表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

結果発表

今回結構長いです。

決断した俺はがむしゃらに頑張った。

2次審査の持久走リレーも最下位から逆転して3次審査に進み、3次審査の鉄棒ぶら下がり耐久勝負も5人分くらいの時間耐えて4次審査に進んだ。

5次審査も6次審査も大逆転で勝利し、最終審査。

チーム戦は終わり、ここからは個人戦だ。

「あの、芹沢さん、大丈夫ですか?」

最終審査の準備が整うまでの休憩時間。

待機室で椅子に座ってぐったりしてる俺に、桜内さんが声をかけてきた。

「めちゃくちゃつらいです」

俺は今の気持ちを包み隠さず答える。

もうホント疲れた。

足はがくがく震えるし、腕の血管は切れそうになるし。

正直言うと早く帰りたい。

「それなら、どうしてそんなに頑張るんですか?」

「いや、どうしてって言われましても………」

特に理由なんて無いんだよな。

けど、まぁ、強いて言うのなら。

「桜内さんのためですかね」

「え!?」

一瞬にして顔を真っ赤にする桜内さん。

なんか『ボンッ』ていう効果音が付きそうだな。

「え、えーと、わ、わた、わたし、えっと、その………」

桜内さんは顔を真っ赤にしたままわたわたと手を振って、意味の分からないことを言っている。

この反応を見て思ったんだけど、俺ってさっきとんでもない事言った?

思い返してみれば、さっきのってほとんど告白だよな。

さっきまでは何ともなかったのに、そう思った瞬間恥ずかしくなってきた。

多分、俺の顔も桜内さんみたいに赤くなってるんだろう。

首から上の体温が上がっているのが自分でもよく分かる。

「今のはそういう意味で言ったんじゃなくて………」

じゃあどういう意味で言ったんだろうね?

自分で言っておいて分かんないや。

「今のはナシ!ナシでお願いします!」

いやぁ、情けないね、俺。

もう男らしさの欠片も無いじゃないか。

いっそのことモロッコ行って肉体改造して来ようかな………。

「分かりました!ナシですね」

「ナシです!忘れちゃってください」

ホント、なんであんなこと言っちゃったんだろ。

やっぱ女装のせいで可笑しくなってんのかなぁ………。


ちょっとしたごたごたもあった休憩時間が終わり、終に最終審査が始まる。

明るかった空はもう暗くなっていて、多くの照明が使われていた。

さっきまでは全然気にならなかったけど、この会場って意外とでかい。

東京ドームとまではいかないが、3分の2くらいはありそうだ。

観客席はこんな時間になったにも関わらず満席で、多くのカメラマンがカメラを回していた。

そう言えばテレビ中継されていたんだっけ。

まぁ、俺には関係ない話しだな。

『さて!長かった戦いも最後になります!1500人いた参加者はなんと30人にまで減ってしまいました。この中から選ばれるのは7人だけ。泣いても笑っても7人だけです』

長い間話し続けているのに相変わらずハイテンションの司会者が言う。

『最後の審査内容は自己紹介と1分間のアピールです。1分間と言う短い時間でどれだけアピールできるか、これが勝負の分かれ目となるでしょう。では!トップバッター108番の方、どうぞ!』

「はい!」

元気な返事と共に、108と書かれたプレートを付けた娘がステージに行く。

俺達には事前に審査内容が知らされていて、どんなことを話すかは考えてある。

ちなみに、いままで名前は伏せてあったが、今回は名前を言うらしい。

俺は本名言うと色々まずいから、偽名を姉貴から授かってるんだけど、その名前が『前田(まえだ)(まつ)』ってのはどうかと思う。

あの有名な戦国武将の前田利家(としいえ)の奥さんの名前なんだ。

お袋に似て姉貴も歴史オタクなのを忘れてたよ。

まぁ、そんなことは置いといて。

俺の出番は最後だ。

こんな大掛かりなオーディションの大トリが俺ってのはどうかと思うんだけど、平等なクジの結果じゃしょうがない。

ちなみに桜内さんは2番目だ。

さっきからガチガチに緊張してて、大丈夫か心配になってくる。

「桜内さん、リラックスリラックス」

肩に手を置いて話しかける。

「ひゃあっ!」

少しでも緊張がほぐれてくれればと思ったけど、逆効果かな?

「だだ、だだだ、大丈夫です。き、緊張なんか、して、ません」

いや、明らかにしてるでしょ。

これで緊張してないって言うのなら、緊張してる時ってどんなのよ?

