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ローズカンパニー  作者: 夜月
第二幕
14/21

8

私の住み込み先のは、薔薇が美しく大量に咲き誇っている美しい屋敷だった

門にも、薔薇がをモチーフにした模様が入っており、侵入者を阻むように柵にからみついている

そんな屋敷のためか、ここは通称ローズファミリーと呼ばれていた

そんな屋敷の門が、真夜中に鈍い音をたてながら開いた

二頭立ての立派な馬車が入ってくる

この屋敷の主、すなわちローズファミリーのボス、ユリウスが帰宅したのだ

「今回の交渉も楽勝だったなー。ユリウス!」

機嫌良く話すのは、ユリウスの腹心であり、ローズファミリーナンバー2のマイク

「いつもと変わらない」

そんなマイクとは正反対に、目を閉じてクールに話す男こそローズファミリーのボス、ユリウスだ

細身の長身で、髪は闇よりも黒くやや長いがスッキリと整えられている

閉じた瞼を薄く開けるユリウス

その瞳は、髪とは違い黒の中に青がみえる

「ところでマイク・・・新人メイドはどうなんだ?」

「あぁ・・・ロザリー・クラウンか」

機嫌の良かった顔から、真面目な顔つきになるマイク

「リリーの報告によれば、真面目でお気楽な奴らしいぞ。父親が襲われて怪我したり、家族と引き離されたりした割には落ち込んだ姿を見せないとかな」

「・・・」

ユリウスは何も答えず、組んでいた足を組み直した

ロザリー・クラウン。宝石商の娘

貴族とまでは行かないが、中流以上の家庭であることは間違いない

しかし、今はマフィアのアジト。つまりユリウスの屋敷で使用人として働いている

いままでとは全く違う環境にいるうえに、家庭がそうなってお気楽なやつなどいないはず

ユリウスは、ロザリーに対して僅かに興味を抱いた

「ふむ・・・なかなか図太いのか・・・それとも、繊細なのか・・・」

「繊細ぃ?」

「悲しみを隠すために、気を張っているのかもしれないからなぁ」

「そうかぁ?お、ついたな。あぁ!やっと休めるぜ!」

馬車から飛び降り、大きく伸びをしたマイクは、足早に自室に向かった

一方ユリウスは、気だるそうな雰囲気を出しながら屋敷の中を歩き回りはじめた



その日はくたくたで、ぐっすりと眠ってしまったようだ

目覚ましの音で目が覚めたが、体がだるくて仕方がない

腕は痛いし、足のだるさも抜けない

あんな重労働をさせられたのだ。当たり前か・・・

大きく伸びをして、目を覚ます為に顔を洗う

「・・・よし!今日も頑張ろう!」

パンっと頬を叩き、気合いを入れて厨房へと向かった


今日も昨日の繰り返しのような仕事だった

掃除に洗濯に、ジェンさんの手伝いをして、リリーがさぼるのを横目にひたすら窓拭き

たまにクリストハルトさんがちょっかいをかけてくる

なんだ、真面目に働いてる自分がアホらしい・・・

「あぁあー。最近面白いことないなー」

私にはシーツを干させ、自分は芝生の上でゴロゴロしながらそうぼやくリリー

「面白いこと?それなら、一緒にシーツ干してよ」

「やーなこったい。だいたい、あたしには届かないよー」

確かに、リリーは小柄だ

私も背が高い訳ではないが、多少背伸びをしなくては届かない

「なら、門の周りを掃いてきてよ」

「えぇー。ってか、先輩に仕事いいつけるなよー」

「なら、言われないようにしなさいよ」

はぁ・・・リリーが真面目に働いてくれたら、私の負担も減るのに

やや不貞腐れながら、シーツを干していたとき、急に強い風が吹いた

シーツがはためくその後ろに、一瞬だけ人影が見えた気がした

黒髪の、細身で、上等そうなスーツを着こなす男性だ

「ねぇ、リリー。いまあそこに・・・」

「ん?」

「うぅん。何でもない」

シーツが風に靡いた瞬間、確かに見えた

でも、またすぐに見えなくなってしまった。ほんの一瞬で

誰だったのかな・・・?

この屋敷には、私の知らない使用人さんがまだたくさんいるらしい

あと一人のメイドさんにも会えていない

「リリー!またそんなところでサボって!」

急に響いた声に驚き、うっかり洗濯物を落としそうになってしまった

声がする方を見れば、メイド長のベルーナさん

「げっ見つかった」

ゴロゴロしていたリリーは、猫のように素早く飛び上がると、早足に逃げていった

物凄い瞬発力だ

「まった・・・困った子だこと。倉庫整理を頼んであったと言うのに」

腕組みしながら、呆れた様子のベルーナさん

慣れているんだろうなぁ

「ロザリー。あなたはそれが終わったら裏庭の掃除をしてちょうだい。クリスには表の花壇を任せてあるから」

「はい、ベルーナさん」

そう告げると、カツカツと靴を鳴らしながらいなくなってしまった

ただでさえ広い屋なんだ。洗濯物は山ほどある

一人で終わらせる頃にはとっくに昼を過ぎている

それから、勝手の分からない裏庭の掃除・・・

これも全てリリーが悪いに違いない

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