油断して使っていると訴えられる可能性もある、なろう作品でもよく見かけるファンタジー用語の話。
奥さん、本当は『ミスリル』なんかもヤバイそうですわよわよ。
なろうでは、権利という概念が非常に希薄だ。
他人が作ったオリジナルの設定やキャラ名でも、無断で拝借し、それがあたかもパブリックドメイン(PD)であるかのように扱われている。
「そういう文化」と言ってしまえば、それまでだ。
しかし、海外の権利者からすれば、「そうは問屋が卸さない」といったケースもあるらしい。
『ロード・オブ・ザ・リング(=指輪物語)』の作者で、おなじみのトールキン。そんな彼の財団が、管理の厳格化を宣言し、『ミスリル』『オーク』『ホビット』などの単語が、他の作品で使用禁止になるという記事を見かけた。
記事は、すでに二年前のものだが、なろう小説でも当たり前のように登場する単語なので、調べてみた(といっても、Geminiに丸投げ)。
すると返ってきた答えは「半分正解で、半分は誤解(デマに近い)」であった。
まず『ホビット』は、トールキンのオリジナルで商標権も保有しているため、完全にアウト。指摘を受けた作品は『ハーフリング』などに改称。
続いて『ミスリル』も、トールキンによる造語。
すでにあまりにも多くの作品で使われてしまっているため、取り締まりは難しいが、配慮からスペルを変えるなどの措置が海外ではとられている模様。直接訴えられれば、負け戦なので、今後は使わないのが正解。
最後に『オーク』。
これを広めたのはトールキンだが、『ベオウルフ』などにも登場する古英語に語源があり、これはおそらくセーフとされる。
二年前に起きたとされる騒動は、財団が「今後は権利を厳格に扱う」という発表に対する「予測」が、伝言ゲームにより、公式発表のように語られたと見るのが正解か。
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さて、こうなると気になるのが「他の単語」である。
多くのなろう作品では、さまざな商業作品で扱われる単語や用語・設定が、出典不明のまま、流用されているのが現状。油断していると、トールキンのオリジナルのように、パブリック・ドメインとなっていない単語も、まだまだ使われているに違いない。
ということで、Geminiさん、出番です。
Gemini)
1. ほぼ100%アウト(固有の名称・商標)
・クトゥルフ神話の固有名詞(クトゥルフ、ニャルラトホテプ等):
ラヴクラフトの没後、著作権は消滅していますが、「クトゥルフ神話(Cthulhu Mythos)」という枠組みや一部の用語の商標をカオスシウム社などが管理しているケースがあります。
・チョコボ、スライム(特定のデザイン):
「スライム」という言葉自体は一般名詞ですが「水色で玉ねぎ型の、目がクリッとしたデザイン」にすると、スクウェア・エニックスの意匠権に抵触します。
追記)ポーションなども、「瓶の形」「液体の色(赤がHP、青がMP)」「ランク分け(ポーション、ハイポーション、エクスポーション等)」のセットをそのまま使うと、スクウェア・エニックス等のUI著作権に近い領域に踏み込みます。
2. 要注意(トールキン以外のアブナイ造語)
トールキンの「ホビット」と同じく、特定の作家が心血を注いで作った造語です。
バルログ(Balrog):
これもトールキンの造語です。多くのゲームで「バルログ」が登場しますが、海外の厳格な出版では「デーモン」や「グレーター・デーモン」に書き換えられます。
ミスリル(Mithril):
先ほどお伝えした通り、トールキンの造語。なろうでは「鉄より軽く硬い銀色の金属」として定番ですが、英語圏のゲームや小説では「Mithral」という綴りに変えて回避するのが一般的です。
トレント(Treent):
「動く木」ですね。これもトールキンの「エント(Ent)」を、D&D(ダンジョンズ&ドラゴンズ)が商標回避のために言い換えた名称です。今ではトレントすら権利関係が複雑なため、「ウッド・ゴーレム」や「エルダー・ツリー」とするのが無難です。
3. 日本独自の「なろう文化」がはらむリスク
海外展開を視野に入れた場合、特に注意が必要なのがこちらです。
ステータス画面・鑑定(UIの表現):
「視界にウィンドウが出る」「鑑定スキル」という概念自体に著作権はありません。しかし、特定のゲーム(例:ウィザードリィやドラクエ)の計算式や、特徴的なステータス名をそのまま流用すると「依拠性」を指摘されるリスクがあります。
ギルドランク(F〜S級):
これは日本のサブカル特有の表現です。これ自体で訴えられることはまずありませんが、海外の読者からは「なぜランクがアルファベットなの?」と世界観の不自然さを指摘されることがあります。
―― 「冒険者ギルド」「ランク」「依頼票」「受付嬢」の一連のセットが、特定の有名作品(例:『フェアリーテイル』や『モンスターハンター』など)の固有表現と酷似しすぎると、海外では「依拠性」を問われることがあります。
まとめ:安全に執筆するための「言い換え」リスト
もしプロデビューや海外翻訳を目指すなら、以下の「安全な代替語」をストックしておくのがクリエイターとしての防衛術です。
[危険な単語 → 代替候補]
ホビット → ハーフリング、小人族
エント、トレント → エルダー・ツリー、樹人
ミスリル → ミスラル、オリハルコン*
バルログ → 魔人、火炎魔、デーモン
*補足:オリハルコン(Orichalcum)は、プラトンの『クリティアス』に登場する伝説の金属なので、誰でも自由に使えます。ミスリルの代わりに使うなら、こちらの方が法的にはクリーンです。
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パブリックドメイン(PD)とは「知的財産権が発生していない、あるいは消滅した状態」となっているものを指す言葉。著作権の保護期間は、作者の死後七十年(以前は「五十年」だったが、2018年に延長措置。ミッ○ーが原因?)とされ、それ以降は、青空文庫などでも掲載が可能となる。
なので、トールキン(1973年没)の作品は、まだパブリックドメイン化はしていない(ラブクラフトのクトゥルフ神話の方は商標権が絡むので、後ほど)。
他にも、著作権者が権利を放棄した「クリエイティブ・コモンズ・ゼロ=CC0」などがあるが、こちらは個別に裏取りを行う必要がある(紹介サイトでは「CC0」表記でも、実際には違うケースもあるため)。
ややこしいのが「翻訳」の権利。
原作がPDとなっていても、翻訳版の訳者の権利が同時失効しているわけではないので、翻訳版のコピペ行為は、危険。今なら言語生成AIに、PDとなっている原本を翻訳させ、それを利用する方が安全だろう(プロンプトひとつで原本も調べてくれるのだから)。
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さて、お待ちかねの「商標権」。
ミッ○ーマウスの著作権そのものは切れていても、ディズニーは名前や図形を商標登録しているので、勝手にそれらを使い、商業活動するのは、ご法度。
商標権は(十年ごとに更新料を支払い)更新し続ければ、半永久的に拘束力を持つ権利なので、クトゥルフ神話の枠組みなどを商業的に使うのには、細心の注意が必要。
―― 他にも「これもヤバイよ」などの情報があれば、感想欄にて、お教えいただけると非常に助かります。ほなまた。




