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学パロ短編集  作者: 都神
学パロコラボSS
7/22

エリア51

Qツァイ・ツァオウーに関してどう思いますか?


「一年のヴァレンタインと仲良いよな」(二年・白井祐未 女)


「協調性皆無」(二年・宮崎春菜 女)


「目がちょっと怖いよね」(二年・福山愛理 女)


「授業にちゃんと出てるし、制服も着崩してないし、真面目なひとなんだと思う」(二年・藍上ルカ 女)


「……よくしらない」(二年・フレデリック 男)


「あー、よくひとりでいるよなー? どうせだから楽しんだほうがいいと思うけどなーこんど遊ぼーぜー! あ、あんたにいってもしょうがないな!」(二年・三葉直美 男)


「私ヴァレンタインくんと同じアパートに住んでるんだけど、朝よく見かけるよ。ヴァレンタインくんと一緒に登校してるみたい! お昼も一緒に食べるのかな?」(二年・ユイザ=ラスカーシェ 女)


「うーん、この前体育のときケガさせちまってさ。あんまりあいつは巻き込んだことないんだけど、俺周り見えなくなる時あるからさー」(二年・ユトナ=レインハーク 女)


Q野一色愛についてどう思いますか?


「いつも笑ってるよな」(二年・白井祐未 女)


「生きる不気味の谷」(二年・宮崎春菜 女)


「歩くボランティア精神」(二年・福山愛理 女)


「優しい子かな。困ってる人によく声かけてるし、JRC部だし」(二年・藍上ルカ 女)


「……よくしらない」(二年・フレデリック 男)


「あー、部活一緒なんだけど真面目だし部活頑張るし、ちょっと芝居がかってるけどいい子だと思うなー。いやマジマジ、マジだって!」(二年・三葉直実 男)


「この前お腹空いてる時にコロッケパンもらったよ!」(二年・ユイザ=ラスカーシェ 女)


「授業でわかんない質問された時とか、こっそり教えてくれるな」(二年・ユトナ=レインハーク 女)


◇ツァイ・ツァオウーニツイテ。後藤花子あるいはリリアン・マクニール飄々ト語ル


 ああ? ツァオについて? あの二年のな。

 なんか漫画部のやつら大体ツァオヴァレ派なんだけど、私はヴァレツァオヴァレ派だね。どう考えてもヴァレンタインのほうが積極的……お、OKOK、そんな怒るな。マジになるなよ。COOLに行こうぜ? な?


 ぼうりょくはんたーい。


 で、ツァオの話ね。早い話が文武両道ってやつだな。成績上位で運動神経抜群。孤立しがちな一匹狼。部活の助っ人とか断らないあたり、根は優しいみたいだな?

 それだけ聞くとどこの少女漫画のヒーローだよって話だよな。二次元から飛び出してきた的な?

 まあもっとも、うちの学校濃いのが多いからな。どいつもこいつも二次元から飛び出してきたっていうか実際二次元だし?


……いや、こっちの話よ?


 いくら私がメタ発言したからってメメタァはやめてくれよ。ちょっとペナルティ高すぎだろ。


 友好関係は狭いな。大勢で馬鹿騒ぎとか苦手なタイプ。まあこの点に関しては普通1クラスに5人はいるし別に特筆するこっちゃねぇわ。

 体力面も学力もあんだけありゃあ大抵の進路なら問題ないだろ。本人の希望がどうかは知らないけどな。

 ただ対人関係は多少苦労するだろうな。おばさん学力や体力よりそっちのが心配。こればっかりは本人の意思次第だからなぁ。別にそれだけが全てってわけでもねぇからいいよ。


 まあいわゆる『超人』ってやつさ。文武両道なんてハタからみたら化物みてぇなもんだろ。苦手なもんとかあるのかねぇ?


 対人関係? あんなもんオプションくらいにしかならねぇよ。むしろ()()()()だろうが。可愛げがねぇくらいだよまったく。


 とにかく私個人の見解はこんなもんだ。


 え? なに? なんでさっきから机の引き出しを凝視するの。え、やめてよやめてくださいよあっ! 開けるなよマジ開けるなよ!! 描きかけの原稿入って……


 あっ、やだ怒らないで!


