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ローズカンパニー  作者: 夜月
第二幕
18/21

12

ロンドンの街は、とても広くて綺麗な街並みだった

建物も多くて、もちろん人も多い

でも、裕福な服装の人も居れば、ボロボロになった服を身にまとっている人もいた

「市場はこっち。ウチをお得意さんにしてくれるところがあるんだ」

道案内兼買出し研修係のリリー

屋敷にいる時よりも、どこか周りを警戒しているようにも見える

もしかして、マフィアの仲間だから街中でいきなり狙われたりして・・・

「ねぇ、リリー・・・」

「ついたよー。あそこが市場!まずは野菜からだな」

不安になり、街中で襲われる事があるのか尋ねようとしたらリリーに遮られた

リリーのさす方を見れば、とても賑やかで大きな市場があった

私の暮らしていた小さな町よりも、それは大きな市場だ

花屋さんに、お魚屋さん。それから果物屋さんに、食器や人形を売っている出店もある

「わぁ。凄いわね!」

「この辺りでは大きな市場だからね!さぁ、行こう」

思わず立ち止まって眺めていたら、リリーに急かされた

私も遅れないように歩き出した、その時

「わっ!」

ドンッと思いっきり何かにぶつかった

「いってぇ・・・」

ぶつかった相手を見ると、小さな男の子だった

深く帽子を被り、ボロボロの洋服を着ている

「っぶねぇなぁ!」

そっちからぶつかって来たくせに、私に怒鳴りつける男の子

なんとも失礼な子だ

「あんたがぶつかってきたんでしょ!」

尻餅をついたままの男の子に、両手を腰にあて、前かがみになりながら言い返すリリー

「っんだよ・・・・!?っおまっ!」

男の子も負けじと何かを言い返そうとしたが、何かに気付いたのかいい止まった

そして、怯えた表情になる

いきなりどうしたのだろう

「ねぇ、大丈夫?怪我は・・・」

手を差し伸べようとしたら、男の子は勢い良く立ち上がり、そして逃げるように走り去っていった

あれだけ元気があれば大丈夫だろけど・・・

どうして逃げるように走っていったのかな?

「ったく、失礼なガキー!」

「うん・・・・」

少し気にはなったけど、リリーはもう気にしてないみたいだったので、そのまま買い物を続ける事にした


「はい、いつもありがとさん」

行きつけだと言う八百屋さんで必要なだけ野菜を買う

リリーによれば、街にいるマフィアの構成員のメンバーだと言うが、その見た目は人の良さそうなおじさんだ

賑やかな市場にも溶け込んでいたし、一般市民も買いに来ていた

街に溶け込んで、様子を伺うのも大事な仕事の一つなのだろう

「さぁ、これで終わり!はぁ、買い出しって疲れるー」

「本当ね、カゴも重たいし」

買い出しの帰り道、二人で手分けしてカゴを持つがかなり重たい

こんなに重たい物を一人で持っていたら、たぶん屋敷に着くまでに力尽きていただろう

今日は二人だからまだ良かったけど

しかも、屋敷とこの市場はそれなりに距離がある

しんどいな・・・

「ふぅ・・・」

まだ春とは言え、重たい荷物を持っていれば、それなりに汗はかく

大きな市場を出る頃には、汗だくになっていた

「うぅ・・・暑い・・・」

「あんた体力ないねー?」

一方リリーは、汗一つかいていない。しかも、涼しい顔をしている

マフィアの構成員と、裕福な家の娘

家に籠もりがちで、家事などは姉さんやソフィさんがこなしていた

人より体力がない事を思い知らされる

なんだかショックだな・・・

「しゃーない。荷馬車でも借りるか」

そう言うと、リリーは市場の入り口付近にある、狭い路地に入っていった

そこには小さな荷馬車と、一頭の子馬

「この荷馬車はうちの所有物なんだ。体力作りの為にあんま使いたくなかったけど、最初からハードってのもなぁ?今回だけ特別な!」

そういうと、リリーは軽やかに荷馬車に乗った

普通に移動する時に馬車は使うけど、荷馬車なんて乗った事ない

少し怖いけど、これらはこんな日常ばかりが続くんだろうな

まだしっかりと今の状況を飲み込めてはいないけど、早く慣れなきゃ

「よいっしょ」

若干不安定な荷馬車

いつもより少し高い目線

そこには、私の知らない街が並び、知らない人たちがたくさん行き交っている

「さぁ、行くよー!」

でも、隣には不思議と安心するリリーがいる

未だに不安は拭えないけど、居心地はそう悪くはなかった


街中を馬車でゆっくりと進んで行く

歩くときよりも、少し高い目線

さらにこの街が良く見える気がする

表の通りには綺麗に着飾った人で溢れているけれど、薄暗い路地に目を向けると

ボロボロの衣服を身につけた人々がいる

こんなにも貧困の差があるものなのね・・・

他にも、笑顔で談笑していたマダム達が私達に気づくと会話を止める下を向く

この街では有名なんだわ

「・・・・・・」

段々と居心地が悪くなり、私まで下を向く

私が出稼ぎにと送られた場所が、如何に危険な人達の場所かと思うと、色々な思いが薄いて胸が痛んだ

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