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10 崩壊、そして…………

10 崩壊、そして…………


―――――― 気が付くとそこは、知らない場所だった。

「気が付いたか」

傍にいる人も、知らない人だった。白衣を着て、白いマスクをしている。どうやら医者のようだ。

「……ここは?」

僕はベッドから起き上がった。壁一面の巨大スクリーンに広がっていたのは、青く丸い星と、その星にめり込んだ小さな岩の様子だった。

「ここはコロニー。我々の新しい世界だ」

医者は淡々と説明した。

僕たちのいるコロニーは、宇宙に無数に浮かんでいる簡単な施設で、新しく人の住める惑星が見つかるまでは、ここで暮らさなくてはならないらしい。

人々は、5日前の最後のロケットで、星に住んでいた全員がコロニーに移住した。そして、僕が目覚める前の日に、月と衝突したらしい。

結局僕は、父さんにお別れを言えないまま、宇宙に来てしまった。

「お前の家族は居住区エリア356−Eに住んでいる。まぁ、お前にはしばらく入院が必要だがな」

そう言って、医者はマスクを取った。そこにあった顔は、僕を警察隊の施設に無理矢理連行した、あの警察隊の大人の顔だった。

「あ……」

「感謝しろよ。あの丘でお前を拾ったのが俺じゃなかったら、お前あの星に取り残されていたんだからな」

警察隊の医者は言った。移住しなくてはならない“星に住んでいた全員”の中に、犯罪者は含まれていないのだと。僕らの住んでいた町から離れた都会や、子供の知らないところでは、移住の混乱などで犯罪が急増していた。そこで国の偉い人たちは犯罪者の移住を認めずに、彼らを刑務所などの施設に拘束し、星に残したらしい。

とても汚いやり方だけど、仕方ないんだと警察隊の医者は最後にぽつりと言った。

「ん…………?」

突然、警察隊の大人が眉をひそめて、壁のスクリーンを見た。

「あれは……」

僕も身体を起こし、そちらを見た。

「あ…………」

スクリーンでは、重なった2つの星を背に、白い花が舞っていた。

それは、僕の夢の花だった。

「花だ……」

花はくるくると回りながら、宇宙を舞っていた。

それは、僕らの星の、涙の粒だった。

「あぁ……」

僕たちが捨てた世界は、最期の最期に、夢を叶えた。

「あぁ……」

その時ふと、

――――俺たちの夢を、この星の最後の夢を諦めちゃいけないんだ――――

シーグの声が脳内に響いた。

そうして、僕の中で2人が止まらなくなった。


あぁ、


   俺、リアを守りたい


            うなされていたけど。嫌な夢でも見たの?


   イコル、私たちも、大人にならなきゃ


                   ……あたしを独りに、しないで


  イコル、どこ行くんだ?


          バカ、バカ、バカぁ!


 生きるためなんだ、全部


                       ……シー……グぅ


              帰れ!!


    俺、お前の事好きだった……


           何処って……花見てきたんだ。それ以外に何がある?


          あぁ……リア……


     イコル、よく考えて


                      武器を使う人は、嫌い


      お前はここで、いつまでも子供のままでいろ



             これでずっと、ずぅっと…………




目が熱くなって、視界が滲んで、頭がズキズキして、汗がじわじわ出て、

そして、僕の胸に穴が開いた。

「おいお前、大丈夫か?」

すぐ近くにいる大人の声が、なんだか遠くから聞こえた。

僕の頭の中では、楽しかった頃の思い出が巡っては、一つずつ消えていった。


緑の美しい丘、

庭の木苺、

僕とリア、シーグの3人で暮らしたあの家、

道端の花、

やさしくてあったかい母さん

研究をしている父さんの後ろ姿、

少し生意気だけどかわいい妹、

頑固だけど本当はやさしいじいちゃん

青い空、


空に浮かぶ月




月が落ちる、その前に、


僕は少しだけ大人になった。


それは痛みと汚れを伴うもので、


いつまでも子供で居たかった敏感な僕には、ひどく大きな衝撃になった。


―――――― ぁあ、あああ、ああ、あぁ、あ、ぁ




ぁああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!




僕の意識は、ここで、終わった。




                                To be continued…


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