 そのくらい本屋いけば未成年でも買えんじゃん! ちゃんと白抜きだよ黒い棒じゃないんだよ!?


 だからメメタァはやめろよシャレにならねぇよ! 波紋使えねぇのにその自信はなんなんだよやめろよ! てめぇツェペリさんでもねぇくせにメメタァできるわけねぇだろ! 仕事終わったらスピードワゴンのようにクールに去れよ! くんなよバカッ! やめて! 私に乱暴する気でしょう! ハッピーツリーフレンズみたいに! ハッピーツリーフレンズみたいに! ちょっ! やめろ! ガチで! ハピツリは死ぬ! 死ぬからマジで!!



 メメタァ……!!


◇野一色愛にツイテ。神前東、淡々ト語ル


 なんで俺なんですか。一番詳しそう? はぁ……別にかまいませんがね。俺が知ってることはもう一年の暴食トリオに提出済みですよ。


 暴食トリオですか?

 白井直樹、両国瑠美、リアトリス・リニの3人ですよ。俺らの間では暴食コンビと呼ばれてます。興味をもったものであれば欲望のまま食い尽くしますからねあの3人は。


 ……話がそれましたね。野一色愛についてでしょう?


 JRC部に所属する二年生女子です。学力、体力、運その他諸々全てにおいて平均的。ツァイ・ツァオウーのファンクラブに所属してますが……一般的な『ファン』の範囲に収まるかどうかは甚だ疑問ですね。

 別にストーカー気質とかじゃないんですよ。それだったら一年の3人のほうが……おっと失礼。忘れてください。

 彼女の本質は『偽善』です

 親のつけた名前に恥じないよう愛を以て善行を積むことが人生の目標だ。


 立派だと思いますか?


 親の期待に応えるため、すべては()()()()なんです。

 善行と愛こそ彼女にとって目的なんです。自分は親につけてもらった名前の通りの人間になったと自分自身に証明できればいいのであって、その他は実際にはどうでもいいんですよ。他人が幸せになろうが不幸になろうが、どうでもね。

 だからその場限りの優しさを、目に付く人間に湯水のように与えるんです。

 その結果がどうなるかなんて、それこそ彼女にはどうでもいい。

 それでまた相手が頼ってきたら、さらに優しくできるくらいにしか思っていません。

 だから彼女は他人に共感しません。する必要がない。自分が他人に優しくした、他人を愛したという事実こそが重要なんですから。

 野一色愛の優しさなんてそんなものです。感情が伴ってない。空っぽなんですよ。


 ()()()()()


 ……校長は、ツァイ・ツァオウーのことを『超人』と言ったんですか。

 ふざけているというかなんというか……別に否定はしませんよ。硬派な文武両道なんて今時珍しいですよね。それでガリ勉ってわけじゃないんだからもう……この学校本当になんなんですかね……

 ツァイ・ツァオウーが並外れた能力をもった人間(・・)……あくまで人間である『超人』だとするなら


 野一色愛は言語・価値観・倫理・文化……すえてまったく違うところからきた、意思疎通が不可能な生物……人によっては、まるで天災かなにかのような……


 いわゆる、『宇宙人』ってやつですよ。


◇エリア51


送信者:白井祐未


受信者:ツァイ・ツァオウー


件名:打ち上げ


本文:新クラス親睦会の日時が決まりましたー!

今日の土曜日12時から。花神楽のカラオケにフリータイムで部屋をふたつ確保しています。

事前の調査で大体の参加者名簿は作ってありますが、飛び入り参加大歓迎! 経費は現場で徴収します。みんなでパーッと遊びましょう!


