8 月と僕と、この星と
8 月と僕と、この星と
月は、独りぼっちだった。
ずっと独りで耐えてきたんだ。
……独りは、寂しかったよね。
僕は、独りぼっちになってしまった。
大好きな人が離れてしまった。
……独りは、寂しいよ。
そしてやがて、この星も独りになる。
乱暴に扉が開かれたバンという音で、僕は我に帰った。
「……まだいたのか」
扉を開けたのは、警察隊の大人だった。珍しく今日は、一人しか来ていない。それに今日の人は若かった。20代後半……だろうか。
「………………」
「お前の仲間はちゃんと従ったぞ。強情な奴だな」
男の人はふぅと溜息をついて、僕の腕を掴んだ。
「……子供が何泣いてやがるんだ」
僕は掴まれていないほうの手で、自分の頬を撫でた。しっとり濡れた。
「この星を離れるのは、寂しい気がするけどな」
少し驚いた。この人は、今までの大人たちとは違った。
「ガキ、この星はもうすぐ滅びる」
男の人は、小さく悲しそうに笑った。
「そんな星にまだ夢を期待するのか?」
悲しい笑いは、消えた。
「まだ何か求めるのか?」
僕の心も、静まった。
「もう、そっとしといてやれよ」
腕を掴む力が、強くなった。
「さて、俺は仕事をするぞ」
「……僕を連れて行くの?」
僕が聞くと、男の人は頷いた。
「国からの命令なんだ。国民全員の強制星外退避」
「逆らったら?」
男の人は大きく溜息をついて、
「こうする」
と言った。
僕の意識はそこで途切れた。