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止まり木の魔術師  作者: 成果


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愉快な仲間たち?

目が覚めると、いつもと違う、見知らぬ天井が視界に入った。


のそりと上体を起こすと、全身にずっしりとした疲労感がのしかかる。

陽の高さからして、もう昼前だろう。昨日は夜遅くまで起きていたせいで、起きるのも遅くなってしまったようだ。


昨日の出来事を頭の中で整理する。


自宅への襲撃のこと。

エルグ司祭が犯人かもしれないこと。

精神干渉の痕跡を辿れる力が、俺独自のものであり、調査に協力することになったこと。


とても一晩のうちに起きた出来事とは思えない。


セフィラさんの話では、王都アルセインにいる対魔管理局の仲間を呼んでいるらしい。

王都アルセインから辺境ルミネまでは、馬車で急いでも五日ほどかかる距離だ。彼らが到着するまでは、この白鹿亭(はくろくてい)で待機するしかない。


とりあえず遅めの朝食――いや、もう昼食が始まっているかもしれないが、何か口に入れよう。

そう思い、食堂へ向かうことにした。


素早く着替えを済ませ、顔を洗い、ドアノブを捻って廊下へ出る。


「おはよう、ユーマ」


廊下に立っていたのはノアだった。


「おはよう、ノア。待ってたのか?」


「ちょうど起こしに来たところよ」


「そうか。今から食堂に行こうと思ってたんだが、何か用か?」


「王都から、残りの班員が到着したの。ご飯も部屋に運ばせてあるから、そこで食べながら今後の話を詰めましょう」


王都から到着?

昨夜セフィラさんが連絡を入れてから、まだ半日も経っていないはずだ。

たまたま近くまで来ていたのだろうか。


「どうしたの? 行きましょ?」


「あ、ああ」


よくわからないまま、俺はノアの後を追うのであった。



ノアに連れられて、昨日と同じ部屋へ入る。


そこには、見知らぬ男が三人いた。

一人はソファに腰掛け、残りの二人はその後ろに立っている。


赤い髪にバンダナを巻いた男。民族衣装のような、ゆったりとした服装をしている。


もう一人はこの辺では珍しい、褐色の肌の男だ。頭はスキンヘッドにしており、服装はフォーマルなジャケットを着ている。


そして、短い黒髪に無精髭、半袖から見える隆々とした筋肉質の太い腕。他の二人に比べ圧倒期な存在感を放つ男。ソファに座っているのは彼だ。隣には剣――いや、刀が置かれている。


別のソファでは、セフィラさんとリナが並んで座り、何やら楽しそうに話し込んでいた。


「ユーマを連れて来ました」


ノアが告げる。


「おう。ご苦労だった」


黒髪の男が、こちらを一瞥する。


「……お前がユーマか。まあ、座れ」


目線で正面のソファを示され、俺はそのまま腰を下ろした。

ノアは男の側へ回り、後ろに立っている二人と並ぶようにして、その背後に立つ。


「俺の名はジン。ジン・ルクスフォルムだ。今、起きたばかりなんだろ? 飯でも食いながら話そう」


人は不的な笑みを浮かべる。

目線をジンと俺を挟むテーブルにやると、いくつかの料理が並べられていることに気づいた。

ノアの言っていた通り、食堂から運び込まれたものらしい。


「ユーマだ。それじゃ、遠慮なくいただく」


俺はテーブルに置かれていたピザに手を伸ばした。

温かく、朝食には少し重たいかとも思ったが、トマトのさっぱりしたソースが程よい。油分も控えめで、なかなか美味い。


「最初に聞こう」


ジンが低い声で切り出す。


「これまで、精神干渉魔法で人を不幸にしたことはあるか?」


「ない」


即答だった。

それは俺の信条であり、生き方でもある。


「聞き方を変えよう。自分の利益のために使ったことは?」


「ない」


「そうか、では仲間の命が危険な時、精神干渉魔法を使えば切り抜けられるとしたらどうする?」


「愚問だ。躊躇わず使うさ」


実際に昨夜はそうしたしな。


「へぇ……。じゃあ最後の質問だ」


最後の質問――。

俺はわずかに身構えた。


「セフィラからは、ノアが選んだ男だと聞いたが……どこまで進んだ?」


「は?」


俺がポカンとしているとジンさんはさらに続けた。


「だから、アイツとどこまでやったか聞いてんだよ」


そう言って、親指で後ろを指す。そこにはノアがいた。


ゴンッ。


鈍い音が部屋に響く。


ノアが、背後からジンを殴っていた。拳で。


「ふざけた質問しなくていいから。さっさと本題に入ってちょうだい。――お父さん?」


かなりいい音がした。

殴った側の手も無事では済まないだろう。


案の定、ノアは自分の拳を見つめている。少し赤くなっていて、痛そうだ。

――あ、水魔法で治してる。


「痛てて……お前なぁ。自分の手を痛める威力で殴るなよ」


「うるさい。早く話を進めましょう。いつまでラシュさんとザイードさんを、無言で立たせておくつもり?」


「はは。俺は構わねえけどな」


「ええ。私も構いませんよ。ジン班長がこう(・・)なのは今に始まった話ではありませんので」


後ろに立っていた二人が、ようやく口を開いた。



その後、二人からも自己紹介を受けた。


赤髪にバンダナの男はラシュ。見た目通り、火魔法を得意とするらしい。

褐色肌のスキンヘッド男はザイードで、雷魔法を使うとのことだ。


どちらも、ノアが所属する対魔管理局・第4班の戦闘員。

そして、諜報員であるセフィラさんとは同期とのことだ。


対魔管理局・第4班は班長のジンを筆頭に、戦闘員のラシュ、ザイード、諜報員のセフィラ、ノア、それに、ここにはいないがミラというノアの後輩の計6名で構成されているらしい。


そして、班長のジン・ルクスフォルム。

驚いたことに、ノアの父親だという。

……ということは、ノアもノア・ルクスフォルムなのか。


この国で家名を持つということは貴族、もしくは国にとって著しい功績を残した名家である証明だ。

見た目からして、貴族ではないと思うが……。


この人は、なんというか――カタギじゃない。

酒場で見かける冒険者の中にも、かなりの実力者はいた。実際、手合わせして喧嘩を教わったこともある。

だが、ジンさんほどの“圧”を感じる人物はいなかった。


脱力して、だらしなくソファに腰掛けているというのに、隙が見えない。


別に舐めていたわけではないが、改めて気持ちが引き締まった。


その後は、俺とリナのこれまでの話や、辺境ルミネのこと、そして俺の職場である『狩人の止まり木』の話など、他愛のない会話が続いた。


ジンさんも、最初こそ少し威圧されてしまったが、よく話を聞いてくれ、よく笑い、たまにノアを怒らせ、気付けば緊張もほぐれていた。


テーブルの上の料理が片付き、空腹も満たされた頃――。


「さて、腹も膨れたところで、そろそろ本題に入ろうかね」


ジンさんが一言そういえば、部屋の空気は一瞬で切り替わる。


話題は、教会への侵入作戦へと移っていった。

しばらく毎日お昼の12時更新予定です。

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