「まあ次があるさ!」(イセリタさんとアレックス)
イセリタさんとアレックスの、お正月会話。
花神楽神社は正月ともなると参拝客で賑わい、周囲にたくさんの出店が立ち並ぶ。その宗教法人の名前を借りているのが地元で有名なヤクザであることは、花神楽高校が変人の集まりであることと同じくらい、地元では非常に有名であるが――そんなことは、正月と初詣に関係ないというのが大多数の意見である。
「はい、おみくじ1回! 500円だよ!」
白井祐未は今年もここでアルバイトをしている。巫女服でせわしなく動きまわる彼女はこの手のアルバイトをよくかけもちしていた。祭の警備や神社の巫女、屋台の売り子、人手の足りないホテルの増員募集――特に今は、ひょんなことから再起不能にされた可愛そうな相棒――クルーザータイプのバイク、カワサキバルカン400のために金が入り用だといって、くるくると忙しなくいろいろなバイトに手を出しているようだ。
白と赤の袴姿で動きまわる女神に強烈な目眩を感じたアレックスは、なるべく平然を装って忙しそうな巫女に声をかけた。
「やあ、祐未! せいがでるね!」
「よぉアル! おみくじやってく!?」
「そうだね。初詣が終ったらやらせてもらおうかな」
「おー! 今年はなんかしらねぇけどちょっと混んでるぜ! お賽銭いれるなら早めにすましちまえよ!」
「そうさせてもらおう」
巫女とは思えない乱雑な言葉使いで案内されたアレックスは笑顔で礼を言うと、おそらく賽銭待ちであろう列に並ぶ。前方に和服を着た金髪の女性がいる。ずいぶんと髪が長いようだ。着物も髪も美しい。あかね染めの見事な帯を、すこし変った形で結んでいる。蝶を思わせる結び目と和服の調和を目で楽しんでいると、不意に金髪の女が振り返った。
「あら、アレックス先生じゃありませんか」
「おや、イセリタだったのかい!」
「奇遇ですわね。アレックス先生も初詣に?」
「そうだよ。その和服とても綺麗だね。帯は自分で?」
「ええ、折角ですから」
「後ろ姿だと誰だかわからなかったよ。着る服で随分雰囲気が変るものだね」
「そうですか? すこし照れくさいわね」
「お見合いかい?」
アレックスの言葉にイセリタが笑顔で首を傾げた。
「はい?」
アレックスに悪気はないようで、ニコニコと笑顔のまま言葉を続ける。
「1人ということはダメだったみたいだが、まあ次があるさ!」
イセリタが笑みを深めてアレックスを見る。アレックスもニコニコと笑顔のままイセリタを見た。
周囲から、スゥ、と人混みがひいていく。その様はまるでモーゼの奇跡である。
「あなたの頭をさきにダメにしてあげましょうか!」
バゴン、と、人体から出るのか些か疑問の残る轟音が響き、周囲の木々からバサバサと勢いよく鳥が飛び立っていった。




