私に興味がない愛しの婚約者様、婚約破棄をしてください
4,000字行かない程度の短編です!
すれ違いラブストーリー…なはず…。
「ねぇ、マリア、私ヘンリー様に告白して、婚約破棄しようと思ってるの」
人が来ない学園の裏庭のベンチに腰掛け、俯きながら、私は友人のマリアに自分の考えを伝える。
私は、人がどんな感情を今抱いているかをオーラを通して知ることができる。感情は大きければ大きいほど、そのオーラも大きくなる。
例えば、怒っている人ならば、その人は暗い赤色の雰囲気を纏い、その怒りが大きければ、ある程度離れていても、怒っている人のいる場所はなんとなく把握ができる、ということだ。
学園に入り一ヶ月が経った頃、10年ぶりくらいにいつもよりも負のオーラを感じ、気分が悪くなり、人気のない学園の裏庭に駆け込んだ時に出会ったのがマリアだ。それからも数ヶ月に一回程度、気分が悪くなることがあり、裏庭に駆け込んでいた。いつのまにか、気分の悪さに関係なく、私は裏庭に向かうようになり、今ではすっかり親友だ。
「相変わらず、ロゼッタは相手に興味を持たれてないと思ってるの?」
「うん。だって何もオーラが見えないもん」
普通、どんな人と話す時も、人は退屈、喜び、楽しさ、など正であれ負であれなんらかの感情を抱く。
しかし、ヘンリーが私と話している時、彼のオーラを一切感じない。
私ではない人と話しているときは彼の感情が見えるのに、だ。オーラだけじゃない、彼はいつも眉間に皺を寄せて私と接し、話していてもぴくりとも表情が動かない。
彼は私と話すことに対してかけらも興味がないのだろう。
「ロゼッタは貴族なのに恋愛結婚に憧れてるもんねぇ。御両親も貴族には珍しい恋愛結婚だし。そんなロゼッタからしたら今の状態は辛いよね」
「うん…」
努力家で気配りができて、無愛想だけど根は優しい、そんな姿を15年近く見ていて、好きにならないわけがない。ただ、相手が私に興味がない。ただそれだけ。
幸い、私の家は公爵で彼の家は侯爵、私家の方が家柄は上ため、我が家からの提案で婚約破棄はできるだろう。
両親は恋愛結婚奨励派だし、家は優秀な兄が継ぐ。まだ学生だから婚約破棄をしてもヘンリー様にはダメージが大きくないだろうし、彼に思いを寄せていらっしゃる優秀な令嬢もたくさんいる。何も問題ない。
「婚約破棄したらどうするの?新しい婚約者見つけるの?」
「んー、しばらく恋愛はできないだろうし、貴族との結婚は諦めて家を出ようかなって、許してもらえるかわかんないけど」
「私とこの国でてどこかの国で働かない?身分とか関係ない国で一緒に暮らそうよ」
マリアがニコッと笑う。
「それいいね。マリアと一緒なら両親も許してくれそう」
「ほんと、ロゼッタの家は貴族っぽくないよね。国家最大の貴族と言っても過言ではないのに。平民の私を暖かく迎え入れてくれるし、信頼してくれるし」
「そうかもしれないわね。本当に最高の両親よ」
マリアは私の頭を撫でながら、何かを言った。
「まぁ、婚約破棄が本当にできればの話だけど」
「ん?なんか言った?」
マリアのボソッとしたつぶやきは私には聞き取れなかった。
「うんん、なんもないよ。私、教室に忘れ物しちゃったからとってくる、ロゼッタはもう少しここいる?」
「うん、マリアが帰ってくるまでまってるよ」
「了解、じゃぁ行ってくるねー」
「行ってらっしゃい」
数分後、誰かが来た音がした。
「マリア、はやかった…ね」
私の目の前にいたのは、マリアではなく婚約者のヘンリーだった。
「あ…。ヘンリー様…」
「すみません、マリア嬢ではなく、私で」
「い、いえ、そんなことは」
「私との婚約を破棄したいですか?」
ヘンリー様はいつもと変わらぬ眉間に皺がよった表情のままだ。
「あ、え、」
私は戸惑いのあまり言葉を発せられなかった。
「あの…私、ヘンリー様に伝えたいことが…あって」
言うタイミングは今ではないかもしれないけど…、言いたい。
「私…ヘンリー様はが…」
「それ以上は聞きたくない」
「え…」
告白も聞きたくないほど、私に興味がないのだろうか…。私は、もうこの恋は終わりだな、と悟り、精一杯の笑顔を作り、
「では、お互いのために婚約破棄の方がいいですね。理由に関しましては、私の個人的な理由としておきますので、失礼致します」
そう言ってその場を去った。
本人の前で泣き出さなかった自分を褒め、家に帰ってから大泣きした。家のそこかしこから、優しい心配のオーラがした。
次の日は学園を休んだ、泣きすぎたのか精神的ダメージからなのか、発熱をしたのだ。その日の放課後、呆れのオーラと共に私の部屋にやって来たのはマリアだった。
「まりあぁぁぁ」
私はマリアを見た途端、また涙が溢れてきて、ベッドから体を起こし、彼女に抱きついた。
「はいはい、よしよし」
「ゆ、勇気出してね、言おうとおぼったんだよ”、でもね、好きって、い、言わせてすら、もらえながっだ…」
