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ローズカンパニー  作者: 夜月
第二幕
11/21

5

「あの、ベルーナさんや他のメイドの方は?」

リリーの食事の仕方は酷いものだった。それに関しては、あえてもう触れない

それよりも、気になることがある

あの厳しそうなメイド長が5時になっても厨房に現れないのだ

それに、あと一人のメイドさんと会っていない

「ベルーナさんは今日は特別な用事があんのよ。ボスが出掛けるから、屋敷をみないといけないし。色々準備がいんのよ」

「ボス・・・」

昨日聞かされた事実

今だに受け入れきれてないが、ここはマフィアの屋敷なのだ

「あの・・・本当に家族と連絡をとってはいけないんですか?」

「は?当たり前でしょ。ここはマフィアの屋敷で、あんたは昨日きたばかりのまだ信用出来ないメイド。外界との遮断は当たり前だっての」

やっぱりそうなんだ・・・

「なら、リリーたちも家族とは連絡とっていないの?」

「・・・あたしはあんたみたいなお嬢様と違って、汚ないゴミだめで暮らしていたの。親なんていない」

「・・・ご、ごめんなさい」

いけない事を聞いてしまったわ・・・

確かに、食事のマナーは酷かった

でも、こんなに綺麗な子がそんな場所で暮らしていたなんて・・・想像できない

「別に。もう昔の事だし気にしてないって」

軽く肩をすくめ、ズズッと紅茶を啜るリリー

「ここには、訳ありな連中ばっかり集まるんだ。あんただってそうだろ?」

「えぇ・・・」

私は家族の為に・・・

「さぁ、朝からしけた話はやめて、バリバリ働こうぜ!リリー、ロザリーに色々教えてやるんだぞ」

「へいへーい」

重たい空気を吹き飛ばすように、ジェンさんは明るい声をあげた

それを合図に、紅茶を一気に飲み干すリリー

私もそれに習い、はしたないと思いながらも紅茶を一気に飲み干した




屋敷は、思ったよりも広かった

リリーに連れられて、水の入ったバケツや箒、モップなどを乗せたワゴンを押しながら屋敷を回る

「私は基本的に一階。ベルーナさんは三階が担当。あんたは、二階と洗濯とジェンの手伝いね」

屋敷内の案内をしてもらいながら、仕事の説明を受ける

広い屋敷にたったの数人しかいないのに、よくこんなに綺麗に保てるものだなと感心する

汚れもないし、埃も積もっていない

窓ガラスもピカピカだ

「おはようございますリリーさん。おや?そちらのお嬢さんが噂の新人さんですか?」

「クリストハルトか、おはようさん」

不意に横から声をかけられた

声のする方を見れば、泥が顔や服についた汗だくの青年が立っていた

綺麗なブロンドの髪に、青い瞳の青年だ

しかし麦わら帽子に軍手な上に泥だらけの姿は、端正な顔立ちには似合わなかった

「あ、はじめまして。ロザリーと言います」

押していたワゴンから手を離し、丁寧にお辞儀をする

「ロザリーさんですか・・・」

リリーにクリストハルトと呼ばれた青年は、私に近づき跪くと、手を取りちゅっと口付けをした

「なっ!?」

「庭師のクリストハルトと言います。美しいお嬢さん。どうぞよろしくお願い致します」

呆然としてしまう

何度か夜会に出たことがあるので、手の甲にキスをされたことも普通にある

しかし、まさか仕事仲間からこんな挨拶を受けるだなんて・・・

トリハダものだ

「あー、こいつはキザで女ったらしだから気を付けな」

「失礼なことを言いますね。私はあくまでも紳士的な接し方をしていますよ?」

「あっそ。こんなやつほっといて次いくよ、次」

そっけない態度で歩き出すリリー

ハッ。いけない。

私は固まっていた体をどうにか動かす

「待ってよ!」

「ではロザリーさん。最初はキツイかもしれませんが頑張って下さいね」

笑顔で手を振ってくれるクリストハルトさんに軽く会釈をし、慌ててリリーを追いかける

リリーの態度に気を悪くした様子もなく、クリストハルトさんは優しい笑顔で私たちを見送ってくれた


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