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止まり木の魔術師  作者: 成果


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12/14

犯人

気を荒げていたノアもようやく落ち着き、

「お礼の話はすべてが片付いてからにしよう」ということで一旦整理がついた。


そのタイミングを見計らって、セフィラさんは、ここまでやや置いてけぼりになっていたリナへと視線を向けた。


「――あ、そうそう。実はね、リナちゃんにも少し協力してもらいたいことがあってさ。よかったら力を貸してくれないかな」


「私、ですか? その……実は私……」


リナは言い淀み、視線を伏せる。

見かねて、俺が代わりに口を挟んだ。


「セフィラさん。リナは魔力が無いんだ」


魔力が無い人間。ごく少数にはなるが、魔力を一切持たず、少しの魔法すら使えない人間は存在する。


そして、他より劣るとして『魔抜け』なんて蔑称で呼ばれることもある。

今でこそ、あからさまな差別は無くなりつつあるが、古い考えが残っている人も根強く残っており、リナは酷い言葉を浴びせられたこともあった。


「すみません……魔力無しなんです……。だから力になれないと思います……変ですよね。修道女見習いをしてるのに、魔力無しなんて……」


リナは俯いて弱々しく口にする。


「大丈夫、大丈夫だよ」


セフィラさんは即座に首を振った。


「私たちの中に、そんなことで人をどうこう思う人はいないから。ね、ノアちゃん」


「ええ、もちろんよ」


ノアも穏やかに頷く。


「王都の教会にだって、魔力の無い信徒はたくさんいるもの。何も気に病むことなんてないわ」


「あはは……ありがとうございます」


ここにいる人たちは誰もリナのことを劣っているなんて考えていない。

リナの表情が少し和らいだ。


「それにね、危ないことをお願いするつもりはないんだ。ただ、ちょっと教会のことを教えてほしくてね」


「教会……ですか? ルミネの教会の……」


「そうそう。そのルミネの教会について」


セフィラさんは、妙にあっさりした口調で続けた。


「実はね――犯人、教会の人間っぽいんだよね」


「……!?」


セフィラ以外の全員が、衝撃で言葉を失った。

セフィラさんは構わず続ける。


「ルミネに来てからは、周辺の流通を辿っていたんだけどね、精神干渉魔法絡みの事件が起き始める少し前から、教会の中で金銭の不自然な動きがあったことを発見したの」


「そこで教会関係者に目星をつけて調査を進めた結果、未登録の魔道具が取引されている現場を押さえたわ」


そう言って、セフィラさんはポケットから一つのペンダントを取り出す。


「それは……」


「精神干渉魔法の術式が込められた魔道具だよ」


彼女は淡々と説明する。


「最近起きていた事件は、全部これで操られていた。ユーマくんが倒した男の懐からも、同じものが見つかってる」


ノアが眉をひそめて問う。


「そんなもの……よく入手できたわね」


「ふっふっふ」


セフィラさんは意味ありげに笑った。


「私の“手”にかかれば、これくらいは容易なことだよ、ノアちゃん」


そう言って右手に魔力を集中させると、白衣の裾の奥から、シュルシュルと植物のツタのようなものが蠢いた。


ノアの水魔法といい、セフィラさんの植物の魔法といい、使い勝手が良さそうで少し羨ましくなった。


俺の精神干渉魔法は、何かを動かしたりはできないからな……


「……ちょ、ちょっと待ってください」


我に返ったように、リナが声を上げる。


「ルミネの教会の中の人間って……一体、誰がそんなことを……」


「残念だけど、個人までは特定できていないの」


セフィラさんは首を横に振った。


「ただ、魔道具の取引は、複数の部下や信徒を経由して行われていることから、ある程度階級の高い人物だろうとは踏んでいるわ」


そして、リナをまっすぐ見つめる。


「リナちゃんに聞きたいのはね、最近、誰かから物品の受け取りを頼まれる人を見たことがないかってこと。……それか、リナちゃん自身に心当たりがあれば、教えてほしいの」


リナは、黙り込んだ。

顔色は真っ青で、これまで見たことがないほどだ。


その様子を見かねて、ノアが口を開く。


「セフィラさん。いきなり、自分のいる教会の中に犯人がいるかもしれないって言われて……仲間を疑えだなんて、誰だって辛いわ」


「あっ……! ごめんね、リナちゃん」


セフィラさんは慌てて手を振った。


「つい聞きすぎちゃった。無理に答えなくていいからね」


青ざめたリナの周りで、セフィラさんが落ち着かない様子でオロオロしている。


そんな中、俯いた顔を上げた。


「……あります」


静かに口を開く。


「心当たり……あります……」


「本当!?」


セフィラさんが思わず声を上げる。


「はい……。私です。私が、頼まれごとを受けました……」


リナは言葉を選びながら、続ける。


「知人に貸している道具を受け取りに行ってほしいって……。貴重なものだから、中身は絶対に開けないように、と……」


そして、覚悟を決めたように――青白く、今にも泣き出しそうな表情ではあったが、はっきりと告げた。


「……私に指示を出したのは――エルグ司祭です」

しばらく毎日お昼の12時更新予定です。

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