泣きじゃくり、途切れ途切れのままマリアに事情を話した。マリアは私の頭を撫で、私が少し落ち着いたところである提案をした。
「次会った時に、もう一回言ってみたら?」
「む、むりだよ。言う前から拒絶されたんだよ」
自分でそういい、また涙が溢れてきた。
「ごめん、ごめん。言い方が悪かったね。でもさ、もしかしたら相手がロゼッタが何言うか勘違いしてた可能性だってあるじゃん?好きな子の言葉遮る時点で論外だけど」
後半、マリアは私から口を逸らし、小声でため息をつきながら呟いた。
「最後なんて?」
「うんん、なんでもない、ほら、お見舞いボーイが来たんじゃない?私はこれで、ちゃんと話し合ってみなよ。だめなら、"私と一緒にこの国でようね"」
マリアは最後のフレーズを少し大きめな声で言うと、部屋を出て行った。
マリアが部屋を出て入れ違いに、ヘンリー様が入ってきた。彼の顔を見たら泣いてしまうと思い、私は布団を頭まで被る。
「ロゼッタ様は…マリア嬢と国外に…出られるのですか…?」
「婚約破棄しましたから、ずっとこの国にいる必要もないですし…。両親も私に貴族令嬢として、結婚の役割を求めることもありませんから」
「婚約破棄は、まだ、してません」
「え…?もうローレンス家から、その旨をお伝えする手紙は送りましたが…」
「私の家がまだ同意していませんので」
「いますぐ、承諾してくれませんか?」
私はヘンリー様の顔を見ずに言った。
「いやです」
なんだか、ヘンリー様の態度にイライラしてきた私は、ガバッと体を起こし、彼に向かって言う。
「告白する機会すら与える気のないほど、嫌いな女なんですよね、こっちは辛いんです。非は私側にあり、ヘンリー様は被害者である、必要ならば新しい婚約者を我が家の分家から探すという提案もしました。何がダメなんですか?」
私は、涙が出るのを必死に堪える。
「告白する機会…?なんの話ですか?」
ヘンリー様はいつもの仏頂面とは、違う、キョトンとした、ちょっとアホっぽい顔をしていた。
「昨日…学園の裏庭で話してる時にヘンリー様に言いたいことがあるって」
「あれは、婚約破棄をしてくれと言う話ではなかったのですか?」
「ち、違います」
ヘンリー様は驚きを隠せない表情でいった。そして、その後すぐに表情を変え、
「本来は私から言うべきでした。ロゼッタ様、私はあなたを愛しています」
「え…?そ、そんなわけ…。だ、だって、ヘンリー様は私に、興味がないはずで…」
「なぜ、そう思ったのですか?」
私はそこで初めて、私がオーラで人の感情を知ることができる、そして、私と話す時にヘンリー様の感情を一切感じなかった、と言う話をした。
ちょうど私のオーラの説明が終わったところに、マリアが入ってきた。
「失礼しますね」
「どうしたの?マリア」
「ん?私は種明かしに来たのよ」
「「種明かし?」」
「そう、ロゼッタがなぜ、ヘンリー様のオーラを感じられなかったか、のね。それは、ズバリ、ヘンリー様の愛が、死ぬほど重いからですね」
マリアは少し顔を顰めながら言う。
私もヘンリー様もどう言うことかわからず、二人で顔を見合わせる。
「ロゼッタ、前、明るい気持ちの人とか、ロゼッタに対していい感情を抱いている人のオーラは心地いいって言ってたよね?」
「うん」
「そして、感情のオーラはその時に複数個見える時だってあるんでしょ?」
「うん」
「そうよね。その話を初めて聞いた時に、もしやと思って、ロゼッタがオーラで気分が悪くなる日と、ヘンリー様の動向を考えたんだけど、そしたら、ヘンリー様が侯爵家の仕事の手伝いで、隣国とかじゃなくて、大陸一つ跨いだくらい離れた国に行ってる期間とぴったりだったのよね」
「そ、それって…」
私がマリアからヘンリー様の方に視線を向けると、ヘンリー様は顔を真っ赤にして下を向いていた。
「じゃ、お邪魔虫はこれくらいでー」
そう言ってマリアは早々にさって行った。
「す、すみません。重い男で…」
「い、いえ、とても嬉しかったです」
「婚約破棄の請願書って…」
「取り下げますね」
そう言って二人で笑い合った。
【人物紹介】
◯ロゼッタ・ローレンス
ローレンス公爵家の末っ子長女、感情のオーラを見ることができる、好きな食べ物はハンバーグ、優しく努力家な婚約者のことが好きだが、相手から感情のオーラが一切感じられなく、自分と話してきても仏頂面なままのため、興味を持たれていないと思っている。
◯ヘンリー・ドーゴン
仏頂面、ロゼッタを見て顔が緩むことがしばしばあり、ロゼッタにひかれたら嫌だったため、眉間に皺を寄せポーカーフェイスを装っていた。口下手。
◯マリア・エヴァレット
平民出身の特待生。貴族たちにも比較的馴染める性格の良さや快活さを持っている。ロゼッタの親友。二人が両片思いのことに気づいてはいるが、それはそれで見ているのが楽しいため、今まで黙っていた。婚約破棄というところまで話が進み始めてしまい、さすがに焦って助け舟を出した。
また別のお話で、あなたとお会いできたら嬉しいです!