 明らかに複数人向けのメールをひとりにだけ送る行為に矛盾を感じながら祐未は送信ボタンを押した。放課後倶楽部に所属するメンバーは全員メールアドレスを知っているが、メールを送るのはこれが初めてだ。もしかしたら相手のほうはアドレスを登録していないかもしれない。送信者不明なら中身を見ないで消しそうだなと祐未は思った。


「一年の文化祭打ち上げも来なかったしさー、今回も来ないんじゃね?」


 祐未が携帯の画面を見ながら首をかしげると横から春菜が言った。


「いいのよ。一応送っとくの。来るかもしんないじゃん」


 春菜の横には愛理もいる。いつものメンバーだ。


「だったら無理やりひっぱってきちゃったほうが早くない?」


 愛理が首を傾げていると、春菜が彼女に向き直る。


「無理強いはよくないでしょ。あっちもこっちもシラけるだけよ。別に友達100人作るために生きてるわけでも仲良しごっこするためだけに高校があるわけでもないし。そこは個人の自由でしょ。私はするけどね仲良しごっこ」


 メールの返信はこない。くるともこないとも。たぶんこないだろうと祐未は思う。携帯を閉じた祐未の横で愛理がケタケタと笑った。


「言葉に毒があるわー春菜サン言葉に毒があるわー」


「うっさい」


 春菜が愛理の頭をペシリと叩いた。


 ◇


 土曜の昼間、ツァオは思い立って買い物に出かけた。日用品の買い出しだ。スーパーマーケットのレジ袋を下げて歩いている途中カラオケ店の前を通りかかる。

 そこで声をかけられた。


「あー! ツァオくんだー!」


 声がまっすぐ耳に届いたので思わず視線を移すと同い年くらいの女が立って手を振っていた。ニコニコとやたら嬉しそうに笑っている。見たことはあるような、ないような。平凡な顔立ちだ。名前は間違いなく知らない。

 彼女は眉をひそめたツァオに気づいていないのか気にしていないのか笑顔のままトコトコと小走りに駆け寄ってくる。


「用事があったの? 私も遅れちゃって!」


 なにやら親しげに話してくるが今日ツァオに予定はない。無視して通り過ぎようとするとあわてて腕に掴まれる。


「わぁ!? まって、まってよぅ! なんでいっちゃうの!?」


 馴れ馴れしく腕を掴まれ睨み付けても相手はひるんだ様子もない。

 離せ、という変わりに


「誰だ」


 と眉間のシワを深めて尋ねると少女は大げさに驚いて見せた。


「はぁう!? 同じクラスの野一色愛だよー!」


「知らない」


 ツァオが言うと、野一色愛と名乗った少女はガックリとわざとらしく肩を落とす。


「えぇ~っ! 私影薄いからなぁー」


 会話がこれで終わったと思ったツァオは、手早く女の手を振り払って帰路につこうとした。しかし女はまた慌てた様子でツァオの腕を掴む。振り払おうにも今度は存外強い力で握られた。


「わーっ! まってよ! 今日親睦会出るんだよね? いかないでよぅ! 一緒にいこうよぅ!」


「は?」


「私もねーさっき道に迷ってた妊婦さん案内してたら遅れちゃってねー! でも春菜ちゃんにメールはしておいたから大丈夫! ツァオくんも遅れちゃったんでしょ? 一緒にいこうよ!」


「俺は」


「えっーと部屋どこだっけー広いところふたつだったんだよねー」


「聞け」


 買い物袋をさげた姿のどこをどう見たら親睦会に参加すると思うのだろう。ツァオが腕を振り払う前に野一色愛はずるずると彼の腕を引っ張ってカラオケ店に入ってしまった。

 愛はツァオの腕を掴んだままカウンターにいた店員へ話を聞きに行く。


「あ、すいません花神楽二年親睦会(あそぶぜヒャッハー)って部屋どこですか?」


「それでしたら、104と105ですよ」


「ありがとうございますー!」


 ドリンクバー用のコップをふたつ受け取って行こうツァオくん、とは言うがツァオに話すスキを与えない。痺れを切らしたツァオはとうとう女の手を思い切り振り払った。


「離せ」


「わっ」


 店員が驚いた。もちろん愛も驚いた顔をした。


 一瞬だけ。


 乱暴に手を振り払われたら普通は怯えるか怒るかするはずだ。目の前の女がどういう反応をしようがツァオは心底どうでもよかったが、それにしたって予想外の反応である。


 野一色愛はすぐに笑顔を取り戻し、またこりずにツァオの腕を掴んだの。


「もう始まってるから、部屋にいこ!」


 拒絶を理解していないのか。理解していて無視しているのか。悪意がまったく感じ取れないかわりになにか底知れない不気味さを感じ、ツァオは言葉を失った。


 ◇


「あっいされたいねぇええ! きっと見過ごしたぁああ! 君のシグナル! もう1度ぉおお!! 気ぃまぐれかなぁあ! でも構わない! 君ぃといたいからぁああああああああ!!」


