するって言ってたわ」

「ちょっと待て理屈はわかったが、瘴気がデカ過ぎて魔具がどこにあるかわからねえぞ」


 一見何も考えてないようなコイツが割りとまともな事を言ったことに対して少し驚きを感じる。

 私は鞄に手を突っ込んでからゴソゴソと漁りだす。中に入っていたアイテムを取り出しコイツに告げる。


「大丈夫、魔具は必ず瘴気の中心にあってお父さんの全身を包み込んでる筈よ。このアイテムで瘴気の中心部と角度を計測できるの」


 そう言いながら丸いヒヨコの形をした中心部自動計測器具を見せる。


「お、おう……」


 微妙な顔をしながら微妙な返事をされる。


「ちょ、ちょっとデザインは変だけどちゃんと使えるから大丈夫!」


 私は自分の造ったアイテムを慌ててフォローしながら段取りを説明する。


「いい? このヒヨコちゃんを使って中心部と角度を計算したら、そこに向かってアンタの一番強い一撃を打ち込んで!」

「ええ……それはアカンだろ……魔具を壊したあとオッサン衝撃で死んじゃうぞ……」


 あ、その事は考えてなかった。果たしてコイツの一撃にそこまでの威力があるのかしら。

 でもここまで成長した瘴気のバリアがあるから大丈夫よね、自分に言い聞かせ鋼鉄戦士に告げる。


「私のお父さんなんだからアンタの一撃じゃ死なないわよ!」

「わ、わかった……あとさ……実はこれが一番気になってるんだが……」

「なに?」


 コイツにしては歯切れの悪い返事を繰り返している。不安なのは確かにわかるけどと思いながらも聞いてみることにする。


「この瘴気に俺の攻撃直接叩きこんだら……俺の右腕消失するんじゃね……?」

「あ……」


 それは考えてなかった。確かにそうかもしれない。コイツの事だからビームみたいなの出せると思ってたけど出せないのかしら?


「ねえ、アンタってビームとか出せないの?」

「出せるわけないだろ」


 現実的な答えが帰ってきた。どうしようかしら。


「あはは、まあアンタなら何とかなるでしょ!任せるね!」

「おいおい……計画全部不安の種しかないんだが……」


 言葉とは裏腹に鋼鉄戦士の瞳には闘志の炎を宿しており、尋常じゃない気迫を感じる。

 四の五の言っても仕方がないので私はコイツに任せることにした。なんだかんだ言いながらも私はコイツを信じてるのだから。


「わかった! これも約束の内だしな」 


 頭をボリボリと掻きながらも約束の件を持ち出し快諾してくれる。そんなコイツに思わず見惚れてしまう。

 本当余計な一言さえ無ければイケメンなんだけどな。思わずクスリと笑ってしまう。


「じゃあ使うわよ、準備はいい?」

「おう!」

「絶対帰ってきてね」


 私は短く一言だけ告げるとアイテムを使用し、即座に中心点と角度を計算し、自動起動修正をしながらヒヨコちゃんは瘴気にまとわりつく。

 それを確認した鋼鉄戦士は私にチラッと視線を向ける。


「おう、じゃあ行ってくるわ」


 一言だけ呟いて彼は一瞬で姿を消した。少しだけ寂しさを感じたけど、無事解決して戻ってくるまで大人しく待つことにする。


「頑張ってね……鋼鉄戦士……」


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