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重労働な掃除もひと段落し、私は厨房のテーブルに顔を埋めていた
「はぁ・・・疲れた」
リリーの指導は最初から厳しかった
窓ガラスを拭くのも、少しでも拭きあとがあれば厳しく指摘され
大広間を掃いているときは、隅の埃をネチネチ言われるし、階段の手すり拭きは、キラキラ輝くまで磨かされた
しかし、それだけでは終わらず、グラつく脚立で必死にシャンデリアの埃を落としていたら、ワザと揺らされた
本当に怖かった
「お疲れ様です。ロザリーさん」
にっこりと綺麗な笑顔を見せながらクリストハルトさんが水を出してくれた
「ありがとうございます」
私がお礼を言うと、そのまま自分も私の隣の椅子に腰掛けた
今は昼休み
出稼ぎの身だから、休み無く働かされるのかと思ったが休憩や食事はきちんと与えてもらえるらしい
ジェンさん曰く、しっかり重労働してもらうには体力が必要
その為に休みと食事の支給は怠らないとか・・・
そのためか、昼食の休憩だと言うのにたくさんの食事が目の前に用意してある
サラダにサンドイッチにポテトに肉料理とコーンスープ・・・
これでは太ってしまいそうだ
「さぁ!遠慮せずにガンガン食えよ!」
人の良さそうな笑顔でそう言われたら断れない
ジェンさんはたぶん面倒見も良く、料理もすごく好きな人なんだろうな
コーンスープを飲みながらそう思った
「午後は2階の掃除ね。今日はベルーナがいないから。ちゃんと綺麗にしておかないとボスに怒られちゃう」
またボス・・・
雇い主だと言うのに、今だに会えていない
挨拶もきちんとしたいんだけどな・・・
「ねぇ、ボスってどんな人?」
「ボスはすごく頭がいいんだ!作戦たてるのも上手だし、相手を丸め込むのも得意!」
「それに、この私より女性にモテますしね」
「それか、行き場のない俺らを引き取ってくれた・・・」
ちょっと質問しただけなのに、みんなが一斉に答えた
答えの内容は様々だが、ここのボスは部下に慕われているらしい
その中でも一番気になったのはジェンさんの言葉
・・・行き場のない俺らを引き取ってくれた・・・
それはどういう意味なのかな
リリーもスラム街出身みたいだし
クリストハルトさんや、ジェンさんも貧しい暮らしをしていたのかしら
ボスだけでなく、従業員にも謎の多いこの屋敷
でも、みんな暖かくて優しい
しかし、そんなみんなに裏の顔があることをこの時の私はまだ知る由もなかった




