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広い屋敷の中をひたすら歩き回っていた
それもそのはず。キッチンの場所なんて案内されていないからだ
しかも、マイクさんに部屋まで案内された時、キッチンらしい場所は通らなかった
屋敷の玄関から、左側にずっと来たからキッチンはその逆側かと思ったんだけど・・・
行き止まりだったのだ
途中に分岐点があったから、もしかしたらそこだったのかな?
本当に広すぎる
ここを、私含めて四人のメイドだなんて・・・
「はぁ・・・私やっていけるのかしら?」
とぼとぼと歩いていたとき
ドンっと人にぶつかってしまった
「あっすいません」
いけない。ぼーっとしすぎた
顔を上げると、そこには黒いスーツを見にまとった長身細身の男性がいた
「・・・・・・」
「・・・・・・」
無言で見つめ合う
えっと・・・この人執事の人かな?
スーツ着てて見なりもいいし
「・・・・・・」
「・・・・・・」
き、気まずい。何故お互い無言になってしまっている
じっと相手の顔を見つめてしまう
男性にしてはキレイな顔立ちだし。しかも賢そう
それに、若い?マイクさんと変わらないくらいだろうか
20代半ばくらいの・・・・
「・・・君は、誰かな?」
長い沈黙を破ったのは、男性だった
「あ、えっと・・・今日からこのお屋敷で働くことになったロザリー・クラウンです」
「なるほど。君が・・・では、ロザリー。君はここで何をしているのかな?」
探るような瞳で見つめられる
「はい・・・あの、キッチンを探していたら迷ってしまって」
オドオドしながら答えると、男性はふっと笑った
急に柔らかな笑みになったので、驚いた
「キッチンか。確かに、この屋敷は迷いやすいからなぁ。ならば、私が案内しよう。着いてきなさい」
くるりと方向を変える男性
慌てて着いていくが、長身なだけあり、足も長いから着いていくだけで必死だ
「あ、あのっ」
「なんだ?」
「あなたもこの屋敷の方ですよね?」
私には名乗らせておきながら、自分は名乗らない
いったいなんて
それにこの人は誰なのか気になったので、問いかけてみる
「あぁ、そうだとも」
「執事さん・・・とかですか?」
「なぜ・・・そう思ったんだい?」
あ、あれ?違ったかな?
あ・・・でも燕尾服じゃないや
「いえ・・・その・・・なんとなく」
「なんとなく・・・ねぇ。さぁ、キッチンに着きましたよ。お嬢さん」
ゆったりとした口調だけど、怒っていそうだな・・・
執事さんっぽい人に隠れて見えなかったが、背中から顔を出せばそこには確かにキッチンがあった
やっぱりあの分かれ道を曲がらなきゃいけなかったのね
「ありがとうございます」
「なに、これくらい。この屋敷は入り組んでいるからな。迷わないように気を付けなさい」
そう言って、執事さんっぽい人はいなくなってしまった
結局誰だったのかな・・・
長身細身の、凛々しい男性
妖しいの雰囲気をまとった、黒髪に金色の瞳
・・・・・・
執事かと思ったけど、堅気な気がしなかった
まぁ、マフィアの屋敷に務めるんだ
執事ならマフィアの構成員のはず
って、考え事をしてる場合じゃない
私は、ロケットを握りしめながら深呼吸をし、キッチンへと入った




