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十二話

 部屋に着き感情のまま乱暴にドアノブを掴もうとして、横から出てきた人物によって静かに開かれた。

 女性にしては高い身長で、胸はないものの手足は長くスタイルは良い。短い髪に肌は健康的に焼けていて、やや釣り目で勝気そう雰囲気を纏う美人だ。どことなく桃理にも似ている。

「李理ちゃん」

「桃理、落ち着いて。大丈夫。ゆっくりと深呼吸をして」

 優しく李理に抱きしめられ、促されるようにゆっくりと深呼吸すると、興奮は徐々に冷めてくる。落ち着くと自分の行動の迂闊さに後悔が生まれてきた。生徒会のメンバーの前で妖魔使いとしての能力を使ったのは不味かったかもしれない。

 特に使われた爽志は違和を感じただろうし、九主催の龍と竜の親睦を深めるという名目で開かれたパーティで当主をお願いという風を装って顎で使っているのは見られている。桃理が龍の妖魔使いというのに辿り着くかもしれない。それに、聡そうな真は態度のおかしかった爽志に気付いただろう。一時期執拗に桃理の能力を探っていたし、前回は誤魔化したが油断はできない。

「李理ちゃん、ありがとなんだよー。ちょびぃっと、焦ってたみたいだにょ」

「ううん。あたしは桃理の双子の妹なんだから、当然のことをしたまでだよ」

 双子はお互いの手を取り笑う。桃理達は陽菜達のように一卵性ではないが、彼女達とは違い心は通じ合っている。誰よりもお互いのことを知っていて、些細な変化でさえ見過ごすことはない。

「よしっ! じゃー、作戦ターイムっ」

 李理の手を引っ張り一緒に部屋の中に入っていくと、いつも通り同室の夜理が出迎えてくれた。

「おかえりなさい、桃理様、李理。今、飲み物をお持ち致しますわ」

「夜理ちゃん、闇理ちゃんを呼んでよね。ひっさしぶりに、会議を開いちゃうよん」

「畏まりました。すぐに呼びますわ」

 夜理は頷くとしゃがみ自身の影の中に手を突っ込み、掻き混ぜるように潜らせる。肘まで埋まると円を描くように動いていたのが止まり、一気に肘を曲げて何かを上へと引っ張り天井へとブン投げた。黒い影は半回転をして天井へと足を着けてぶら下がる。

 蝙蝠のようなことをしているのは着流し姿の闇理だ。自身の影を使い天井に止まりながら、不思議そうな表情をしながら姉を見て、桃理に視線を寄越してから能力を解き床へと着地する。

「桃理様、いかが致しましたか?」

「うむうむ、くるしゅーないんだよ。闇理ちゃんはぁ、万町月菜ちゃんて知ってるかにゃ?」

「知っています。血の臭いをまき散らしている危ない鬼ですよね。話しかけてきましたがわずらわしいので、さっさと転移して逃げましたが、その者が何か?」

 闇理も月菜のことを知っていた。やはり、原作キャラに接触しているとみて間違いないだろうが、念のため夜理へ尋ねてみると首を振る。

「わたくしは知りませんわ。どなたでしょうか? いえ、でも、血の臭いをまき散らしている方は存じていますわ」

「桃理様の癇に障るようなことをしたのですか?」

 闇理の目が細められ、夜理の手にはいつの間にか愛用の武器の扇が握られている。一見、美しいただの扇のようだが、纏わりつくおどろおどろしい気は隠せない。幾度となくボコられた李理と闇理が夜理から距離を取り、反射的に警戒態勢に入っている。

「せぇかーい! だから、桃理ちゃんがバシッと仕返しをして、こらしめちゃうんだよん」

「そうですの。でしたら、わたくし達は何をしたらよろしいでしょうか?」

 夜理は口元を扇で隠す。目は爛々と輝いていて、自分が直接手を下したいという想いを隠そうともしていない。桃理が仕返しをしたいという言葉に遠慮はしているが、命じればやる気満々で腕を揮うつもりだ。

 弟である闇理も似たようなもので、自分に命じてくださいと目が語っている。幸い夜理のように武器は出していないが、命じたらすぐにでも飛んでいきそうなほどウズウズしていた。

「まずは情報集めっ。ババッとおっもしろ~いのを桃理ちゃんに聞かせて、聞かせて」

 胸の前で手を合わせて、首を傾げてみせると、九姉弟は頷き影に溶けるように消えて行った。仕事が早い、と、闇理が影から顔を出す。

「忘れていました。李理、桃理様の警護を任せます」

「言われるまでもないわ。桃理は私が絶対に守るもの」

 鼻息荒く胸を張る李理に頷き闇理の頭が影に呑み込まれていく。やっぱり二人は仲が良い。案外くっつくんじゃないかと浮かれ気味に、桃理は李理の手を握って玄関へと引っ張っていく。

「桃理、どこ行くの?」

「風紀だよぉ。桃理ちゃん的予想だとぉ、そっちにも行ってるはずだも~ん」



 予想通り風紀委員達にも聞いたが、皆知っていてマーク対象になっているそうだ。まさかの盲点だったと桃理は唇を噛む。

 自分の知らぬ間に攻略キャラ達に接触をしていたのは別に良いが、陽菜ばかりに目が行って月菜のことは疎かになっていた。皆の証言を聞く限り彼女が佐藤美紀で間違いないみたいだ。

 気になるのは濃い血の臭いを纏っていることで、原作では特に描写されなかった点である。中の人が佐藤美紀だから、他人を傷つけることを戸惑わないのだろうか。戦い慣れているのなら、原作よりも強くなっている可能性もある。自分の夜理なら負けないだろうが、それだけじゃ佐藤美紀に復讐できない。あいつがもっとも苦しむであろう罰でなければ桃理は納得できない。

「ぜぇったいにぃ、許さないんもんね」


ゲーム主人公の双子組と違い、桃理達は二卵性の双子です。

桃理がロリ系美少女に対し、李理は長身勝気系美人の対照的な二人。

初見で双子だと分からないが、歳の離れた姉妹には見られがち。

ただ、本人達から姉妹だと言われないと、あまりにも違うので気付かれません。


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