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【プロローグ1】僕、鎌倉の大地に立つ

 がたがたと車体を揺らしながら電車は線路を走っていく。

 窓の外に映るのはさっきから海か山、もしくは畑や田んぼだ。

 しかし、それらは全部僕を安心させる光景だった。

「帰って・・・来たんだな」

 鎌倉、そこは僕が小学校を卒業する前まで暮らしていたいわばふるさとであり、これからは僕が一人で生活していく新天地となる場所だ。

 ちょっと古臭い雰囲気だが、それも悪くない、住めば住むほど魅力を感じる町だ。

 僕は小学校卒業とともに田舎へと引っ越すことになった、理由は父の転勤だった。

 今でも両親はラブラブで、たとえ数日でも合っていないと禁断症状が出てしまうとかなんとか、だから家族全員で引っ越したということだ。

 さらに、休みになるとふたりでふらっと旅行に行ってしまう、書き置きすら残さず、ふたりでラブラブランデヴーらしい。

 最大の問題は当時中学生であった僕を残して出かけるというところだ、生活費を置いていったのはせめてもの救いだった、流石に食料がなければ死んでしまうことに気づいたのだろう。

 おかげである程度自分で自分の世話ができるようになった。

 しかし、それによって悪化した面があることも否定できない。

 僕は昔から戦隊ヒーローも、ライダーなヒーローも、少女向けの女の子が変身して戦うアニメも好きだった、もはやオタクと言って差し支えないだろう。

 それが小学校に入って小説を読むようになった頃、ライトノベルと出会ってしまったのだ。

 激しいアクションが自分を引き込むバトル、女の子が魅力的なラブコメ、圧倒的な世界観で僕を圧倒してくれるファンタジーetc・・・

 それから僕はいわゆるオタクへと変貌を遂げた。

 普段親がいる限り深夜アニメをリアルタイムで見るなどあり得なかった。だが、親が家にいなければどうなるだろう?

 答えはもちろん『深夜アニメをリアルタイムで見る』だ。

 こうして僕はオタクとしてレベルが上がっていったわけなのです。

 そして中には経験した人もいるかもしれないが、オタクというのは割と嫌がられるものなのだ。

 僕はその嫌がられる方の分類になってしまったのだ。

 幸いにもいじめに発展することはなかったが友達は少なかった、ほぼ居なかったと言っていいだろう。

 もちろん、全くいないわけではなかった、中には僕のことをかばってくれる人もいたが、そんな光景を見て、子供心ながら惨めな気分を味わっていた。

 『ラノベの主人公ならこんな惨めな気分にはならないだろうな』とか『僕にはきっとまだ目覚めていない能力があるんだ』とか、既に負け犬ムードな思考を持ってしまっていた。

 まぁ当時のことなどどうでもいいし、思い出したくない。

 今はこの趣味はほかの人には露呈しないように、ひっそり一人で楽しんでいる、もちろんこの内容でしゃべれる人が増えればそれはそれで嬉しいが、無理強いはするつもりはない。

 それもさておき、アナウンスが僕の降りる駅を告げる。

 大きな荷物は既に寮に運んでもらっているし、僕が持たなくてはいけないのはすぐに必要な制服とか衣類くらいだった。

 春先なのにやけに照りつける太陽のおかげで今日は非常に温かい陽気だ。

 久々の地元だ、狭い車内から駅のホームに降り立ち、一度大きく深呼吸をする、澄んだ空気が肺の隅々まで浸透して、まるで僕の全てをリフレッシュしてくれそうだ。

「う~ん・・・でもあの町も空気綺麗だったしなぁ・・・大差ないか」

 さて、いつまでも駅で男が一人で伸びをしながら独り言をつぶやいていては一般の方々に不審な目で見られてしまう、さっさと寮に向けて移動しよう。

 僕が通う学校は山(丘と言うのが正しいだろう)の頂上付近にあり、生徒の半分は寮で暮らしていて、残り半分は自宅から通っている。

 ちなみにその寮で暮らしている生徒の半分以上は県外からスポーツ推薦で入学してきた人たちだ。

 僕は普通入試だったが、正直かなり危なかった、きっとスポ薦組を除いたら学年でも下から屈指の成績だろう、学校の先生に受かったのを驚かれたほど僕の頭の出来は悪い。

 体力はどうかと聞かれれば、そっちはそれなりに自信がある。

 普通オタクといえばインドア派で、スポーツはあまり得意ではないというのを想像するかもしれないが、そうとも限らない、というか僕が中学時代に過ごした環境が僕をそうさせたのだ

