会議室の小さな戦争
朝イチの定例会議。
部下たちは資料を抱えて会議室に入るが、そこには既に堂々と座るシャム猫課長・ミスティがいた。
椅子の高さのせいで、ちょこんと前足がテーブルに乗っている。
課長「……遅いぞ。時間厳守と言ったはずだ」
課長の声(翻訳されたビジネス猫語)はいつも通りキリッとしている。
けれど、本猫は知らない。
その「時間厳守」が、丸くて小さい口から発されるのが、どうしようもなく可愛いことを。
佐伯(心の声:やべ…小さい口で叱られると“もっと叱ってください”みたいな謎の感情が芽生える…落ち着け俺…)
山根(心の声:今日も目がうるうるしてる…寝起き? かわ…いや違う、課長は課長!)
課長「まずは営業実績の報告だ。佐伯、頼む」
佐伯「は、はい!」
佐伯は資料をめくりながら説明するが、
説明中、ミスティ課長がじっと見つめてくる。
青い目がまばたきをゆっくりするたび、空気がふにゃっと和む。
佐伯(心の声:見ないで課長…目が…目が可愛くて集中飛ぶ…!)
山根(心の声:あのトコトコした座り直し…耳がぴょこ…反則だろ…)
課長「……佐伯? 数字の読み上げが途中で止まったぞ?」
佐伯「す、すみません!大丈夫です!」
するとミスティ課長は、ストンと座り直し、
尻尾をしゅるんと巻き付けながら言う。
課長「緊張することはない。私は部下を信頼している。落ち着いて話せ」
その言葉は完全に上司の風格なのだが――
佐伯(心の声:課長…優しい…!いや違う、“しっぽの巻き方”が可愛いのよ!!)
山根(心の声:信頼されてるのに癒されてる場合じゃない!けど癒される…!)
会議はなんとか進行。
だが、資料確認のタイミングで、課長が紙を前足でちょいちょい触るという事件が発生。
山根(心の声:あああ!紙パンチするのやめて!可愛すぎ!)
佐伯(心の声:なにそのちょいちょい…写真撮りたい…いや職場で何考えてんだ俺…)
課長「……このページ、印刷がかすれているな。後で修正しろ」
佐伯「了解しました…!」
(心の声:めっちゃ可愛いパンチだった…)
会議が終わる頃には部下全員のHPが0近い。
仕事の疲れではなく、“癒しダメージ”で瀕死なのだ。
課長「では午後は外回りだ。各自、準備をしておけ」
佐伯(心の声:はぁ…今日もがんばれる…課長の存在が尊すぎる…)
山根(心の声:可愛いって言ったら怒られるんだろうな…絶対言わんけど…でも可愛い…)
ミスティ課長は、自分がチームを癒やしの沼に沈めているとは夢にも思わず、
尻尾を揺らしながら堂々と去っていった。




