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美少女な青年

始めまして、橋本スバルです。不定期更新ですが、よろしくおねがいします。

「はぁ~」

鏡を前にして俺、芹沢(せりざわ)(あずさ)は深いため息を吐く。

何年前からだろう?

朝起きて鏡を見ながら溜息を吐くのが習慣になったのは。

確か、小学校高学年の時だったと思う。

クラスで顔のことをバカにされて、それから鏡を見るのが嫌になった。

見るのが嫌なら見なければいいじゃないかって?

考えてみろ。

鏡を見ないで生活なんてできるか?

少なくとも、俺は絶対に出来ない。

顔を洗う時だって、歯を磨く時だって鏡は必要だ。

もし鏡無しで生活出来る奴がいたら教えてくれ。

俺が土下座してでも教えを請いに行くだろうよ。

まぁ、これで分かったと思うけど、俺は自分の顔にコンプレックスを持っている。

だけど、不細工トーナメントに出たら優勝する様な顔じゃない。

むしろそんなトーナメントに出たら1回戦敗退するだろう。

別に俺の顔は不細工な訳じゃない。

俺の顔はかなりの美少女なんだ。

もう1度鏡を見てみるけど、そこに映るのはどこからどう見ても美少女。

それも、そんじょそこらのアイドルの比じゃない。

白い肌に、大きな目。

まつ毛も長くて、左目の斜め下には御丁寧に泣きぼくろがある。

ショートカットの髪型もこの上無いくらいに似合っていて、これで男なんて自分でも信じられない。

信じられないけど、16歳になっても胸は膨らまないし、第一俺の股の間には竿と2つの球がついてるんだから男なんだろう。

多分お袋の腹の中で何かが起きて、女として生まれてくるはずだったのに余計な物がくっついちまったんだな。

ホントに迷惑な話しだ。

この顔のせいで今まで色々な目に遭って来た。

男に告白された事なんて星の数ほどあるし、やっと女子に告白されたと思ったら『私のお姉さまになってくださいって』言われるし、中年のおっさんには『キミ、モデルをやってみないか?』とか言われてもう散々だ。

やっぱり無駄に身長が高いのも関係してるのかもしれない。

今は高校2年生なのだが、身長は176㎝ある。

モデルの勧誘が多いのは多分このせいだろう。

「やっぱ成形した方がいいのかな?」

鏡を見つめながらポツンと呟く。

「何言ってるの?あんたまだキレイになりたいって言うの?」

「うわっ!姉貴、いつの間に!」

いきなり後ろから声をかけられて振り向くと、そこには姉貴こと芹沢里奈(りな)が目を眠そうに擦りながら立っていた。

身長は俺より20㎝近く低いが、俺より5歳も年上で、どっかのアイドル事務所に努めている。

アイドル事務所と言っても姉貴がアイドルな訳じゃなくて、あくまでプロデューサーの役割だ。

姉貴も可愛い顔をしてると思うんだけど、本人いわく自分には裏方の方が合ってるらしい。

「まったく、そんなキレイな顔しておいてまだ足りないなんて、どうかしてるんじゃない?」

「別にキレイになりたい訳じゃねぇって。一応俺も男なんだから、男らしくして欲しいと思っただけ」

「ふーん………その割には服も髪型も女物よね」

「これは仕方ねぇだろ!」

俺だってこんな髪型や服は嫌だ。

だけど、お袋はスタイリストで親父は服屋の社長だ。

当然俺の髪はお袋が切るわけで、どれだけ言っても『似合う髪形にする』とか言ってこの髪型にするのを止めてくれない。

親父も他のメーカーの服は着るなって言っておきながら女物の服しか送ってくれないんだ。

文句言っても『スカート送って無いだけでも感謝しろ』とか言い出すし。

とにかく俺の周りには誰も味方がいない。

学校でもいつもからかわれて、気の弱い奴だったら自殺してるね、多分。

「そうそう、あんた今日用事ある?」

いきなり姉貴に今日の予定を聞かれる。

「えーと………別に無いけど」

少し考えてから俺はそう答えた。

今日は日曜日だが、特にやることはない。

家でぶらぶらしてるつもりだったけど、何だろう?

「じゃあ、今すぐ出かけた方がいいわよ」

「なんで?」

「家で今日昼からやるアイドルのオーディションの打ち合わせをやるの。あんた見つかったら絶対メンドーなことになるでしょ?だから、午前中だけでも外にいる方がいいわ」

「なるほどね。分かった、じゃあ、飯食ったら適当にぶらぶらしてくるわ」

俺もいいかげんスカウトとかされるの嫌だからな。

だって、あの人たちとにかく鬱陶しいんだ。

どれだけ断ってもしつこく言ってきて、男だって言っても信じてくれない。

だったら『証拠を見せる』って言ってズボン降ろそうとしたらそれさえ止めやがる。

人の性別を見かけで判断するなって思うけど、普通は見かけで判断するから文句も言えない。

まぁ、とにかく姉貴の会社の人が来る前にさっさと飯食って外行くか。

「さて、外行ってなにしようかねぇ」

「あんたさぁ」

「ん?なに?」

「ホント顔と声と言動一致しないわよね。顔はアイドル顔負けで、声も女役の声優になれるくらいいいのに、どうしてそんな喋り方なの?」

「放っとけ!」

しみじみと傷つくことを言う姉に大声でいう。

続けて『顔も声も変えられないんだからせめて喋り方くらい男らしくしようとしてるんだよ!』とか言いたかったけど、それはぐっと我慢する。

そんなこと言ったら間違いなくバカにされる。

バカにされることが分かってるのにわざわざ言う必要はない。

「ありゃ、そんなに怒るなって」

「怒らせたのは姉貴だろうが!」

「はいはい。分かった分かった。それよりも、そんなゆっくりしてていいの?会社の人もうそろそろ来るわよ」

「ぇ………うそぉ!?」

「ホント、(ピンポーン)あ、ほら、チャイムなった」

「マジかよ」

こんなに早く来るなんて聞いてねぇぞ。

まだ8時にもなってないのに、早すぎだっての。

「ほら、見つかりたくなかったら行った行った」

姉貴は手をひらひら振ると、玄関へ歩いて行った。

パジャマ姿で行くのはどうかと思ったけど、今は人のことより自分の事だ。

俺は急いで自分の部屋に戻ると着替えて裏口から出て行った。

誤字脱字等があれば教えてください。すぐに直します。

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