「大丈夫です。桜内さんなら余裕ですって」

言っちゃ悪いけど、今までの意味分からん審査のせいで、20人位残念なお顔の人がいまして。

普通に考えると確率10分の7な訳なんだ。

俺が抜ける事を考えると9分の7で、落ちる確率のが少ないんだよな。

『お疲れさまでした!続きまして、1500番の方、どうぞ!』

108番の人が終わって、桜内さんの番号が呼ばれる。

「ひゃい!」

………おい、いきなり噛んだぞ。

桜内さんはカクカクとロボットの様に歩いていく。

何かやけに不自然だと思ったら、右手と右足同時に出てるんだな。

ここで日本人本来の歩き方をするとは、緊張してるのかリラックスしてるのか………緊張だな、絶対。

不安でいっぱいになりながら見ていると、桜内さんはマイクの前にたどり着きそうなところで。

「きゃあ!」

転んだよ。

何も無いところで。

それはもう見事に。

顔面から。

桜内さんはおでこを強打したらしく、おでこを擦ってから立ちあがる。

「わ、私は、桜内愛梨です。えっと、趣味は、お菓子を食べたり、作ったりすることで、えっと………」

話す内容が思い出せないらしく、桜内さんはその後『えっと、えっと』を繰り返す。

どこからどう見ても失敗なんだけど、ある意味これで良かったのかもしれない。

だって、観客や審査員の反応は抜群なんだ。

『ドジっ子かわい~!』とか『愛梨ちゃんサイコー!』とか、なんかもう、すごいよ。

「と、とにかく、よろしくお願いします!イタッ!」

結局桜内さんが話す内容を思い出す事はなく、時間が切れて強引に締めた。

しかも、お辞儀をした時にマイクに頭をぶつけてまたおでこを押さえている。

もうドジっ子もここまで来ると神だな。

「あうぅ~、ダメでした」

桜内さんはおでこを擦りながら半泣きになって戻ってくる。

完全に意気消沈していて、『ずーん』という形容がぴったりだ。

「多分、大丈夫ですって。後は信じて待ちましょう」

「………そうですよね」

桜内さんは暗く言うと、椅子に座ってガクッとうなだれる。

他の参加者たちは桜内さんの様子を見てガッツポーズしてたりするけど、最低だな。

普通は、慰めるとか、心の中でガッツポーズとかじゃないのか?

誰が選ばれても俺には関係ないけど、そんな人たちには選ばれてほしくないな。


最終審査は順調に進んでいって、終に俺の番。

ステージ裏にいる他の参加者たちは泣いたり祈ったりしてる。

「じゃあ、行ってきます」

桜内さんに声をかけてステージへと歩いていく。

ステージの上は思ったよりも眩しくて、思わず目がくらんだ。

少し顔をしかめながら歩いき、マイクの前に立つ。

1度お辞儀をしてから、俺は自己紹介を始めた。

『皆さん今晩は、エントリーナンバー1499番、前田松です』

そう言ってもう1度お辞儀をする。

「清楚系キター!」

「いいよ!いいよ!可愛いよ!」

拍手と共にそんな言葉も飛んで来て、背中がぞくっとする。

いやぁ、男に可愛いとか言われるのって慣れてるつもりだったけど、やっぱり気持ち悪いわ。

とくかくさっさと言う事言って終わらせよう。

ワザと落ちる言葉は姉貴と一緒に考えた。

その言葉とは………

「実は私、握力60kgもあるんです」

これだ。

だってほら、考えてみろって。

付き合ってる彼女がいきなり『実は私、握力60kgもあるの』なんて言ってきたらさ、幻滅するんじゃない?

少なくとも俺は速攻で別れるね。

それに、ほら、見てみろ。

思い通り観客や審査員たちはポカン顔で固まっている。

さて、ここでとどめを刺しておくか。

「すみません、用意しておいてもらったリンゴ、もらえませんか?」

ポカン顔で固まっている司会者に言う。

「え?あ、これですね?」

「はい」

「ど、どうぞ」

司会者は戸惑いながらも俺にリンゴを渡してくれた。

「では、見ててください」

俺はリンゴを片手で持つと、思いっきり握る。

すぐにリンゴから果汁がにじみ出てきて、数秒後、リンゴは辺りに果汁を撒き散らして砕けた。

「では、皆さん、よろしくお願いしますね」

俺はぺこりとお辞儀をすると、勝手に退場して行った。


ステージ裏に戻ると、みんな何とも言えない顔をしていた。

あからさまに『バカじゃないの?』みたいな視線を向けてくる人とか、『何こいつ?』みたいな視線を向けてくる人とか色々だ。

ライバルが1人減ったんだから喜べばいいのに。

よく分からない人たちだ。

「芹沢さん、力強いんですね」

椅子に座ると、桜内さんが小声で話しかけてくる。

「一応鍛えてますからね。あれくらいは余裕ですよ」

俺も男のはしくれだ。

筋骨隆々の肉体に憧れたりもする。

だけど、一向に腕とか足とか太くならないんだよな。

一応筋肉は付いてるみたいなんだけど、ホント不思議なもんだ。


その後は結果発表までしばらく雑談して、ようやく結果発表の時間になった。

30人全員ステージに上がらされて、照明は全て消された。

『それでは!お待ちかねの結果発表です!』

ハイテンションで司会者が言う。

『では!まずは1人目は………この方だ!』

ダラララララララ、という太鼓の音と共にスポットライトがあっちこっちに行ったり来たりする。

10秒くらいこれが続いて、『ダン!』という音を最後にスポットライトが止まった。

「……………………は?」

照らされているのは………ナント俺だった。

誤字脱字があればご指摘お願いします。感想や評価も待ってます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