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学パロ短編集  作者: 都神
学パロコラボSS
19/22

IFの話

「たとえばリリアンが交通事故かなんかで、明日死んだとして」


 学校の屋上。なんでもないような口調で隆弘が嘯いた。タバコの煙が紫乃の目の前を通り過ぎて行く。

 

「俺はぜってぇリリアンに会いたいと思うだろうよ」


「うん。隆弘クンリリアンのこと好きなんだもんね!」


 笑顔で頷く紫乃は、不謹慎な話題に怒る様子もなくニコニコと話を聞いている。隆弘はまたタバコの煙を吸い込むと、白い煙を空に向って吐き出した。

 

「そうしたら僕が会わせてあげようか」


 紫乃がサラリと提案してきたのは、ひどくおそろしいものだった。隆弘は慣れているのか諦めているのか眉一つ動かさず、青空に消えていく紫煙を眺めている。

 

「いや、すぐには会わねぇ」


「どうして?」


「怒られるから」


 紫乃がパチパチと瞬きをする。不思議そうな顔だった。

 

「俺がすぐに会いに行ったらあの女はぜってぇ怒る。俺はただリリアンに会いたいんじゃねぇんだ。感動の再会の後には熱烈なキスが許されるような関係になりたい。なら、怒られるようなことはするべきじゃねぇだろ」


「ふーん」


 おそらく紫乃は、隆弘の言葉など右から左だろう。ニコニコと相変わらず笑っている。隆弘はそんな友人の表情を確認して、長くなったタバコの灰を地面に落した。

 

「手段も道のりも、目的によって変わる。俺はな、リリアンが先に逝っちまったら、あの女と2人でやりたかったことを全部1人でやって、もうろくするまで生き抜いて、土産話を両手に余るほど抱えてあの女に会いに逝く。山ほどある土産話を聞かせてやって口説くのさ。ずっと、今すぐ会いたいと思いながら、あいつの喜ぶ顔を夢見ながらな。そうやって走り抜いてやっと俺の目的は達成される」


「やっぱり面白いね隆弘クンは! 見た目によらずロマンチストだし」


 隆弘がふん、と鼻を鳴らした。

 

「なあ、人間なんてめんどくせぇもんなんだ。言ってることと本当に思ってることがちがうなんてザラにある。夢見てることを、ちがう理由で諦めることだっていくらでもある。この例え話だったら、俺は、リリアンにいますぐ会いたいって願い事を、あの女に笑って出迎えてもらいたいって理由で、諦める」


「うん」


「なあ、たとえばリリアンが明日死んで、俺がすぐに会いに行ったら、あの女は絶対に怒るんだ」


「それさっき聞いたよー」


 へんなのー、と紫乃がケタケタ笑った。隆弘はタバコをコンクリートに押しつけて消火したあと、ニコニコと笑う友人の頭を乱暴に撫でようとしてやめた。手が力なく戻されて、結局コンクリートの表面を撫でる。

 

「なんであいつが怒るか、きっとお前はわからねぇんだろうな」


 紫乃が笑顔のまま隆弘を見て、首を傾げる。そうしてその直後、やはり満面の笑みで頷いた。

 

「そうだね!」


 隆弘が空を見上げる。途方にくれたような顔で呟いた。

 

「俺にも、お前にも、誰にだってな、手持ちのメダルを全部使い切らなきゃならねぇ義務ってもんが、あるんだよ」


 ヨシノはやはり、不思議そうに首を傾げた。

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