 104の部屋をあけた途端聞こえてきた大勢の歌声にツァオは思わず耳を塞いだ。彼の腕を引っ張ってここまできた愛は相変わらずニコニコ笑いながら


「楽しそうー!」


 と声を上げる。ツァオは今はすぐ廻れ右して帰りたい気持ちになったが、腕を振り払っても横にいる女はまた追いかけてくるだろう。それを追い払うのも面倒なので大人しく金と時間を犠牲にしてすませてしまおうと頭を切り換えた。周りの人間はレジ袋を下げたツァオを見やり、ひと目で『あ、来る気がなかったんだな』と察したようだ。出入り口のすぐ近くに座っていた宮崎春菜はツァオを見て一瞬驚いた顔をしたあと、すぐ開いた席に座るよう促した。


「愛、あんた遅くなるってツァオ誘ってくることだったの」


「え? ちがうよー! ツァオくんとは偶然入り口であったんだよー! 私はねぇ、妊婦さんを病院に案内してたら時間遅れちゃってー!」


「……あー、あんたってそういう奴だよね」


 2部屋に予約を入れたとあってひっきりなしに人が出入りしている。隣の部屋にいく人間がいたりこちらの部屋に入って一緒に歌っていく人間がいたりととにかく騒がしい。音楽と話し声が混じり合う騒音の中でツァオは静かにウーロン茶を飲んだ。これから何時間馬鹿騒ぎするのかわからないが苦痛な時間だ。

 ひとりで静かにしていようと思った矢先、隣に座った愛がニコニコと薄気味悪い笑みを浮かべて話しかけてくる。


「ねぇねぇねぇ、ツァオくんなにか歌う? 末端まわってきたよー」


「歌わない」


「えーなんでー? 楽しいよー? あ、でも今予約曲いっぱいだー」


 ツァオはピコピコと電子音を響かせている愛の声を無視することにした。一番奥に座っていた白井祐未がトイレにでもいくのか人と人の間を通ってツァオの前を通り過ぎる。


「あ、ツァオだ」


 ツァオは黙ってウーロン茶を飲む。祐未は彼が返事をしないことを予想していたのかただ声を上げただけで入り口付近の春菜に


「トイレいってくるわ」


 と声をかけ外に出て行った。

 愛がまたツァオを覗き込んでくる。


 心底鬱陶しい。


「ねーツァオくんって髪綺麗だね? お手入れどうしてるの?」


 もういっそ無視したらそのうちしゃべらなくなるのではないかと思ったが、女は横で相変わらずペラペラとしゃべり続けている。


「そういえば一年のヴァレンタインくんと仲いいって聞いたよ! おんなじ中学だったの? ヴァレンタイン君、入学式で答辞読んだよね! すごいよね!」


 ツァオには野一色愛の声が上滑りするように感じた。明るい声色なのに感情が伴っていない。笑顔にも言葉にも態度にも感情が反映されていないようで不気味だ。精巧なロボットを見せられているような感覚に陥る。

 ウーロン茶を飲み続けるのも飽きたので、ツァオは思わず胸の中に渦巻いていた言葉をひとつ吐き出した。


「……気色悪い」


 予想以上に冷たい声色になったそれを、しかし野一色愛は笑顔で受け止める。意味を理解できないのか目を見開いて首を傾げた。


「え?」


「気色悪い、って言ってんだよ」


「ああ! なんだ、良く聞こえなかったよー!」


 今も聞こえてねぇんじゃあねぇのか。


 吐き捨てようとしてそのまま止まった。


「笑顔も態度も気色悪いってよく言われるよ!」


 高校入ってからだけどね!

 そういって笑う女はツァオの吐き捨てた言葉を、それがなにを指していっているのかも誰に向けて放った言葉なのかも正確に理解しそれでも満面の笑みを浮かべていた。


 気色悪い――


 心の底から、もう一度そう実感する。ついさっき目の前の生き物に掴まれた腕の感触を無意識にもう片方の手で押さえつけていた。


(未知との遭遇)

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