 夏は海で泳ぎ、冬は雪山登山、秋には紅葉を見に山に行き、春には暖かくなったからという理由で山を登った、他にも激流下りや草野球にも駆り出されたし、マラソンもやった。

 そんなメニューを『遊び』で片付けるメンツがいたのだが・・・今は置いておこう。

 そんな奴らと三年間一緒にいた結果、様々な運動をする上で必要な筋肉と体力が付き、しかし無駄な筋肉はなく、割とスマートないわゆる細マッチョへと変貌を遂げた。

 おかげで今も汗一つかくことなく寮を目指せている。

 そして三十分ほど歩いた頃だろうか、やっと目的地である弓ヶ丘高校の寮が見えてきた、高さは五階建てで、遠くから見ればホテルかマンションに見えるだろう

 この寮はロビーを挟んで女子寮と男子寮に分かれていて、ロビーはサロンのようになっていて内装も手が込んでいてなかなか豪華な作りだ。

 ちなみに女子寮は男子禁制というほどではないが、入退寮時にしっかり記録を残し、午後六時半以降は完全に男子禁制状態になる、もちろんその時間男子寮は女子禁制だ。

 ただしロビーまではその限りではなく、ロビーは消灯である深夜十一時までは出入り自由だ。

 僕の部屋は三階の角部屋だった、日当り良好景色よし、さらに十五畳程の広いワンルーム、なんという好立地!

 更に更に、ここは本来二人部屋なのだが、今のところ入居者がおらず一人部屋らしい。

 なんだかワケアリ物件らしいのだが・・・実際そんなことがあるわけもないし、僕は入居を決めたのだった。

 荷物を片付けているあいだに気づけば陽は落ち、あたりが暗くなり始める。

「しまった・・・夕飯用意してなかった・・・」

 もちろん引越しの荷物に食材がある訳もなく、今日は仕方ないからコンビニかどこかの惣菜で済ませるとしよう。

「初日からグダグダだなぁ・・・」

『はぁ・・・』

「ん?今声が・・・・」

 しかしその声に応える声はなかった。


 しばらくいなかっただけで町並みはかなり変わっていた。

 おじいさんがやっていた商店は潰れて今は違う店になっていたし、商店街もきもちシャッターが目立つ気がする。

 さて・・・しばらく歩くと目的地であった惣菜屋を発見、これより作戦行動に入る。


 無事作戦行動(ただの買い物とも言う)を終えた僕は部屋で晩餐にありついていた。

「いやぁ・・・いい店が近くにあってよかった」

 店主なのだろうか、なんというかふくよかな顔をした女性がレジを売ってたのだが、サービスだと言ってコロッケをおまけしてくれた。

 それじゃなくてもコロッケやメンチカツ、唐揚げは安くて大きなものばかりで、ご飯まで売っている、ここら一帯の一人暮らしの人たちはかなりお世話になっているんじゃないだろうか。

『それは飽きたですよ・・・もっとさっぱりしたものを食べたいですよ・・・』

 僕は食事を口に運ぶ手を止めた。

「・・・・・・」

 いる・・・この部屋には確実に何かがいる・・・

『まぁ仕方ないですね、食べてあげましょう』

 思い出せ・・・最初話聞いたとき、なぜここに住んだ全員が心霊現象を訴えたと言っていた?

『おや・・・あのお店油を変えたんですかね、以前よりヘルシーですね』

 たしかみんな、同じ証言をしたのだ。

『む、しかしご飯は相変わらず水分が多いですね、あれほど水を減らすようにと・・・あ、みんなには聞こえなんでした』

 気づいたら飯がなくなっている、と。

「お前が犯人か!」

『な、なんですかぁあああ!』

 目を開いたそこには僕の通う弓ヶ丘高校の女子用制服を着た少女がぷかぷかと浮いて人の晩飯を食べていた。

「う、うわぁああああ!本当にお化けっていたのかぁああああ!」

『み、耳元で大きな声出さないでくださいぃい!』


 これが僕と、僕を取り巻く問題児の一人との出会いでした。

皆様はじめまして、春眠鴉と申します。

今回初めて小説を書かせていただきました。

まだまだいたらぬ点ばかりでしたでしょう・・・

ご目汚し失礼しました。

よろしければ感想などを頂ければと思います。

また、更新もいつになるかわからないという適当ぶりですが、どうか末永くお付き合いいただけると幸いです。

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