朝のSpeechは危険がいっぱい☆
朝8時55分。
営業部フロアには、いつもより妙な緊張感が漂っていた。
理由はただひとつ。
今日はミスティ課長が“全体朝礼スピーチ担当”の日だから。
佐伯「山根…大丈夫かな…」
山根「いや…毎回ギリギリなんだよね…猫だってバレそうでバレない、あのスレスレ感…」
佐伯(心の声:課長、今日も絶対やらかすけど…なんか奇跡的に誤解で乗り切るんだよな…)
山根(心の声:前回なんて、レーザーポインタ追っかけて“社員の集中力をテストした”って誤解されて褒められてたし…)
8時59分。
トコ…トコ…トコ…
フロアの隅から歩いてきたのは、堂々とした姿勢のシャム猫。
ミスティ課長である。
課長「全員、整列しろ」
社員一同「お、おはようございます!!」
社員A(心の声:今日も綺麗すぎる…なんなのあの毛並み…)
社員B(心の声:威厳ある声なのに、見た目が天使のシャム猫なのずるい…)
課長は演台(猫用の高さ調整台あり)にピョン、と軽く飛び乗る。
その瞬間——
ピャッ…!
ふわふわのしっぽが、軽く社員の頬をかすめる。
社員C(心の声:うわああああ!しっぽが…ほわほわ…ッ!!)
社員D(心の声:死ぬ…!朝から天使アタック…!)
課長は気づいていない。
あくまで“威厳あるポジション取り”をしただけだ。
課長「今期の営業方針について話す」
声は堂々。
でも、風が吹いてヒゲがふるふる揺れてる。
社員E(心の声:ヒゲ…ゆれてる…可愛すぎて耳に内容入らん…)
社員F(心の声:でもスピーチ自体は普通にしっかりしてるのが余計にギャップ…)
課長は続ける。
課長「まず、顧客との信頼関係を——む?」
その瞬間、
フロアを横切っていく“赤いレーザーポインタの光”。
事務の人が使っていたレーザーポインタが誤って点灯したのだ。
課長の青い瞳が、
スッ…と一点を追う。
佐伯(心の声:やばい!!)
山根(心の声:課長ッ!耐えてッッ!!!)
課長「…………」
レーザーは床をツーッと滑る。
課長の後ろ足が、わずかに“タッ”と動く。
反応してしまったのだ。
佐伯(心の声:やばいやばいやばい!!!)
山根(心の声:飛ぶな!飛ぶな!飛んだら終わりだ!!)
だが奇跡が起きた。
課長はグッと踏みとどまり、
そのまま前を向いてスピーチを続けた。
課長「失礼。話を続けよう」
社員たちは「おぉ…」と感嘆。
社員A(心の声:あれ…?いま課長、危うく何かに反応した…?)
社員B(心の声:でも冷静に戻った…さすが…落ち着いてる…)
社員C(心の声:なんか…すごい集中力のある課長に見えた…)
そう、ギリギリ猫の本能だったのに
“冷静さを保ってエラーを修正した”
と誤解されている。
課長は続ける。
課長「次に、各担当の進捗管理についてだが——」
すると今度は、
後方の社員が落とした紙が、ひらひらと課長の横へ舞ってきた。
シャッ!
課長が無意識に前足で紙を押さえた。
完璧な猫パンチのフォーム。
佐伯(心の声:終わった…)
山根(心の声:いやこれ…無理…絶対猫にしか見えない…)
しかし。
社員D「す、すごい…!課長…紙が飛ぶ前に押さえるなんて…!」
社員E「反射神経ヤバ…!さすが課長…仕事速い…!」
全員が、
猫パンチ → “反射的な神対応”
と誤解。
課長は得意げに胸を張る。
課長「当然だ。基礎がなっていれば誰でもできる」
社員たち(心の声:いやできないわ!!)
だが誰も言えない。
スピーチは再び続く。
課長「最後に——」
その瞬間、
演台の端に乗っていた“ペン”がコトン、と転がり落ちた。
コロコロコロ…
課長の青い瞳が追う。
佐伯(心の声:あっ…)
山根(心の声:もうダメだ…耐えられない…)
転がるペンに、
課長はゆっくりと、
ゆっ……くりと前足を伸ばす。
チョン。
“優しくタッチ”。
静まり返るフロア。
社員A(心の声:……え?)
社員B(心の声:た、たっち…?)
だが課長は淡々と言う。
課長「……危うく社員の足元まで転がるところだった。事故防止のためだ」
社員全員「おおおおお……!」
社員C「課長…!細かいところまで気を遣ってる…!」
社員D「リスク管理の鬼だ…!!」
奇跡の全員誤解。
課長は満足げにうなずき、しっぽをゆっくり下ろす。
課長「以上だ。今日も励め」
社員全員「はいっ!!」
心の中(なんでこんなに可愛いのに威厳が保てるの!?)
トコ…トコ…と去っていく課長。
その背中は、
“猫のまま、なぜか圧倒的なカリスマを保つ奇跡の存在”
そのものだった。




