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翌朝
私は、いつもより早い時間に起きた
いつもなら、姉さんの方が早くに起きて、ソフィさんと朝食の用意をしている
しかし、ソフィさんは昨日父さんの病院へ行っていない
姉さんも、まだ起きてきていないようだ
ソフィさんはいつ戻ってくるか分からないし、姉さんもあの状態だ
起きてこられるか分からない
私は冷蔵庫から、卵とベーコンを取り出して、朝食を作りはじめた
うちには家政婦のソフィさんがいるが、姉さんも私も料理は手伝っていた
姉さんは、人任せにするのが好きではないタイプなのだ
私も、将来の為にと料理は掃除など一通りやっている
あまりやりすぎると、ソフィさんの出番が無くなるので控えめに
将来の為にと言っても、結婚の予定があるわけではない
独り立ちに向けてだ
何不自由ない裕福な家庭
本来なら、同等の家柄に嫁ぎ、家庭に入るのが一般的
しかし、私は嫁ぐなどいやで、きちんと働いて自立した暮らしがしたいのだ
その為に、料理に掃除、お裁縫などなど・・・
一通り出来るようにしていた
「ロザリーねえさん、おはよう」
まだ眠たい目をこすりながら、ユイナが起きてきた
「おはよう、ユイナ。もうすぐ朝食が出来るわ」
お皿に出来上がったハムエッグをうつす
うん。我ながら上出来だ
「レイチェルねえさんは?」
いつもなら、必ずいるはずの姉さんがいないことに気付いたようで、ユイナが不思議そうな目を私にむける
「今日は少しお寝坊さんみたいね。ユイナ、起こしてきてくれるかしら?」
「うん!」
元気良く返事をして、ユイナは姉さんの部屋へと走っていった
ユイナも姉さんが大好きなのだ
姉さんはとてもきれいだし、気取らなくて優しい
誰もが好きになる
パンを出し、紅茶の準備も出来たところで、ユイナが姉さんと戻ってきた
「おはよう、ロザリー・・・ご飯ありがとう」
「・・・おはよう」
眠れなかったのか、顔色が良くない
いつも綺麗なブロンドの巻き髪が、少し乱れている
三人分の紅茶を淹れ、それぞれの席に置いていく
「いただきます」
三人で声を合わせる
カチャカチャと食器のなる中、ユイナが口を開いた
「ねぇ、ソフィさんは?」
「ソフィさんはね、用事があって今出かけているの」
「ふぅん」
あまり興味の無い様子で、ユイナは食事に戻った
姉さんは、卵をナイフで切るだけで食べようとしない
黄身がこぼれ、ぐちゃぐちゃになってる
「姉さん・・・」
まだ放心状態から抜け切れていない姉さんに声をかけようとした時
「ただいま戻りました」
ソフィさんが帰ってきた
ガタンッ
勢いよく立ち上がり、ソフィさんに駆け寄る姉さん
「お父様は・・・」
「落ち着いてください。レイチェルお嬢様。旦那様はご無事です」
「よ、よかったぁ」
膝から崩れ落ちるようにへたり込む姉さんを、ソフィさんが支えてくれる
「ソフィさんも、こっちにきて一緒に朝ごはんにしましょう」
「ありがとうございます。さぁ、レイチェルお嬢様」
「えぇ」
四人揃って朝食をいただく
ユイナにはまだ何も話していないので、不思議そうだ
でも、今はゆっくりと朝食をとりたい
きっと、これからはこんな穏やかな時間は訪れない
そんな気がするのだ




