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三話

 生前、雛子はマニアとまではいかなくても、少なくない数の乙女ゲームをプレイしてきた。中でも『ブラッド・プリンセス~鬼姫~』がお気に入りで、予約していたゲームも同じ会社が手掛けたものだ。

 この会社の特徴的なものは砂糖菓子のような甘さだけではなく、ちょっと、いや、かなりえげつなさがあるような仄暗い世界観だった。今まで甘いセリフばかり吐く乙女ゲームをプレイしていた雛子には、斬新さと現実にも通じるような理不尽さに心が惹きつけられ魅せられた。

 なぜ、雛子がお気に入りのゲームの思い出しているかというと、自分を殺した佐藤美紀が望んだ世界が『ブラッド・プリンセス~鬼姫~』の世界だったからだ。趣味が被っていると知ったときの雛子の絶望は半端なく、周囲の人間が心配してくれるのだがその優しさが逆に痛くて苦しく泣いてしまった。

『ブラッド・プリンセス~鬼姫~』のゲーム特徴は攻略キャラとライバルキャラが多いところだ。攻略キャラは何人だったか、十七人、違う二十人以上はいただろうか、正確な数を雛子は覚えていない。何せライバルキャラすら攻略できるのだ。女の子同士のキャッキャウフフ、私達仲良しの親友というような友情ではなく、貴女が好き、誰にも渡したくないの的なガチ百合関係の恋愛を築ける。

 エンドはベストの他に逆ハーや百合、百合ハー、バッド、デッド、鬼姫の七パターン。ディスク三枚の大作で良い値段すぎて暫く節約に励んだ記憶がある。高い割に合っていたのか結構売れ、追加ディスクも出て嬉しくも懐的に悲しいが泣く泣く購入した。有名な声優が出ているのと絵も綺麗なのも決め手で、雛子など絵に惹かれて初回予約して特典までゲットした。さすがにドラマCDは財布の都合上購入を見送ったが、小説と漫画はシッカリと買わせていただいた。

 内容は乙女ゲームなので恋愛ものなのはもちろん、現代ファンタジーと学園要素が詰め込まれている。西洋の魔――吸血鬼やドラゴンなど西洋系の魔物――と東洋の妖――九尾や鬼などといった妖怪――総称して『妖魔』と、妖魔ではないが特殊な能力を持った人間――超能力者や魔法使いなどといった存在――『術者』が登場する。ゲーム主人公『万町陽菜あらまちはるな』は苗字固定名前変更可能な少女は鬼の一族の妖魔だが、ただの妖魔ではなく同じ妖魔の種族を支配する能力を持つ希少な『妖魔使い』という設定だ。

 ゲーム主人公陽菜の初恋は同じ鬼であったことが不幸の始まり。初恋の鬼は同じように自分のことを好いていてくれたが、支配して無理やりに好きだと言わせているのではないかと疑い、それ以来自分の能力を消したいと思うようになっていく。引き籠り部屋から出ない陽菜はある日、夢の中で不思議な青年に出会う。彼は陽菜の能力を封印する方法があることを教えてくれ、半信半疑のまま彼の言う通り学園へと復学してから物語は始まる。

 登場人物は生徒会の妖魔達と風紀委員会の術者達、教師や初恋の人、ライバルに友人、そして双子の妹。一年間という限られた時間の中で他人と触れ合い話をして情を深めていき、陽菜は自分の進むべき道を探していく。

 スチルのためにバッドやデッドも見てコンプリートした雛子は、ライバルキャラとの百合も意外とイケたし、薬で男体化というシチュエーションも美味しくて悶えた。普通に女の子としても可愛いが、男になったライバルは非常にカッコイイのだ。奇声を発して身近にある物をひたすら叩いて壊す一歩手前にいくくらい激しく興奮した。震える手でCP検索かけるほどたぎったたが、えげつないといった通りシナリオは残酷なので選択肢を間違えると高い確率でデットエンドになる。さっきまで仲良く笑い合ってたじゃんかと画面越しに叫んでしまうくらい理不尽なシーンも多く、雛子も上手くやらないと復讐前に死ぬ可能性が出てきた。

 さらに、『ブラッド・プリンセス~鬼姫~』は十八禁で、キャラによっては貞操観念緩いので襲われての処女喪失の危険もある。一回で厭きてくれれば良いが溺愛と見せかけて弄ばれてからボロ雑巾になったとこでポイっと捨てられてからのその多大勢に輪されたなんて日は、復讐相手が増えすぎて佐藤美紀にまで手がいかなかったらどう責任とってくれるのか。知ならない相手に犯されるのも嫌だし、学生の身分で孕んで子どもができたらなんて考えると、怖くて気持ちが悪くてやっていられない。上手くやらないと身の破滅に繋がる。

――死亡と処女喪失フラグを建てないように絶対負けないと雛子は堅く決意した。


今回はゲームの説明です。

次回から転生後の話に入っていきます。


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